JXが純利益3.3倍。価格上昇で在庫評価も影響
2013年11月2日の日経12面で、JXホールディングスの2013年4-9月期における純利益が、前年同期比で3.3倍もアップしていると報じられました。
(参考)JXホールディングスの連結業績(決算短信より)
2013年4?9月期(カッコ内は対前年同期比の増減率)
売上高 5,777,689 百万円 ( 11.3%)
営業利益 139,429 百万円 (272.8%)
経常利益 176,115 百万円 (121.2%)
四半期純利益 89,706 百万円 (234.2%)
こうしてみると、売上高が5兆7776億円と前年同期比で11.3%も上昇しています。
すごい伸びですが、利益ベースではさらに営業利益が272.8%アップ(つまり3.7倍!)、四半期純利益は新聞報道のとおり234.2%アップで3.3倍の897億円です。
もちろん、売上アップによる原因が大きく、利益上昇に貢献していると思いますが、この業種でよく話題になる「在庫評価の影響」も見逃せません。
どういうことかというと、「総平均法」という石油在庫の期末評価方法を
採用していることで、期首(当期のスタート時点)における在庫単価よりも期中がインフレ基調の場合、インフレで高くなった単価をもとに期末の石油在庫を評価するため、それだけ資産価値が金額ベースで高まり、利益の上昇を加速させるというお話しなのです。
JXホールディングスのケースでは、在庫評価の影響を除いた経常利益は1,115 億円だということなので、1,761億円?1,115億円=646億円ほどの影響が税引前で生じていたと考えることもできますね。
ここで、一般的な計算例を使って、期首の在庫単価より期中の仕入れ単価が上昇した場合の利益に与える影響を考えてみましょう。
(計算例)
A社の期首の在庫は100kgだった。期首の商品単価は100円なので、期首の在庫は10,000円という金額評価になる。
次に、当期に2回商品を仕入れた。その内容は次のとおり。
第1回仕入:400kg×125円=50,000円
第2回仕入:500kg×160円=80,000円
※当期の仕入高(第1回と第2回の合計)は130,000円となる。
これに対し、当期の払出は900kgで、期末の在庫は期首と同じ100kgであった。
当期中の商品の売価は200円である。
以上をもとに、当期の利益を求める。
(計算結果)
売上高 180,000円 (900kg×売価200円)
売上原価 △ 126,000円 (900kg×総平均単価140円)
売上総利益 54,000円
※総平均単価:
(10,000+50,000+80,000)円÷(100+400+500)kg
=140,000円÷1,000kg=@140円(在庫の期末評価額)
バランスシート
(資産)
棚卸資産 14,000円 ←期首在庫10,000円より4,000円大きい。
:
このように、期首の在庫単価100円に対し、総平均単価が140円へと40円上昇したことが、期末の棚卸資産評価を押し上げています。
結局、期首在庫10,000円と当期仕入高130,000円の合計140,000円のうち、14,000円が期末在庫として資産評価されたことにより差し引き126,000円が売上原価となるので、売上高180,000円?売上原価126,000円=売上総利益54,000円と求められるのですね。
この点、もしも期末の棚卸資産の単価が100円×100kg=10,000円のままだったら、140,000円?10,000円=130,000円という売上原価になり、売上高180,000円?売上原価130,000円=50,000円という、実際の計算よりも4,000円低い利益となっていたことも考えられます。
(参考)
期首の単価をもとに在庫評価する計算方法は、「後入先出法」と言って以前は認められていましたが、現在は、このような在庫評価計算は会計基準上認められていません。
このような計算例を見てもわかるように、インフレで商品単価が上昇している年度には、期末の商品在庫の評価が期首の単価よりも高くなるため、その影響で売上原価が減少し、利益が押し上げられるという現象が起きるのですね。
会計学の世界では、このような利益の上昇分を「保有利得(ほゆうりとく)」などと読んだりします。
簡単に考えれば、総平均単価140円が期首在庫の単価100円の差額40円をもとに、4,000円もの利益を押し上げる影響があったと考えることができます。
