「法人税1兆円上振れ」の報に騙されてはいけない
2014年6月8日の日経1面で、2013年度の法人税収が政府の見込みより最大1兆円上振れしそうだ、と報じられていました。
これにより、2014年3月期(消費増税前ですよ!!)の上場企業における納税額は前期比で5割アップだそうです。
だから?
今後の減税論議に弾みがつくとか…。
私の見解はこうです。
「まだ、少なくとも1年以上先を見てみないとわからんよ!」
これが、経済政策を評価するときの視点だと思います。
政策効果は、そんなすぐに出ません。
消費増税の悪影響が顕在化するのは、過去のデータを見ても、早くて来年の半ばから後半以降でしょう。
でも、そのころには10%への増税が…。
軍事力を持たないと言い張っている日本では、唯一といってもいい国際競争力の源泉が「経済力」しかないわけです。
勤勉さは、経済力につながるから国際的に力を持つのだと思います。
いわば、日本の現在における武器は「鉄砲」ではなく「マネー」なのですね。
その経済的なパワーを、消費増税という政策は、せっせと毀損しようという方向に向かっているかもしれない、そんな危惧を覚えています。
うがった見方をすれば、10%アップの景気判断を早めにやってしまいたい、というのは、裏を返せば「8%増税の悪影響が顕在化する前に…」なんて深読みさえできてしまいます。
「常識(?)を疑え!」
ということですね。
いろんな意見があっていいと思うので、「今は景気がいい!だから増税オッケー!法人減税オッケー!」という思考プロセスに異議を唱える人がいてもいいのではないかと。
法人減税をやるのは別にかまいませんが、消費増税とのセットは、いかがなものかと…。
さて、この時の日経報道に関連する会計知識といえば、法人税率の現象ですから、「実効税率」ということになります。
この実効税率は過去にも取り上げているかと思いますが、会社の税負担の状況を判断するのにとても役立つ指標ですので、折に触れてこの話題とさせていただいている次第です。
かんたんにいうと、法人(株式会社など)が稼いだ利益に対する、法人税・住民税・事業税の合計額の比率です。
2014年度以降の日本の法人実効税率は、東京都の場合で35.64%になるそうです。
現時点の比較では、米国が40%超なのは別格として、ドイツが29.59%、
英国が23%、中国が25%であることなどと比較しても、高い方だといわれています。
国際的な流れが法人税負担率の軽減の方向に行っているのは、ある意味しかたがないところでしょう。
取りやすい個人からは消費増税などで税をもらい、一方、法人に対して各国の税務行政はやさしい傾向にあるのでしょうね。
直接的な最終負担者は個人消費者に行きつくのが、消費税の性質上いたしかたないのですが、けっきょく、それによって個人消費者が財布のひもを固く締めるようになれば、中長期的には個人消費者にモノを売っている企業の業績ダウンという形で跳ね返ってくる、という現実を忘れてはいけないと思います。
1年半で消費税の負担を倍(5%から10%)へと、一気に引き上げることの悪影響が最小限にとどめられることを祈るばかりですが、わたしたち中小経営者は、ただ祈るばかりではだれも生活を保障してくれません。
できるだけ早く、悪いシナリオが現実化した時のリスクに備えて財務管理、マーケティングのスキルを高めておくにつきます。
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