NTTが個人株主を16%台から20%超へ増やす意向
NTTは、現在16%台の比率にとどまっている個人株主の割合を、将来的には20%超まで高めたいと考えているようです。
個人を対象とした説明会を年間50回以上開くなどして、株主との対話に努めています。
3月5日の個人向け事業説明会では、初めて 鵜浦 博夫(うのうら ひろお)社長が出席したという力の入れようです。
なぜ、それほどまでに個人株主の比率を高める必要があるのでしょうか。
現在、上場企業がIR(投資家向け広報活動)の主な対象とする株主には、大きく、つぎの3つのグループがあります。
1.個人投資家
2.機関投資家(顧客から資金を集めて運用する信託、ファンドなど)
3.外国人投資家
個人投資家と外国人投資家は、どちらもだいたい全体の20%くらいずついるというかんじだとおもいます。
外国人投資家の動向が日本の株価を大きく左右することも多いですが、最近ではアベノミクスによる株価の好調さや、NISA(少額投資非課税制度)のスタートなども手伝って、個人の株式に向けての関心が高まっています。
そして、個人投資家が企業のIR対象の候補として重要視される場合の理由には、おもに次のようなことが考えられます。
1.会社のファンが増え、優良顧客になる可能性もある。
個人株主を上手に増やせている企業は、同時に会社の商品・サービスのファンとしても取り込めるチャンスが大きく広がります。
自分が出資している会社は、他の会社よりも身近に感じられ、応援したくなる気持ちが高まりますね。
同時に、株主優待によるイメージアップや個人株主の満足度向上も見逃せません。
特にBtoC(個人向けビジネス)を主戦場としている企業にとっては、よりいっそう個人投資家を呼び込むメリットが高まります。
2.安定株主の増加
短期思考で売買する個人投資家も増えましたが、依然として無視できないのが、会社の株を長期間保有してくれる個人です。
会社への愛着が強い、企業イメージが良いなど、その会社の総合力が試されるところです。
3.株価の下支え
株価が下がった時でも、会社自体のファンダメンタルズ(基盤)がしっかりしていると判断されれば、値ごろ感に敏感な個人投資家ならば、そういった銘柄に注目し、返って買い支えてくれることもあるのではないかと思います。
4.経営方針の独自性を保ちやすくなる
個人株主がたくさんいることで、一部の大株主の意向に無理やり影響されることなく(たいていは短期思考なので)長期的な成長を見据えた経営陣の独自性ある経営を実行しやすくなります。
また、個人投資家を大事にする企業とのイメージが定着すれば、資本市場からの評価も高まるでしょう。
株価や時価総額の改善にも寄与するでしょうし、そうなれば他社からの敵対的な買収のリスクもさらに低く抑えることができるようになります。
株式時価総額の上昇は、企業防衛にもつながります。
いっぽう、個人株主は、一般に個々の所有株数は少ないことが多いため、株主数がとても多くなります。
そうなると、事務管理コストが馬鹿にならないほど膨らみやすいので、費用対効果を考えて、個人株主への対応を検討する必要がありますね。
以上が個人株主を多く抱えることのメリットとデメリットの代表例です。
NTTに話を戻しますと、上場から30年近く経つことから、個人株主の高齢化がすすんでいるという現状があります。
したがって、今後は、あらたに40代?50代など、これから真剣に株式投資を考えるようになる世代を中心に、個人株主の層を開拓しようという強い意識が見て取れます。
現状、NTTにおける個人株主数は約87万7千人だそうです(2013年3月末)。
上場企業でも最大規模ではありますが、それでもバブル後の2002年3月末の160万人と比べると、半分近くまで個人株主数が減ったことになります。
まあ、それでも80万人以上というのもすごい話ですが…。
というわけで、かつては23%程度いた個人株主が、今では16%台へと低下したということから、今後は20%超を目指そう!という動きが出ても、たしかにおかしくはないなあ、と思います。
