退職金の運用、7割近くが運用損で苦戦
日経朝刊2013年11月3日(日)1面の記事です。
フィデリティ退職・投資教育研究所の調査データによりますと、2012年12月末時点における退職金運用の成果内訳が次のように発表されています。
※退職金運用に関する調査回答
1. 評価益が出た … 16.7%
2. 変わらない … 11.8%
3. 評価損が出た … 68.1%
4. わからない … 3.4%
これを見ると分かるように、退職金の運用で利益を出したのは全体のわずか16.7%すなわち6人に1人しかいません。
反対に、損が出たのは全体の7割近くです。
これは異常なことなのでしょうか。
いえ、ちがいます。
極めてノーマルです。
わたしの経験から振り返ってみても、株式投資をしている方の約8割はおおむね損をしています。
なお、株式評価でトントンであっても、実質的には損失計上のグループにはいります。
なぜか?手数料を払っているからですね。
【今日のポイント】
株式投資では、8割がトントンまたは運用損を出している。
利益が出ているのは2割にも満たない。
ではなぜ8割が株式で損をするのか。
理由は一つ。
「自然利子率が長期的に上がる会社のビジネスを買う」という投資の本質を理解していないからでしょう。
※自然利子率…実物経済における将来の成長率と考えてよい。
(例)今の米100キログラムを他人に貸して、一年後130キログラムで返してもらえるならば、今の米の自然利子率は30/100キログラム=30%と考えられる。
実物経済の成長率でもある。
目先の株価が上がった下がったといった多分にマーケット参加者の短期的な判断と感情に左右される不確かなフィールドで勝負しようとしてるから、自分にコントロールできない要因で賭けに応じざるを得ないのですね。
「株価が上がれば」勝ち、「株価が下がれば」負け、これでは丁半博打と一緒です。
だから、「柴山さん、これから上がりそうな株は何ですか?」と聞いてくる人にはいくら言っても株式投資の本来の意味は分からないのですね。
そうです。
見るべきは株価そのものではなく、それを担保する実体経済としてのビジネスの堅実さとその将来的な成長性なのです。
だから、今週リリースしたポッドキャスト「まちかど会計学」のテーマである「株式投資は、株買うな!」の音声解説でも申し上げているように、投資で買うのは「株券」という、かみっぺらではなく、それを発行する会社のビジネスの将来性なのですね。
じゃあ、その会社のビジネスに将来性があるかどうかは、どうやればわかるの?という疑問の声が聞こえてきそうです。
簡略化してお答えするならば、その会社について、2時間程度のセミナー・講演ができるくらい決算書その他の関連資料を調べつくす、この一点に尽きるでしょう。
儲かっていない株式投資者の態度は、たいてい「今は○○だから、この業界の○○社の株式は成長しそう…」みたいに、どこかのネットや投資コンサルタント的な人がいう2次情報をうのみにして、ほとんど思考停止状態で雰囲気で買ったものではないでしょうか。
ためしに、ご自身の所有している銘柄の会社について、30分でいいから、その会社の強みと弱み、属している業界の10年後の展望、ライバル企業の動向、3年後や10年後にはどうなっているかのイメージなどについて、講演してもらうように依頼してみてください。
たぶんできないでしょう。
だって、そんなに真剣に深くその会社を研究していないから。
これがほぼ平均的な利益を出せていない株式オーナーの姿ではないでしょうか。
つまり、ビジネスに興味を持ち、深い洞察を持たない事には、株式投資で上位20%以内に入るのは、そうそう簡単ではないということですね。
株を買うには、会計知識は必要ですが、それで十分ではありません。
その会社のビジネスについても経営者本人と同じくらいの情熱でもって理解しようという気構えがないと、思い切った株式投資は夢のまた夢ではないでしょうか。
株式投資は、しっかりとしたプロセスを踏めば、たしかに資金を増やす非常に有効な手段となりえます。
それもこれも、投資する本人の姿勢とコンセプト次第ということですね。
今、退職されている方も、将来退職された後のことが心配だな?という方も、今から真剣に会社を研究し、「これだ!」と思った会社については1?2時間程度その魅力や将来についてしっかり語れるように情報収集・分析する習慣を早めに身に着けることをお勧めします。
株式投資に王道あり!ですね。
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仮払金の重要性 実務および試験対策において重要な科目。 簿記3級以上で出題され、2級、1級、会計士、税理士の試験にも登場する。 仮払金の分類 資産勘定に分類される。 実際の支出金額や内容が未確定な場合に使用する。 仮払金の定義 支出金額や内容が確定していない場合に一時的に支払う際に使用する勘定科目。 支出内容が確定した時点で精算処理を行い、仮払金は解消される。 短期間で精算されることが前提。 関連する勘定科目 現金や仮受金(負債)などが関連する。 実務での使用例 例: 出張費が確定しない場合、社員に2,000円を仮払金として渡し、実際の費用が確定した後に精算する。 例: 交通費が1,700円だった場合、差額の300円を返金して仮払金を精算。