公益法人への課税強化論が、政府内で浮上?
財務省が法人実効税率の引き下げに伴う財源穴埋め策のひとつとして、公益法人等への課税を強める検討に入った、と報じられました。
5月の政府税制調査会で議論にのせる考えとのことです。
ここでいう公益法人等とは、法人税法における分類で、社会福祉法人・宗教法人・学校法人などをさします。
税法上の公益法人等は全国に約4万6千あり、2011年度の利益は約2,100億円になります。
これらの利益に相当すると考えられる額は、原則として非課税で、物品販売や飲食などの「収益事業」とされる部分にのみ課税されますが、ここでも軽減税率が適用されています。
このような点が、一般の法人とのあいだで、税負担の格差につながっているのではないか、という議論もあるのですね。
そもそも社会福祉事業・教育事業・宗教活動などは、本来的に民間企業の営利事業とは性質を異にしていて、健全な社会生活を営むためには非営利事業として必要だし、本来なら競合するものでもないんだから、課税対象とするのはよくないよね、というイメージだと思います。
ところが、いつからかこれら公益法人等といわれる団体であっても、事業活動が多様化していることと、折からのデフレ経済長期化の流れから、いろいろな資金源が必要とされるようになっているのではないでしょうか。
わたしも以前、会計事務所の仕事として、ある学校法人の監査をしたことがありますが、教育活動と収益事業の棲み分けが案外難しく、税務上のトラブルに発展しかねないことが少なからずありましたよ。
たとえば、学校側では収益事業と認識していなかったけど、じつはそれは課税対象だった、な?んてことにならないよう、注意をしたいものです。
ちなみに、公益法人といえば社会福祉法人や宗教法人など、特定の政党や政治家にとっては、票田であり極めて重要な支持勢力ともなりますので、ここはある意味聖域みたいにされているところがあります。
ここに切り込むのは、勇気がいることでしょう。
税金というのは、いわば国家に安全と秩序を守ってもらうためのショバ代みたいなものです。
いうなれば、日本国に身の安全や生活を守ってもらっているんだから、その対価を払ってね!みたいな…
って、なんか国家がどこかの○○組のでっかいもののように一瞬錯覚しそうになったのは私だけでしょうか。
なお、憲法では、第30条で納税は義務であると定めている一方で、第84条において、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と、無制限の課税がなされないよう、一応の釘を刺しています。
84条に現れる考え方は、租税法律主義ともいわれます。
話を戻しますと、公益法人等については、従来の原則非課税と収益事業に関する軽減税率の適用などについて、課税を強化する方向で見直すかどうか、というお話が日経3面に出ていた、ということですね。
ひとつの背景として、昨今では事業多様化による、民間と公益法人との競合激化の傾向があるようにも思います。
同じような事業を営んでいるA株式会社とB公益法人が、マーケットにいる消費者としては、「ライバル企業じゃん?」と考えられているところ、じつはそれぞれが課税関係では違う扱いになっている、なんてこともあったりしてね。
ちなみに、資格試験の専門学校という意味では、2つの大手であるTACと大原の関係が興味深いところです。
TACはバリバリの上場企業です。
株価もついています(前日5/1の終値294円)。
たとえば平成25年3月期の売上高は209億円で、経常利益は3.7億円…ですか。
売上高経常利益率1.77%はけっこう厳しいっすね。
いっぽう、大原学園は、学校法人会計なので、厳密な意味での会社会計における損益計算とは異なりますが、同時期の帰属収入(基本金組み入れ前)が263億円と、TACを少し上回っています。
これに対して、損益計算書の諸費用に相当する消費収支の額が233億円ですね。
ざっと30億円の収支(基本金組み入れ前)でしょうか。
そういえば、以前聞いた話ですが、大原に通っていた方が、通学に係る定期代などは、まさしく通学扱いで安かった、と話されていた記憶があります。
私が受験生時代に本科生として通っていたTACでは、たしか通勤扱いの定期でした(私の手続きミスでなければ)。
合格前の当時はプータロウ(今で言うニート?)で資格試験の受験浪人だったことから、「家計的にはきっちいな?」と金欠の主要因の一つだったという苦い記憶が蘇ります。
でも、TACと大原って、受験生からしたらほぼ「どっちも同じ簿記や会計を主戦場にした専門学校でしょ?」ってイメージですよね。
