4社に1社が海外で二重課税を経験
日経新聞が 10 月に、主要 521 社を対象に実施した調査の結果、159 社から回答を受け、そのうち 26%の会社が最近 5 年間で複数の国から二重に課税される経験をしたことがわかりました。
最近、税務調査でも国際取引を対象とした案件が増えてきているようで、巨額な申告漏れの指摘につながるケースも珍しくありません。
たとえば、2000 年代なかば以降、ホンダやソニーなどが追徴課税されて大きなニュースになったことがありました。
あるいは、2012 年 4 月には、武田薬品工業が以前に移転価格税制で大阪国税局から受けていた追徴課税について、申告漏れと指摘されていた 1223 億円のうち約 8 割にあたる 977 億円を取り消す決定書を受取、合計 571 億円
もの還付を受けるという興味深いケースもあったりします。
いずれにせよ、国際的な追徴課税が行われると、その額は 100 億円から1000 億円の規模に上ることが少なくありません。
税務当局としては、大きな案件になりやすいのですね。
ちなみに、よくあるパターンとして、海外子会社との取引価格が不当に高すぎたり低すぎたりというかたちで税務当局から指摘され、たとえば税率の低い海外に過大な所得を計上させて、日本法人の所得を低くするような
取引が否認されたりします。
オリンパスの事例では、7 月に英国子会社とのグループ間取引に関して日本側で約 103 億円の申告漏れを指摘され、英国と日本で二重に課税される状態になっています。
このケースでは、平成 23 年 3 月期までの 5 年間で、医療機器製造の連結子会社が内視鏡などの医療機器や部品をイギリスの子会社に輸出していたのですが、その取引価額が独立企業間価格(一般的な企業間での取引価格)
よりも不当に安かったという東京国税局の主張を受けて、14 億 7 千万円にものぼる徴税額が発生することになりそうだ、ということでした。
こうなると、英国では日本からの仕入れ値が非常に低いならば英国ではそれだけ多くの利益が出ますね。
その結果、日本に比べて法人税等が安くなる英国で多めに利益を出し、日本では安く売ることによって利益を抑えるという操作が可能ではないか?というお話です。
もしも東京国税局の主張が通れば、あらためて日本から英国子会社への輸出価格を高く設定し直して税額計算しますから、日本での納税額が増える代わりに、本来ならば英国子会社で仕入原価が膨らむはずなので、英国で
の納税額は一部返ってこなければなりません。
英国で過大の納税になるからです。
しかし、この問題は英国の徴税事務と日本徴税事務でオリンパスグループの所得に対する税金の取り合いみたいな様相を呈してくるようにも見えます。
そこで、日英間の税額に関する調整が税務当局でうまくいかないと、オリンパスは両方で二重に税負担することになりかねません。
このような問題に直面した企業が 26%に上る、というお話なのですね。
ちなみに、追徴税額については、最近新しく出た会計基準に「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」というのがあり、平成 23 年 4 月 1 日以降開始事業年度から適用開始となったことにより、やや面倒になっています。
基本的には上場企業の決算に限って適用されるのが現実的だと思いますが、もともと税務調査で指摘された追徴税額が、過去の処理の誤りであるという状況(これが多いと思いますが)ならば、当期の損益計算には反映させ
ず、さかのぼって過去の該当する年度の損益計算書の「法人税等」の費用表示額を訂正して増やしましょう、という話になっています。
従来は、当期の損益計算上、税引前当期純利益の下、「法人税等」という費用科目の下に「法人税等追徴額」などの名称で表示されるのが原則でしたが…。
しかし、中小企業は、実際問題として過去の修正表示みたいな上場企業の監査対象の場合にやるのとはちがった実務になるのかな、という気がします。
以上、国際的な2重課税に悩まされている大手企業が多いというお話と、税務調査で指摘された過去の追徴税額などに関する損益計算表示の処理に関する話題をお届けいたしました。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 公式法変動予算(2級工業簿記)
