ライオン、転換社債型150億円を発行
ライオン株式会社は、4月16日に、第三者割当による「転換社債型」新株予約権付社債を発行し、150億円を調達すると発表しました。
発行価額は額面1億円につき、額面と同じ1億円だということです。
(ライオンのプレスリリース)
http://www.lion.co.jp/ja/company/press/2014/pdf/2014040.pdf
http://www.lion.co.jp/ja/company/press/2014/pdf/2014042.pdf
ここで、新株予約権付社債とは、新株予約権というおまけのついた社債です。
【用語解説】
社債:
株式会社が、投資家から資金を調達するために発行する債券(将来の返済を約束する証書。譲渡可能)のことです。
新株予約権:
将来の一定期間中に、一定の価格(行使価格)で株式の交付を受けることができる権利のことです。
社債の返済期日(満期日)における返済額=額面と発行価額の関係により、次の3つの発行方法があります。
1.平価発行:額面と発行価額が等しいケース
(取引例)
A社は、額面1000万円の社債を発行価額1000万円で発行し、現金を受け取った。
(借方)現金1000万円 / (貸方)社債1000万円
2.割引発行:額面より低い発行価額のケース
(取引例)
B社は、額面1000万円の社債を発行価額980万円で発行し、現金を受け取った。
(借方)現金980万円 / (貸方)社債980万円
3.打歩(うちぶ)発行:額面より高い発行価額のケース
(取引例)
C社は、額面1000万円の社債を発行価額1010万円で発行し、現金を受け取った。
(借方)現金1010万円 / (貸方)社債1010万円
なぜ、社債を額面と異なる金額で発行するかというと、主として、社債自体の利回りが市場における他の金融商品の利回りよりも低かったり高かったりすることがあるため、そのようなアンバランスを調整するために行われるわけです。
たとえば、上記2.のB社のように、将来1000万円で償還される社債を今は980万円という安い金額で発行し、払い込んでもらうということをする背景には、その社債の約定利率(額面に対する支払利息の率)が世間の金融商品よりも低いケースが多いです。
具体的には、世間一般の投資信託などの金融商品の代表的な利回りが3%だとすると、B社が発行する社債の約定利率が2%だったら、どうでしょうか。
平価発行をしたら、誰も買おうとしないでしょう。
もらえる利息が世間一般の金融商品より安いからです。
そこで、不利な利率を補うために、将来1000万円で償還される社債を、今なら980万円の払込でOKですよ!と世間にアピールするのです。
つまり、償還時に20万円の上乗せがあるわけですから、それならばということで、投資家もB社の社債を買いやすくなりますね。
はんたいに、上記3.のC社のように、額面よりも高く発行するケースの主な理由として、約定利率が4%と、世間一般の金融商品よりも金利が高いなどの事情があったりします。
これならば、発行時に少々高い値段で払い込んでも、利回りが高いから、C社の社債を買おうかな、と思ったりしますよね。
このほか、打歩発行が行われるケースとして、新株予約権などのオマケ付の場合も考えられます。
オマケがあるなら、やはり額面よりちょっと高くても、買おうかな、と思うかもしれませんね。
ちなみに、今回のライオンのケースは、平価発行です。
しかも、金利はゼロなのに!です。
「え?金利ゼロなら、割引発行しないと、買い手がつかないのでは?」
ご安心ください。
新株予約権というオマケがしっかりついていることから、約定利率がゼロでも、買い手がつくだろう、という見込みがたつのですね。
投資家としては、株価が上昇すれば、割安の行使価格でライオン株を取得することができます。
なお、基本的には新株予約権を行使すると、行使価格×株数だけ資金を払い込むのですが、今回のように「転換社債型」というタイプだと、すでに払いこんである社債の代金を、そのまま株式の代金に転用(代用払込)します。
したがって、「転換型」の場合、社債への投資が、新株予約権の行使によって、株式への投資に転換することになります。
以前は、このような社債を「転換社債」といいました。
英語ではコンバーティブルボンド(CB)などと呼ばれていたんですね。
細かい話をしましたが、社債を発行した企業は、バランスシート(貸借対照表)上、長期間返済不要の負債ということで、「固定負債」の区分に表示されます。
バランスシート
(資産) (流動負債)
(固定負債)
社債 150億円
ライオンが社債発行により調達する予定の150億円に関して、その資金の主な使途は、2014年7月に返済期日が到来する長期借入金212億円の返済資金の一部に充当する予定だそうです。
