日立物流、のれん償却の特損などで純利益52%減少
日立物流は、2014年3月期の連結純利益が前期比52%減少の54億円になったと5月2日に発表しました。
※「特別損失の計上、業績予想の修正ならびに個別業績予想および前期実績値との差異に関するお知らせ」
⇒ http://www.hitachi-hb.co.jp/ir/pdf/ir201405021.pdf
この発表記事の内容につきまして、本文を一部引用の上、ご紹介いたします。
1.特別損失の計上について
(1)連結決算
国内子会社再編等の「事業構造改革費用(約11億円)」や海外における関係会社株式評価損および関係会社出資金評価損の計上(個別)に伴う「のれん償却額 (約23億円)」ならびに子会社における収益計画見直しに伴う「のれん減損損失(約10億円)」を特別損失として計上いたします。
(2)個別決算
当社が保有する海外子会社の経営成績及び財政状態を勘案した結果、「関係会社株式評価損(約22億円)」および「関係会社出資金評価損(約20億円)」を特別損失として計上いたします。
こういった事情もあって、業績予想を下方修正するのですね。
(前回発表予想)
売上高 600,000 百万円
営業利益 24,000 百万円
経常利益 23,000 百万円
当期純利益 11,500 百万円
(今回修正予想 ※カッコ内は前回予想との差額)
売上高 620,000 百万円 (+ 20,000 百万円)
営業利益 21,000 百万円 (▲ 3,000 百万円)
経常利益 20,000 百万円 (▲ 3,000 百万円)
当期純利益 5,400 百万円 (▲ 6,100 百万円)
こうしてみると、当期純利益の額が、修正前の半分以下にまで下がっているのが目立ちます。
61億円もの当期純利益の減少ですね。
その主なものとして、事業構造改革の損失11億円、関係会社や子会社への投資に関連したのれんの減損計33億円などがありますね。
たしかに、業績下方修正の大きな原因の一つになったという印象は強いです。
ここで、のれんの期末評価について考えてみましょう。
【基礎知識】のれん
のれんとは、「買収対象企業の時価ベース純資産」と買収でかかった投資額(対価の額)との差額です。
(例)A社は、B社の「化粧品事業部」を買収し、現金預金120億円を支払った。
なお、化粧品事業部の財務状況は次の通りである。
※諸資産(時価)100億円、総負債ゼロ
(仕訳)
(借方)諸資産 100億円 (貸方)現金預金120億円
のれん 20億円
この場合の借方「のれん20億円」が、B社化粧品事業部の資産の時価合計をうわまわる「プレミアム」部分ですね。
このプレミアム部分は、貸借対照表では無形固定資産(形のない固定資産)の区分に表示されます。
そして、現行の会計ルールでは、20年以内の期間で定額法などの方法により償却します。
(例)10年の期間で定額償却した場合
(借方)のれん償却 2億円 (貸方)のれん 2億円
※20億円÷10年=2億円
このような規則的な償却ならば、損益計算書上も、販売費及び一般管理費に含まれ、営業利益の計算に影響を及ぼします。
しかし、今回、日立物流でとりあげられているのは「のれん償却」ではなく、「のれんの減損」です。
減損とは、固定資産の将来の収益性が低下したと認められる場合に、決算で適切な額まで固定資産の評価を切り下げる特別な会計処理です。
その際の費用額は、「減損損失」という名称で、特別損失の区分に計上します。
(例)のれん18億円のうち、6億円を減損損失として評価を下げた。
(借方)減損損失 6億円 (貸方)のれん 6億円
※以上の結果、のれんの残高は20億円?2億円?6億円=12億円の残高として、貸借対照表に計上されます。
こうなると、営業活動による費用ではないので、営業利益には影響を及ばさず、一番下の当期純利益でガツンと利益が下がることになるのですね。
建物や機械設備などの減損損失は、わりと会社決算などでも見られることがありますが、無形固定資産であるのれんも、このように減損損失の対象となることがあるのですね。
以上、減損損失とのれんに関する話題でした。
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