手形の裏書1
手形の裏書によって第三者へ譲るという仕訳でしたが、
その手形がもし不渡りとなった場合、その代金を肩代わりしなければ
なりません。そのときにリスクを計上する仕訳勘定を勉強します。
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lesson.10
★ 5分で完結!中学生でもわかる簿記入門 ★(読者2304人)
2005.08.17
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<仕訳30> 手形の裏書1
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《手形の裏書》は、3級でも学習しましたね。
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※《手形の裏書》とは …
仕入代金の支払いなどのために、所有する手形(受取手形)を
満期日前に、第三者に譲り渡すこと。
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そして、日商3級で学習した仕訳は、次の通りでした。
(借)仕 入 な ど ×× (貸)受 取 手 形 ××
このように、3級では、手形を裏書したら同時に手形の権利も消滅する、
という学習しかしていません。
〔★注目★〕
でも、本当の《手形の裏書》というのは、
「手形を裏書した(権利を譲った)後も、その手形に対しての責任を、自分
が保証します」という意味を含めて、譲り渡すのです。
もう少し詳しく言うと、
「手形の振出人が、万が一、支払い不能(不渡り)になったら、その代金を、
自分が責任を持って肩代わりします(支払います)。」ということになります。
保証人になるようなものですね。
この裏書した手形を保証することを、『手形の遡及』といい、これは、
『手形の振出人により、満期日に手形代金の支払いがされない場合、その時
の手形の所有者は、自分より前に所有していた者に対して、手形代金の
請求ができる。』という内容です。
つまり、《手形の裏書》をすることで、『手形の遡及』というリスクを
負ってしまうのです。
だから、手形を裏書した人は、裏書したあとも、振出人が、満期日に手形
代金を支払うまでは、安心できないのです。
*そして、このリスクを『偶発債務』といいます。
『現在は“債務”ではないが、将来“債務”となる可能性のあるもの』
以上のことから、実際に、手形を裏書することでリスクが生じるので、2級
では、この『偶発債務』を、備忘的に記録しておく方法を学習していきます。
まずは、特殊商品販売でも何度か登場した、【対照勘定法】から始めます。
【対照勘定法】
●仕訳1 手形裏書時(買掛金の支払いの場合)
(借)買 掛 金 ×× (貸)受 取 手 形 ××
裏書 義務 見返 ×× 裏 書 義 務 ××
――――――― ―――――――
↑ ↑
または、 または、
「手形裏書義務見返」 「手形裏書義務」
・【対照勘定法】では、『偶発債務』を表現するために、
「裏書義務見返」勘定と「裏書義務」勘定を用います。
※「裏書義務見返」「裏書義務」勘定が、記帳されることで、
今いくらの手形が裏書中なのか、ということが分かります。
○仕訳1 手形裏書時(買掛金の支払いの場合)+ 保証債務時価
(借)買 掛 金 ×× (貸)受 取 手 形 ××
保証 債務 費用 ×× 保 証 債 務 ××
裏書 義務 見返 ×× 裏 書 義 務 ××
―――――――
↑
*よみかた:[うらがき ぎむ みかえり]
●仕訳2 裏書した手形が無事決済された時
(借)裏 書 義 務 ×× (貸)裏書 義務 見返 ××
――――――― ―――――――
↑ ↑
または、 または、
「手形裏書義務」 「手形裏書義務見返」
○仕訳2 裏書した手形が無事決済された時
+ 保証債務時価があった場合
(借)裏 書 義 務 ×× (貸)裏書 義務 見返 ××
保 証 債 務 ×× 保証債務取崩益 ××
※ 手形が無事決済されたので、裏書中の手形はなくなり、リスクも
消滅します。
よって、仕訳1の「裏書義務見返」「裏書義務」勘定を反対仕訳
して取り消し、同時に保証債務も取り崩します。
【練習】::::::::::::::::::::::::::::::
次の取引を、対照勘定法で仕訳しなさい。勘定科目は以下より選ぶこと。
[ 受取手形,買掛金,裏書義務,裏書義務見返,保証債務,
保証債務費用,保証債務取崩益 ]
(1)買掛金50万円を支払うため、得意先振り出しの約束手形を
裏書譲渡した。なお、保証債務の時価は1万円とする。
(2)満期日になって、上記の裏書手形が無事決済された。
::::::::::::::::::::::::::::::::::
【答え】単位:万円
(1)(借)買 掛 金 50 (貸)受 取 手 形 50
保証 債務 費用 1 保 証 債 務 1
裏書 義務 見返 50 裏 書 義 務 50
(2)(借)裏 書 義 務 50 (貸)裏書 義務 見返 50
保 証 債 務 1 保証債務取崩益 1
::::::::::::::::::::::::::::::::::
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