ビットコインのマウントゴックス、民事再生法申請1)
インターネット上の仮想通貨であるビットコインの取引所を運営していた東京・渋谷にあるマウントゴックスが、2月28日に民事再生法の適用を申請し、同日受理されたそうです。
顧客分の75万ビットコインおよび自社保有分の10万ビットコイン、日本円にして470億円前後という試算もされています。
相当の額の電子マネーが消失したことになりますね。
ビットコインを利用していて、この騒動に巻き込まれてしまった方はお気の毒だと思います。
会社自体は65億円の流動負債を抱えているとのことで、債務超過状態になっています。
ここで、ビットコインの基礎知識について確認しておきましょう。
【ビットコイン】
インターネット上で流通している仮想の通貨。
通貨の単位はBTC。
ビットコインの発行や流通を管理する事業主体や国家もなく、中央銀行のようなものも存在しないのが特徴である。
米ドルや円などとの交換は、ウェブ上の「取引所」を通して行われる。
しかし、じっさいの決済にさいして銀行などの金融機関を通さないため、手数料などが発生しない。
この点、低コストで送金手続きが取れることから、少額の売買取引やP2P(個人同士)の代金決済、さらには国境を越えた送金や決済に利用される。
このように、従来の経済常識の枠を超えたビットコインですが、もしも企業がこのビットコインを取得したら、いったい経理上はどのような仕訳になるのでしょうか。
たとえば、取引所に現金5万円を払って1ビットコインを買ったら、どうなるのか。
(借方) 現金
(ビットコイン) 5万円 / (貸方) 現金
(日本円) 5万円
という仕訳はなりたつのでしょうか?
答えは、個人的な感想として、現時点ではまだちょっと「現金」勘定の仲間に入れるには時期尚早のような気がします。
理由は、現在、簿記の経理実務上、「現金」勘定で処理できる範囲は一応次のように決まっているからです。
<知識>現金の範囲
1.通貨
紙幣、硬貨
2.通貨代用証券
他人が振り出した小切手、郵便為替証書、配当金領収証、預金手形など
つまり、ビットコインというあたらしすぎる仮想のマネーは、簿記の経理実務がまだ想定していない領域なのではないか、という見方ですね。
似たようなものにSuicaとかPASMOとかKitacaとかICOCAなどの乗車券機能からはじまった電子マネー系がありますね。
たとえばSuicaをチャージしたとき、どんな仕訳が考えられるのか。
簡単な仕訳例で示してみましょう。
(例1)
5,000円をSuicaにチャージした。
(借方)仮払金5,000円 /(貸方)現金5,000円
(例2)
Suicaで電車に乗ったので、1,000円引き落とされた。
(借方)交通費1,000円 /(貸方)仮払金1,000円
こんな感じの仕訳が考えられます。
このほか、チャージの時に借方を仮払金ではなくいきなり交通費とする簡便な処理例も考えられますが、そのさいにはその実態も踏まえて、注意する必要があると思います。
なお、Suicaのチャージ額を現金のままにしておく、というのは個人的にはちょっと違和感があります。
それがゆるくなりすぎると、ビットコインも現金かい?という話に発展しますが、今回のマウントゴックスのような突然パー!になるリスクを考えると、日銀が発行するような日本円などと同列にするのは、いかがなものかなーと思えますね。
以上、今回はビットコインをネタに、電子マネーの会計処理や現金勘定の意味について考えてみました。
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