6割の会社が1ドル100円と想定
2015年3月期における想定為替レートを開示した主要企業362社を集計した結果、約6割にあたる企業が前期と同水準の1ドル100円と見ていることがわかったそうです。
100円未満が10%程度、100円超が30%程度ということなので、多くの企業が今後も100円以上の為替相場で推移すると見ていることになりますね。
大手企業の場合、輸出や輸入などの取引規模が大きくなりますから、外貨建ての取引や外貨建ての資産・負債の額もばかになりません。
1ドルあたり1円の値動きでも、企業の決算に与える影響は結構な額になります。
たとえば、トヨタの場合だと、対ドルで1円の円安になったら、年間400億円もの営業増益につながるそうです。
これは大きいですね。
そんなわけで、為替相場がどのていどの水準で推移するか、という問題は海外取引をしている会社にとって、なかなか頭の痛いテーマといえます。
さて、ここで会計知識です。
会計実務上、外貨建ての取引の円換算はどのように行うのでしょうか。
ご参考までに、会計実務で知っておきたい為替レートの種類には、大きく3つあります。
1.取得日レート(HR:Historical Rate)
取引の発生日における為替レート。
日々の取引を円換算するときに用いる。
2.決算日レート(CR:Current Rate)
決算日における為替レート。
通貨や金銭債権(売掛金、買掛金など)を決算日時点の貸借対照表に計上するために用いる。
3.平均レート(AR:Average Rate)
一定期間における為替相場の平均。
実務上、外貨取引などの換算に用いられることがある。
新聞で取り上げている想定レートは、日々の取引を換算するレートについてのものですので、取得日レートの想定値と考えればいいでしょう。
(設例1)
3月1日に100ドルの商品を掛けで仕入れた。
同日の為替レート(HR)は1ドル100円だった。
<仕訳>
(借方) 仕入 10,000 (貸方) 買掛金 10,000 (※)
※100ドル×100円=10,000円
※買掛金は仕入代金の未払額であり、将来の返済義務をあらわす「負債」項目です。
(設例2)
3月31日に100ドル(上記10,000円)の買掛金を支払った。
この日の外貨の両替に用いた為替レート(HR)は1ドル105円だったので、1ヶ月のあいだに1ドルあたり5円ずつドルが値上がりした(ドル高、円安)ことになる。
<仕訳>
(借方) 買掛金 10,000 (貸方) 現金 10,500 (※)
(借方) 為替差損 500
ここで、3月31日は、ドルのお金の取得日レートが105円であることから、日本円10,500円を支払っています。
その結果、3月1日(HR:100円)で発生した買掛金10,000円を支払うのに、3月31日に要した日本円が10,500円となってしまい、1ヶ月間の円安のせいで、500円ほど損をしてしまっています。
この、為替相場の変動に伴う損失を「為替差損」という勘定科目で会計上は処理するのですね。
なお、反対に為替相場の変動で利益が出たら「為替差益」といいます。
決算にあたっては、為替差益と為替差損を相殺し、差益が残れば営業外収益に、差損が残れば営業外費用に含めて表示するのですね。
仕入れ取引から代金の支払いまでの期間における為替相場の変動も損益として認識することが、これでわかりましたね。
もちろん、輸出面ならば、売上取引から代金の回収までの期間における為替相場の変動も為替差益や為替差損として認識することになりますので、
この点もあわせて押さえておきましょう。
昨今は、中小企業であっても海外取引は一般的になってきました。
外貨建て取引の会計処理に関する知識は、中小企業の経理担当者でも、無関係ではいられない時代なのですねー。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
立替金(3級・2級商業簿記)
立替金の定義 立替金とは、誰かのために一時的に支払った代金で、後日精算されるもの。 よく関連語句として「給料」がセットで出てくる。 立替金の概念 例:従業員の個人的な支出や取引先の負担すべき広告費などを、一時的に立て替えて支払う。 支払った金額は「将来返してもらう予定のお金」として資産に計上される。 立替金は「立替金の請求権」として扱われ、資産勘定に計上。 簿記の問題での立替金 給与支給時に従業員に対する立替金を相殺する処理が出題されることがある。 立替金の処理について理解しておくことが重要。 具体的な取引例 例:従業員の頼みで、個人的な支出65,000円を立て替え、現金で支払う。 仕訳: 借方:立替金 65,000円 貸方:現金前払金(3級・2級商業簿記)
「前払金」の定義 商品などを注文した際に、品物を受け取る前に支払った手付金や内金のこと。 支払いに関連する勘定科目として「前払金」が使用される。 関連する用語:商品の仕入れなど。 「前払金」の概念 契約や注文が成立した際、手付金を支払うことが一般的。 支払った時点では品物の受け取りが確定していないため、「一時的に相手に預けているお金」として扱う。 支払った金額は資産勘定に計上され、将来的に商品を受け取る権利を持つと考えられる。 「前払金」の特性 仕入れや費用として確定しているわけではない。 目的の品物が手に入らなければ、支払った金額を返金してもらうこともある。 「前渡金」という用語も同義で使用されることがある。 取引例配賦差異(2級工業簿記)
配賦差異の重要性 2級工業簿記で非常に重要な概念。 製造間接費を予定配賦や標準原価計算で計算する際に生じる差異。 試験対策として配賦差異の理解は必須。 配賦差異の定義 配賦差異は、製造間接費の予定配賦額(正常配賦額)と実際発生額との差額。 この差異の把握は、原価管理やコスト管理において重要。 関連用語 「実際配賦」、「予定配賦率」、「製造間接費」、「部門費」など。 配賦差異には「予算差異」と「操業度差異」の2種類がある。 配賦差異の計算方法 予定(正常)配賦額 = 予定(正常)配賦率 × 実際操業度。 実際発生額との差額が配賦差異。 差異の処理方法 実際発生額が予定額を上回る場合、追加コストとして借方差異(不利差異)。 実際発生額が予定額を下回る場合、コスト節約として貸方差異(有利差異)。手形貸付金・借入金(3級・2級商業簿記)
手形貸付金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる貸付債権。 資産に分類される。 手形を使わない場合は、「貸付金」 手形借入金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる借入債務。 負債に分類される。 手形を使わない場合は、「借入金」 仕訳例 資金を貸し付ける場合:「手形貸付金」 資金を借り入れる場合:「手形借入金」 具体例 200万円を借り入れ、約束手形を発行し当座預金に入金された場合: 借方:当座預金 + 2,000,000円 貸方:手形借入金 + 2,000,000円 総勘定元帳への転記 資産:「当座預金 + 2,000,000円」 負債:「手形借入金 + 2,000,000円」仮払金(3級・2級商業簿記)
仮払金の重要性 実務および試験対策において重要な科目。 簿記3級以上で出題され、2級、1級、会計士、税理士の試験にも登場する。 仮払金の分類 資産勘定に分類される。 実際の支出金額や内容が未確定な場合に使用する。 仮払金の定義 支出金額や内容が確定していない場合に一時的に支払う際に使用する勘定科目。 支出内容が確定した時点で精算処理を行い、仮払金は解消される。 短期間で精算されることが前提。 関連する勘定科目 現金や仮受金(負債)などが関連する。 実務での使用例 例: 出張費が確定しない場合、社員に2,000円を仮払金として渡し、実際の費用が確定した後に精算する。 例: 交通費が1,700円だった場合、差額の300円を返金して仮払金を精算。