今回は、企業の立場からIR活動と個人投資家の意義について考えてみました。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 予算差異(2級工業簿記)
予算差異 予算差異は「配賦差異」の一部で、予定配賦額や正常配賦額と実際配賦額の差額を指す。 配賦差異には「予算差異」と「創業差異」の2種類がある。 予算差異は2級試験で重要な費用に関するテーマ。 予算差異の定義 予算差異とは、製造間接費の予算許容額と実際発生した額との差異。 言い換えれば、予算をオーバーした部分が予算差異にあたる。 関連用語 「実際配賦」「予定配賦率」「製造間接費」「操業度差異」「部門費」など。 予算差異の計算方法 変動予算の場合:予算許容額は「予定変動費率×実際操業度+予定固定費」で計算。 固定予算の場合:予算額は操業度に関わらず一定。 予算差異の計算例 実際操業度450時間、実際製造間接費945,000円、予定変動費率700円、基準操業度500時間、固定予算600,000円の場合。 - 貸付金・借入金(3級・2級商業簿記)
貸付金と借入金 ビジネスシーンや会計試験でよく登場する重要な概念。 特に、簿記3級以上の試験では重要度が高く、しっかり理解しておくべき。 貸付金と借入金の定義 貸付金:金銭を他者に貸し付けることで発生する。会計上は資産(I資産)に分類。 借入金:金銭を借り入れることで発生。将来の支払義務が生じ、会計上は負債(Ⅱ負債)に分類。 手形を伴う場合、手形貸付金や手形借入金という言葉が使われる。 関連語句 支払利息(借入金)、受取利息(貸付金)、手形貸付金、手形借入金など。 貸付金と借入金の利息処理 貸付金:金銭を貸し付けることで、利息を受け取り受取利息として会計処理。 借入金:金銭を借り入れた場合、利息を支払い支払利息として処理。 - 未収収益(3級・2級商業簿記)
未収収益は経過勘定に分類される項目の一つ。 経過勘定には他に「前払費用」「未払費用」「前受収益」がある。 簿記3級以上の試験で頻出の重要項目で、試験の重要度は★3つ。 未収収益の定義 継続的に役務の提供を行っている場合に、決算時点でまだ入金されていないが、役務の提供は完了している収益を計上する経過勘定。 提供された役務が当期に属する収益で、支払いはまだ行われていない状況。 関連語句 未収利息(預金や貸付金の未収利息) 受取利息 未収の受取手数料 役務がまだ提供されていない場合は「前受収益」として計上。 未収収益の例 受取家賃や受取利息など、時間契約に基づく収益。 決算日までに役務が提供済みだが、支払期日がまだ来ていないため、未収収益として計上。 - サービス、商業簿記
「サービス」について 経済用語では、サービスとは、売買において相手に効用や満足を提供する形のない財。 法律用語では、サービスは「役務」と呼ばれる。 サービス提供による収益は「売上」ではなく、「役務収益」として区別される。 会計上の重要点 サービスがどの事業年度に提供されたかを判断することが重要。 例:映画の前売り券販売。 映画を観せるサービスが翌月(4月)に提供される場合、その収益は来年度の役務収益として計上され、3月決算時には売上として計上できない。 決算日をまたぐ取引では、サービス提供のタイミングを正確に把握する必要がある。 「商業簿記」について 商業簿記は、完成した商品を購入して販売する企業の取引を管理する簿記。 - 手形、精算表、倒産
手形 約束手形:受取人または指図人に対して、一定期日までに一定額を支払うことを約束する手形。 為替手形:手形の振出人が第3者(支払人)に対して支払いを委託する手形。 商取引で支払いの手段として使用される。 例:2ヶ月後に100万円を支払うために約束手形を発行。 精算表 試算表から損益計算書や貸借対照表を作成するための計算表。 6桁精算表:試算表、損益計算書、貸借対照表の借方・貸方の6つの欄があり、視覚的に分かりやすく、チェックしやすい。 8桁精算表:6桁精算表に修正記入欄が追加されたもの。 10桁精算表:8桁精算表に整理後試算表の借方・貸方が追加されたもの。 試験の重要度:8桁精算表が特に頻出。 倒産 企業や個人が債務を返済できず、事業を継続できない状態。