大手のライバル同士だけど、かたや上場企業で、かたや学校法人というスタイルは、なかなか他の業界では見られないのでしょうか。
他業種はよくわかりませんが、ふと、この日の新聞記事を見て、我が資格試験業界の大手のライバル関係について、思いを馳せてしまいました。
あ、ちなみに、柴山会計ラーニングは株式会社です。
…最後に、あまり文脈とは関係のない情報でした。
※柴山式簿記講座→ https://bokikaikei.info
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 公式法変動予算(2級工業簿記)
公式法変動予算の定義 製造間接費を管理する方法 操業度(生産量や稼働時間)の増減に応じて予算額が変動 関連用語 固定予算、製造間接費の管理、予定配賦、配賦差異など 予算の概念 将来の一定期間における事業計画の財務面を示す経営計画 製造間接費は「変動費」と「固定費」に分けて管理 変動費 操業度の増減に応じて変動する原価(例:水道光熱費、間接材料費) 固定費 操業度に関わらず一定額が発生する原価(例:家賃、リース料) 変動予算の特徴 固定費は操業度に関係なく予算額は変わらない 変動費は操業度に応じて予算額が調整される 具体例 フル操業(500時間)、変動費率700円、固定費600,000円の場合 500時間の予算額: 700円 × 500時間 - 受取手形(3級・2級商業簿記)
受取手形 手形は売上代金の回収方法の一つで、現在は手形レス化が進んでいる それでも簿記学習には重要なテーマ 受取手形の定義 将来の一定期日に、手形に記載された代金を受け取る権利を表す資産勘定 関連用語 売掛金: 商品を販売して代金を後で受け取る権利 売上債権: 売掛金と受取手形を合わせたもの 貸倒引当金: 売上債権に関連し設定される 売上代金の回収方法 現金売上: 代金をその場で受け取る 掛売上: 後払い、未回収の代金は「売掛金」 受取手形: 取引先が発行した約束手形を受け取った場合 取引例 商品40万円を売上げ、20万円を現金で受け取り、残り20万円を約束手形で受け取る 仕訳例 売上 400,000円 現金 200,000円 受取手形 200,000円 - 報酬、連結決算、有価証券報告書
報酬 職務の遂行に対する対価として支払われる現金やその他の資産。 従業員の報酬 給与手当(指示命令系の仕事)。 役員の報酬 役員報酬(専門家としての経営成果に対する報酬)。 経営プロフェッショナルとして経営を委託されるため、給与とは区別される。 専門家報酬 会計士や税理士に支払う報酬(業務委託の形)。 連結決算 親会社と子会社などの企業群の決算を合算して、グループ全体の損益を算出する手法。 上場企業においては、単体決算だけでなく、連結決算が重視される。 連結決算に基づく財務諸表は「連結財務諸表」と呼ばれる。 英語表記は「Consolidated Financial Statements」。 有価証券報告書 上場企業や一定規模以上の企業が作成し、外部に開示する義務がある報告書。 - 製造間接費(2級工業簿記)
製造間接費の定義 製造間接費は、間接材料費、間接労務費、間接経費の合計額。 これらの費用は直接製品に関連付けられないため、基準を用いて製品に配分する。 製造間接費の配分基準 直接作業時間や機械運転時間、直接労務費などが配分基準として使用される。 作業時間が多い製品には、より多くの製造間接費が配分される。 関連する用語 間接材料費、間接労務費、間接経費、配賦率、配賦、仕掛品 など。 配賦率は、1時間あたりの製造間接費を示し、基準に基づいて製品ごとに製造間接費を配分するために使用される。 製造間接費の配分方法 製造間接費は直接製品に関連付けられないため、合計額を配分基準に基づいて配分する。 直接作業時間や機械運転時間などの基準を使用して、配賦率を算出し、製品ごとに配分。 - 退職金、総務、経理
退職金 簿記2級から登場、簿記1級では頻繁に出題 企業で長年働いた役員や従業員に支払われる金銭 長期間の勤務に対する対価として、支払額は大きくなることが多い 退職金を毎年積み立てることが望ましい 退職給付引当金として負債計上 役員への退職金は「退職慰労金」と呼ばれることもある 簿記では従業員に対する退職金の引当金を覚えることが重要 総務 企業内で重要な役割を担う管理部門 人事、経理、広報などの専門部署がない場合、業務をまとめて担当 企業によって役割や業務内容が異なる 大企業では株主総会の準備や社長秘書業務なども含まれる 中小企業では管理業務のほとんどを担当することがある 営業部門や製造部門などの専門部署以外の事務を担当 経理