公式法変動予算の定義 製造間接費を管理する方法 操業度(生産量や稼働時間)の増減に応じて予算額が変動 関連用語 固定予算、製造間接費の管理、予定配賦、配賦差異など 予算の概念 将来の一定期間における事業計画の財務面を示す経営計画 製造間接費は「変動費」と「固定費」に分けて管理 変動費 操業度の増減に応じて変動する原価(例:水道光熱費、間接材料費) 固定費 操業度に関わらず一定額が発生する原価(例:家賃、リース料) 変動予算の特徴 固定費は操業度に関係なく予算額は変わらない 変動費は操業度に応じて予算額が調整される 具体例 フル操業(500時間)、変動費率700円、固定費600,000円の場合 500時間の予算額: 700円 × 500時間 - 受取手形(3級・2級商業簿記)
受取手形 手形は売上代金の回収方法の一つで、現在は手形レス化が進んでいる それでも簿記学習には重要なテーマ 受取手形の定義 将来の一定期日に、手形に記載された代金を受け取る権利を表す資産勘定 関連用語 売掛金: 商品を販売して代金を後で受け取る権利 売上債権: 売掛金と受取手形を合わせたもの 貸倒引当金: 売上債権に関連し設定される 売上代金の回収方法 現金売上: 代金をその場で受け取る 掛売上: 後払い、未回収の代金は「売掛金」 受取手形: 取引先が発行した約束手形を受け取った場合 取引例 商品40万円を売上げ、20万円を現金で受け取り、残り20万円を約束手形で受け取る 仕訳例 売上 400,000円 現金 200,000円 受取手形 200,000円 - 報酬、連結決算、有価証券報告書
報酬 職務の遂行に対する対価として支払われる現金やその他の資産。 従業員の報酬 給与手当(指示命令系の仕事)。 役員の報酬 役員報酬(専門家としての経営成果に対する報酬)。 経営プロフェッショナルとして経営を委託されるため、給与とは区別される。 専門家報酬 会計士や税理士に支払う報酬(業務委託の形)。 連結決算 親会社と子会社などの企業群の決算を合算して、グループ全体の損益を算出する手法。 上場企業においては、単体決算だけでなく、連結決算が重視される。 連結決算に基づく財務諸表は「連結財務諸表」と呼ばれる。 英語表記は「Consolidated Financial Statements」。 有価証券報告書 上場企業や一定規模以上の企業が作成し、外部に開示する義務がある報告書。 - 製造間接費(2級工業簿記)
製造間接費の定義 製造間接費は、間接材料費、間接労務費、間接経費の合計額。 これらの費用は直接製品に関連付けられないため、基準を用いて製品に配分する。 製造間接費の配分基準 直接作業時間や機械運転時間、直接労務費などが配分基準として使用される。 作業時間が多い製品には、より多くの製造間接費が配分される。 関連する用語 間接材料費、間接労務費、間接経費、配賦率、配賦、仕掛品 など。 配賦率は、1時間あたりの製造間接費を示し、基準に基づいて製品ごとに製造間接費を配分するために使用される。 製造間接費の配分方法 製造間接費は直接製品に関連付けられないため、合計額を配分基準に基づいて配分する。 直接作業時間や機械運転時間などの基準を使用して、配賦率を算出し、製品ごとに配分。 - 退職金、総務、経理
退職金 簿記2級から登場、簿記1級では頻繁に出題 企業で長年働いた役員や従業員に支払われる金銭 長期間の勤務に対する対価として、支払額は大きくなることが多い 退職金を毎年積み立てることが望ましい 退職給付引当金として負債計上 役員への退職金は「退職慰労金」と呼ばれることもある 簿記では従業員に対する退職金の引当金を覚えることが重要 総務 企業内で重要な役割を担う管理部門 人事、経理、広報などの専門部署がない場合、業務をまとめて担当 企業によって役割や業務内容が異なる 大企業では株主総会の準備や社長秘書業務なども含まれる 中小企業では管理業務のほとんどを担当することがある 営業部門や製造部門などの専門部署以外の事務を担当 経理