企業年金、2つの制度改革が企業業績に影響
今朝の日経朝刊の報道では、2つの企業年金に関連した制度改革が企業の業績にマイナスの影響を与えかねないとして、警笛が鳴らされています。
ひとつめは確定拠出年金制度への移行が進んでいる現象です。
確定拠出型年金とは、運用次第で退職後にもらえる年金の額が増えたり減ったりする制度のことです。
2月末で、確定拠出年金を導入している企業は4381社、加入者は1月末で465万人に上るそうです。
従来の主流だった確定給付型は、従業員の退職後に支払う退職金の額が決まっていて、積立済みの年金資産に不足が生じた場合には、その拡大した不足分を企業が負担して退職給付引当金として負債計上しなければならないため、株価の低迷などにより、企業の業績が悪化するリスクが常にありました。
そして、これも従来の会計基準では、たとえいっときの株価下落などで積立不足が拡大しても、一事業年度にすべてを費用として計上する必要はなかったわけで、その後の数年間にわけて少しずつ退職給付引当金を設定すると同時に費用を少しずつ計上すればよかったのです。
費用の計上は、すなわち純資産(株主の持分)の減少につながります。
これが、2014年3月期の決算から、連結貸借対照表の上で、年金積立不足を一気に負債計上する必要が出たことから、純資産がいっきに減少する可能性も出てきました。
こういった会計基準の変更にともない、積立不足が一気に顕在化する従来の確定給付型をやめて、確定拠出型への移行を後押しすることになった、
ということです。
2つめは、OB社員の退職給付のカットも現実化しているという状況です。
たとえばセイコーエプソンは、2015年3月期から確定給付年金で現役社員が3割、OB社員も約1割の給付カットを実施するといいます。
これまでは日本航空や東京電力など、実質的に経営破綻した企業での事例が目立っていましたが、今後は、経営破綻していない場合でも、OBの退職給付がカットされるケースがでてくるかもしれませんね。
なお、従来の会計基準では、退職給付の負債は、貸借対照表の固定負債の区分に「退職給付引当金」という名称で表示されていました。
しかし、2014年3月からは、連結貸借対照表において、負債に計上する科目名が「退職給付に係る負債」と変わります。
同時に、決算日時点の積立不足額は生じた時に一気に負債計上し、従来のような少しずつ負債として計上するというやり方ではなくなります。
このような事情が、確定拠出型への移行を後押ししている、というお話なのですね。
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