カシオが転換型社債新株予約権付社債で自社株取得
7月7日に、カシオ計算機が第三者割当によるユーロ建ての新株予約権付社債(転換社債型)を発行する旨、発表しました。
(参考)
「第三者割当による2019 年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」
⇒ http://www.casio.co.jp/file/release/2014/20140707-3.pdf
この発表によると、払込期日は2014年7月23日、新株予約権の総数1,000個、利率0%、償還日2019年7月23日、社債及び新株予約権の発行価額105億円(額面100億円)です。
社債発行費は5億円を予定しているので、正味の資金調達額は100億円ですね。
この資金の主な使い道は自社株の取得です。
…いろいろと上級簿記のテーマとしては突っ込みどころ満載で、これだけでゆうに3時間の講義ができてしまいますねー。
さて、どこから手をつけたものやら…(笑)。
今回は、限られた紙面の中で、「転換社債型の新株予約権付社債とは何ぞや?」といった視点に絞ってお話いたしましょう。
まずは、基礎知識2連発です!
【社債】
株式会社が、社債券という債券(借りたお金の証書の一種)を発行し、投資家から資金を調達する方法。
金融機関からの融資によらず、直接資金の出してである投資家からお金を調達する「直接金融」の一種である。
通常は、償還期間(返済期間)にわたって、一定の利息を支払う。
他の投資商品のり率との関係で、返済予定額である額面よりも低い金額で発行することもあり、そのような発行方法を「割引発行」という。
このほか、額面と同額の払込額とする「平価発行」、額面よりも高い払込額とする「打歩発行(うちぶはっこう)」がある。
通常、社債発行により調達した資金は、設備投資・M&A・長期借り入れの返済など、長期的な観点からの運用を予定する。
【新株予約権】
将来の一定期間中に、あらかじめ決められた価格(行使価格)で新株予約権の発行会社の株式の交付を求める権利。
将来、その会社の株価が著しく上昇したら、行使価格との差額で新株予約権の所有者はキャピタルゲイン(含み益)を手にすることができる。
以上、社債と新株予約権を別々に解説しました。
そもそも、長期資金を借り入れるための資金調達テクニックとしてある社債の発行は貸借対照表(バランスシート)上の負債であり、いっぽう、将来の新株予約権の行使によって株式発行と資本金の増加を予定する「新株予約権」は純資産の項目となります。
(表示例)
バランスシート
(資産) (負債)
社債
(純資産)
新株予約権
基本的には、もともとの性質として、社債と新株予約権は、金融商品としては全く別物です。
それを抱き合わせて発行し、投資家にとってのメリットをふやすと同時に、「新株予約権というおまけ付き」であることから、社債の発行条件を有利にすることができたりするのが、「新株予約権付社債」という複合金融商品なのですね。
食玩付きのキャラメルとかチョコボールと、発想が同じだと考えるのは柴山だけでしょうか。
カシオの場合、新株予約権という特典付きであることから、社債の利率が0%でOK!という条件なのも、頷ける話です。
さらに!
新株予約権付社債を購入した投資家は、将来、新株予約権を行使した場合、あらたに取得する株式について払込をするのが原則です。
発行会社の立場では、あらたに金銭による払込を受けて株式を発行する、そのいっぽうで、将来、償還期が来たら社債のほうは額面で償還(返済)する、というのが基本です。
ただし、社債発行時の条件として、新株予約権を行使した時に、新たに払込をせず、すでに社債を購入して払い込んだお金をそのまま新株の払込代金に代用することができます。
このような条件付きの新株予約権付社債のことを、「転換社債型の新株予約権付社債」といいます。
ながったらしいなまえですが、「社債の払込代金を新たな株式の払込に使い回ししてOKの社債」とイメージして頂ければよろしいでしょう。
今回のカシオが発行する社債は、まさに転換社債型なのですね。
ちなみに、かつては転換社債型の新株予約権付社債に相当する金融商品をたんに「転換社債」と言っていました。
英語でコンバーティブル・ボンド(CB)と呼んでいました。
今でも、転換社債型をCBと呼ぶことが多いですね。
会計処理としては、転換社債型の新株予約権付社債を発行した会社は、社債部分と新株予約権部分を分けて仕訳し、バランスシートに表示してもいいですし(区分法)、めんどうなのでぜんぶ社債に含めてバランスシートには負債で一括表示!(一括法)のいずれかを採用してもいいということになっています。
企業の資金調達方法にもいろいろありますね。
以上、転換社債型新株予約権付社債のお話でした。
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