この長期借入金は、主に解熱鎮痛薬「バファリン」ブランドなどの商標権の取得にかかる資金調達だそうです。
バファリンといえば、頭痛薬のイメージが強いですが、昔からある代表的な薬ですね。
こうやって身近な商品に関連して会計に関するニュースを見ると、より一層、会計学習に親しみやすくなるのではないでしょうか。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 【連結入門・未実現利益の考え方】土地と建物の未実現利益に関する処理の比較でマスター
連結会計を学ぶ上で、未実現利益の正しい理解は必須ですね。 この点、最初の理解の仕方を間違えてしまうと、けっこう連結が苦手になったり、遠回りしてしまったりしてしまいます。 そこで、今回の動画では、まず一番簡単な土地の親子間売買(ダウンストリーム)を取り上げ、それとの比較で建物の売却による未実現利益の消去と、それに伴う減価償却費の連結修正について簡単な事例を使って解説いたしました。 この10分程度の動画をさっと視聴することで、連結会計の未実現利益に対する苦手意識を取り除くきっかけになればうれしいです! - 会計士志願者が2倍も、監査法人離れ
2023年9月21日の日経1面です。 2015年を底に2023年までの8年間で公認会計士試験の受験者数が倍増し12年ぶりの2万人台を記録したそうです。 ※2013年~2023年の願書提出者数 2023年 20,318人 2022年 18,789人 2021年 14,192人 2020年 13,231人 2019年 12,532人 2018年 11,742人 2017年 11,032人 2016年 10,256人 2015年 10,180人 2014年 10,870人 2013年 13,224人 (資料:マイナビ会計士)※2013年~2022年 ※2023年は金融庁ホームページ たしかに、過去10年程度で2015年の10,180人がそこになっており、そこから20,318人ですから、この期間において2倍程度増えていますね。 - 社外役員の兼任者数が4割アップ!?~会計士・税理士に新たなフィールドのチャンスが到来?
昨日の日経朝刊は、コーポレートガバナンスに関する非常に興味深い記事でした。 日経1面に出るということは、その日のニュースの中でも日本経済全体に影響を及ぼすと判断されたトピックと考えられるのですね。 いま、日本企業の多くは閉塞感にとらわれているかもしれません。 先行き不透明な中、社内の限られた知見だけで経営を続けていくのがますます難しくなってきています。 社内の常識が世間の非常識、なんてこともあったりしますね。 私は監査法人の勤務時代から強く感じていたことがあります。 会計士はその会社に年中いるわけではないので、その会社の業界知識の深さについてはかなわないのですが、彼らになくて私たちにあったのは「他の多くの会社の実務を見て実態を知っている」という点です。 - 【時事ニュースで学ぶ会計知識】オリンパスの売上高当期純利益率が100%超!?
2023年8月30日の日経18面で報じられていました。 オリンパスの売上高当期純利益率がなんと100%を超えたという珍しいケースです。 普通は、売上高を100とするならば、営業利益は5~8%程度、当期純利益は税引き後なので3~5%くらいがよくあるケースです。 営業利益率が10%以上になってくると、本業で結構儲けが出ている印象を受けます。 個人的には非常に良いイメージですね。 この点、オリンパスさんの営業利益率は13%を超えていますので、一般的な視点で行けば本業での好調さが想像されます。 そして、そこから一定の調整を経て、さらに法人税等が差し引かれるので、営業利益よりも当期純利益は少なくなるのが通常です。 しかし! - 【読んでみたい一冊】週3バイトが東大合格した時間術の本
今回は時間術に関する興味深い視点の本をご紹介します。 限られた時間で効率よく勉強しながら東大に合格した実体験から自身で身に着けた時間管理ノウハウを本にまとめたものです。 ユニークな視点でなるほど~、と思わせるところが多いのと、読みやすく短時間で一気に通読できることから、手軽に時間生産性を上げるためのヒントとして、動画で取り上げてみました。 全部で3章構成からなっているのですが、その全体フローがそのまま企業コンサルの手順にも応用できます。 すなわち、 ステップ1 ムダを削減する ステップ2 今の仕事の効率を上げる ステップ3 それを継続する です。 こうやって書いてみると非常にシンプルですが、そのシンプルさの中にこそ、マネジメントの本質が隠されていることもあります。