武田薬品が配当を3年間据え置く考えか?
武田薬品工業が2014年3月期から2016年3月期までの3年間で、1株当たりの年間配当額を180円に据え置く見込みのようです。
M&Aではなく、利益率の高い新薬を増やすための資金をねん出する狙いもあるようです。
ここで基礎知識です。
配当は、企業が一定期間で稼いだ利益の蓄積額を原資として、株主に対して支払う金銭などの分配行為のことです。
株主総会や取締役会の決議にもとづいて配当が支払われます。
配当に関しては、「配当金を支払う側」の仕訳と、「配当金を受けとる側」の仕訳が重要です。
(計算例1)
T社(発行済み株式総数100株)は、当期末時点における繰越利益剰余金残高30,000円のうち、10,000円を配当することにした。利益準備金については考慮外とする。
なお、配当金総額の15%相当額、すなわち1,500円はU社(持ち株数15株、持ち株比率15%)に支払うべき配当金だった。
配当前のバランスシート(単位:円)
(資産) (負債)
: (純資産)
: 繰越利益剰余金 30,000
※配当する側の仕訳(利益準備金の積み立ては無視)
(借方) 繰越利益剰余金
(純資産) 10,000 (貸方) 未払配当金
(負債) 10,000
※配当を受ける側の仕訳・・・T社から配当金領収証を郵送で送ってもらう。
【U社:15%】※10,000円×15%=1,500円
(借方) 現金
(資産) 1,500 (貸方) 受取配当金
(収益) 1,500
【U社以外の株主たち:85%】※10,000円×85%=8,500円
(借方) 現金
(資産) 8,500 (貸方) 受取配当金
(収益) 8,500
以上より、配当を支払う場合は、バランスシート・純資産の部の「繰越利益剰余金」勘定を減額するため、損益計算書の費用の発生とは扱われません。
その一方で、配当金を受け取る側では、仕訳の貸方で「受取配当金」という収益の勘定科目を計上します。
支払う方は費用とならないのに、受け取る方は収益として計上する、というちょっとアンバランスな処理になるのだということを知っておきましょう。
なお、当期に稼いだ純利益「当期純利益」に対する配当金の比率を「配当性向」といいます。
会社の配当政策の特徴を理解するのによく使われる指標ですね。
たとえば配当性向50%と言ったら、それは「配当金÷当期純利益」または
「一株当たり配当金÷一株当たり利益」の計算結果が0.5ないし50%であることと同じ意味です。
ちなみに、当期の武田薬品の配当金は180円、配当性向は150%近くに高まる見通しだそうです。
つまり、当期の純利益120円に対して、その1.5倍にあたる180円の配当をする見込みということですね。
「え?当期稼いだ利益以上に配当を支払うことができるの?」
はい、できます。それは、これまでのバランスシートの純資産において過去から蓄積していた繰越利益剰余金の額が十分にあるからです。
つまり、前期までの繰越利益剰余金と当期に稼いだ当期純利益の合計が、おおざっぱにいって配当できる金額の目安となりますね。
以上、ひさしぶりに配当に関する財務分析指標その他のお話でした。
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