以上は、あくまで架空の計算例であり、必ずしもJXの決算発表における現象と状況は同一ではないかもしれませんが、おおむね在庫評価の利益に与える影響については、イメージが持てるようにはなったと思います。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 立替金(3級・2級商業簿記)
立替金の定義 立替金とは、誰かのために一時的に支払った代金で、後日精算されるもの。 よく関連語句として「給料」がセットで出てくる。 立替金の概念 例:従業員の個人的な支出や取引先の負担すべき広告費などを、一時的に立て替えて支払う。 支払った金額は「将来返してもらう予定のお金」として資産に計上される。 立替金は「立替金の請求権」として扱われ、資産勘定に計上。 簿記の問題での立替金 給与支給時に従業員に対する立替金を相殺する処理が出題されることがある。 立替金の処理について理解しておくことが重要。 具体的な取引例 例:従業員の頼みで、個人的な支出65,000円を立て替え、現金で支払う。 仕訳: 借方:立替金 65,000円 貸方:現金 - 前払金(3級・2級商業簿記)
「前払金」の定義 商品などを注文した際に、品物を受け取る前に支払った手付金や内金のこと。 支払いに関連する勘定科目として「前払金」が使用される。 関連する用語:商品の仕入れなど。 「前払金」の概念 契約や注文が成立した際、手付金を支払うことが一般的。 支払った時点では品物の受け取りが確定していないため、「一時的に相手に預けているお金」として扱う。 支払った金額は資産勘定に計上され、将来的に商品を受け取る権利を持つと考えられる。 「前払金」の特性 仕入れや費用として確定しているわけではない。 目的の品物が手に入らなければ、支払った金額を返金してもらうこともある。 「前渡金」という用語も同義で使用されることがある。 取引例 - 配賦差異(2級工業簿記)
配賦差異の重要性 2級工業簿記で非常に重要な概念。 製造間接費を予定配賦や標準原価計算で計算する際に生じる差異。 試験対策として配賦差異の理解は必須。 配賦差異の定義 配賦差異は、製造間接費の予定配賦額(正常配賦額)と実際発生額との差額。 この差異の把握は、原価管理やコスト管理において重要。 関連用語 「実際配賦」、「予定配賦率」、「製造間接費」、「部門費」など。 配賦差異には「予算差異」と「操業度差異」の2種類がある。 配賦差異の計算方法 予定(正常)配賦額 = 予定(正常)配賦率 × 実際操業度。 実際発生額との差額が配賦差異。 差異の処理方法 実際発生額が予定額を上回る場合、追加コストとして借方差異(不利差異)。 実際発生額が予定額を下回る場合、コスト節約として貸方差異(有利差異)。 - 手形貸付金・借入金(3級・2級商業簿記)
手形貸付金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる貸付債権。 資産に分類される。 手形を使わない場合は、「貸付金」 手形借入金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる借入債務。 負債に分類される。 手形を使わない場合は、「借入金」 仕訳例 資金を貸し付ける場合:「手形貸付金」 資金を借り入れる場合:「手形借入金」 具体例 200万円を借り入れ、約束手形を発行し当座預金に入金された場合: 借方:当座預金 + 2,000,000円 貸方:手形借入金 + 2,000,000円 総勘定元帳への転記 資産:「当座預金 + 2,000,000円」 負債:「手形借入金 + 2,000,000円」 - 仮払金(3級・2級商業簿記)
仮払金の重要性 実務および試験対策において重要な科目。 簿記3級以上で出題され、2級、1級、会計士、税理士の試験にも登場する。 仮払金の分類 資産勘定に分類される。 実際の支出金額や内容が未確定な場合に使用する。 仮払金の定義 支出金額や内容が確定していない場合に一時的に支払う際に使用する勘定科目。 支出内容が確定した時点で精算処理を行い、仮払金は解消される。 短期間で精算されることが前提。 関連する勘定科目 現金や仮受金(負債)などが関連する。 実務での使用例 例: 出張費が確定しない場合、社員に2,000円を仮払金として渡し、実際の費用が確定した後に精算する。 例: 交通費が1,700円だった場合、差額の300円を返金して仮払金を精算。