コムシス、自社株をすべてM&Aに活用?
通信工事大手のコムシスホールディングスが、約2738万株の自社株をM&Aの原資として活用する方針であると、日経新聞で報じられていました。
10月7日の終値が1799円なので、単純に計算すると、2738万株×1799円=492億5662万円の買収資金があることになりますね。
買収の方向性として、本業の通信工事に関連させ、シナジー(相乗)効果が期待できる企業を対象とする意向のようです。
一般に、自己株式を取得すると、その後の扱いは次の4つのどれかになります。
1.そのまま持っている(金庫株)
2.売却する
3.消却する
4.M&Aや増資などの際に新株発行に変えて活用する
今回は、第4のパターンです。
もともと、自己株式(自社株)を取得するときに、現金を支払って、一部の出資の払い戻しをしているような状態にあります。
バランスシート1
(資産) (負債)
現金預金 5000 (純資産)
資本金 2500
利益剰余金 2500
バランスシート2
(資産) (負債)
現金預金 4000 (純資産)
資本金 2500
利益剰余金 2500
自己株式 △1000
以上のケースだと、現金預金1000を支払って、自己株式1000を取得したことがわかります。
この場合の自己株式△1000というのは、会社の純資産5000(資本金2500+利益剰余金2500)に対し、その控除科目として存在します。
よって、バランスシート2の時点では、会社の純資産は、5000?自己株式1000=4000 となります。
ここで、A社を子会社化するM&Aをしようと考えた、としましょう。
A社株を100%取得するために、自己株式の8割をA社の株主に交付するとします。
このように、お互いに株式を交換して100%の親子関係を作る取引を「株式交換」といいます。
なお、話を単純化するために、自己株式の時価も取得時と同じとしましょう。
1000のうち8割の800は、自己株式の取得時も株式交換時もおなじ株価だったという想定ですね。
このような前提のもとで株式交換を行った結果、バランスシート3は次のようになりました。
バランスシート3
(資産) (負債)
現金預金 4000 (純資産)
子会社株式 800 資本金 2500
利益剰余金 2500
自己株式 △200
いかがでしょうか、バランスシートの右側にあった自己株式△1000が△200に変化し、同時に左側に子会社株式(A社株)が800増えています。
バランスシートの左側合計が4800、右側合計も2500+2500?200=4800と、この時点でも左右バランスしています。
以上の流れからもわかるように、M&Aの対価として自己株式を放出するという選択肢があることを覚えておきましょう。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 【連結入門・未実現利益の考え方】土地と建物の未実現利益に関する処理の比較でマスター
連結会計を学ぶ上で、未実現利益の正しい理解は必須ですね。 この点、最初の理解の仕方を間違えてしまうと、けっこう連結が苦手になったり、遠回りしてしまったりしてしまいます。 そこで、今回の動画では、まず一番簡単な土地の親子間売買(ダウンストリーム)を取り上げ、それとの比較で建物の売却による未実現利益の消去と、それに伴う減価償却費の連結修正について簡単な事例を使って解説いたしました。 この10分程度の動画をさっと視聴することで、連結会計の未実現利益に対する苦手意識を取り除くきっかけになればうれしいです! - 会計士志願者が2倍も、監査法人離れ
2023年9月21日の日経1面です。 2015年を底に2023年までの8年間で公認会計士試験の受験者数が倍増し12年ぶりの2万人台を記録したそうです。 ※2013年~2023年の願書提出者数 2023年 20,318人 2022年 18,789人 2021年 14,192人 2020年 13,231人 2019年 12,532人 2018年 11,742人 2017年 11,032人 2016年 10,256人 2015年 10,180人 2014年 10,870人 2013年 13,224人 (資料:マイナビ会計士)※2013年~2022年 ※2023年は金融庁ホームページ たしかに、過去10年程度で2015年の10,180人がそこになっており、そこから20,318人ですから、この期間において2倍程度増えていますね。 - 社外役員の兼任者数が4割アップ!?~会計士・税理士に新たなフィールドのチャンスが到来?
昨日の日経朝刊は、コーポレートガバナンスに関する非常に興味深い記事でした。 日経1面に出るということは、その日のニュースの中でも日本経済全体に影響を及ぼすと判断されたトピックと考えられるのですね。 いま、日本企業の多くは閉塞感にとらわれているかもしれません。 先行き不透明な中、社内の限られた知見だけで経営を続けていくのがますます難しくなってきています。 社内の常識が世間の非常識、なんてこともあったりしますね。 私は監査法人の勤務時代から強く感じていたことがあります。 会計士はその会社に年中いるわけではないので、その会社の業界知識の深さについてはかなわないのですが、彼らになくて私たちにあったのは「他の多くの会社の実務を見て実態を知っている」という点です。 - 【時事ニュースで学ぶ会計知識】オリンパスの売上高当期純利益率が100%超!?
2023年8月30日の日経18面で報じられていました。 オリンパスの売上高当期純利益率がなんと100%を超えたという珍しいケースです。 普通は、売上高を100とするならば、営業利益は5~8%程度、当期純利益は税引き後なので3~5%くらいがよくあるケースです。 営業利益率が10%以上になってくると、本業で結構儲けが出ている印象を受けます。 個人的には非常に良いイメージですね。 この点、オリンパスさんの営業利益率は13%を超えていますので、一般的な視点で行けば本業での好調さが想像されます。 そして、そこから一定の調整を経て、さらに法人税等が差し引かれるので、営業利益よりも当期純利益は少なくなるのが通常です。 しかし! - 【読んでみたい一冊】週3バイトが東大合格した時間術の本
今回は時間術に関する興味深い視点の本をご紹介します。 限られた時間で効率よく勉強しながら東大に合格した実体験から自身で身に着けた時間管理ノウハウを本にまとめたものです。 ユニークな視点でなるほど~、と思わせるところが多いのと、読みやすく短時間で一気に通読できることから、手軽に時間生産性を上げるためのヒントとして、動画で取り上げてみました。 全部で3章構成からなっているのですが、その全体フローがそのまま企業コンサルの手順にも応用できます。 すなわち、 ステップ1 ムダを削減する ステップ2 今の仕事の効率を上げる ステップ3 それを継続する です。 こうやって書いてみると非常にシンプルですが、そのシンプルさの中にこそ、マネジメントの本質が隠されていることもあります。