吉野家がコメを自主生産へ切り替え
吉野家ホールディングスが、福島県で米の生産を始めるそうです。
10月1日付で福祉眼県白河市の地元農家などと共同出資で農業生産法人を設立し、牛丼店の主要食材を安定的に調達するための自主生産ノウハウを確立するとともに、被災地支援も行うという趣旨のようです。
これについては、企業の農業参入に関する規制の問題も含め、いろいろな視点が考えられると思いますが、ここは管理会計(原価計算)の観点からお話ししてみようと思います。
牛丼といえば、その原料は、
(1)お米
(2)牛肉
(3)タマネギや卵などの補助食材
がすぐに思いつきますね。
ほかにも材料費としてカウントされるものには、
・紅ショウガ
・割り箸
などが考えられるでしょうか。
原価計算の世界では、売上原価のもととなる「製造原価(製造コスト)」を
3つの消費形態に分類して集計するのが第一の手順となります。
すなわち、
(1)材料費…製品の製造に向けて消費される物品
(2)労務費…製品の製造のために消費される労働力
(3)経費…材料費・労務費以外の経営資源の消費額
このような3つの分類です。
「形態別分類」ともいいます。
今回は、材料費にスポットを当てて考えます。
材料費には、そのさらに細かい分類があります。
1.素材費…物理的に手を加えて製品とする物品
2.買入部品費…そのまま製品に取り付けて一部となる物品
3.燃料費…石炭・重油等の燃料の消費額
4.工場消耗品費…薬品・油類・雑品(釘、ねじなど)
5.消耗工具器具備品費…耐用年数一年未満の工具備品等
このうち、吉野家の牛丼という製品にとって、お米はまさに素材費ということができます。
つまり、「お米を農家から仕入れ」て、それを素材として牛丼という製品を作り、お客様に提供する…。
お米は「農家が精米したもの」を買ってきて使用するというのが従来の流れだったことでしょう。
今回の記事が言っているのは、こうした「従来は買い入れ」していた素材を今後は自社で生産しようという流れについてなのですね。
お米を外部から仕入れるのではなく、その段階から自社で生産しようではないか、というコンセプトは、原価計算の世界では「部品(材料)の内製化」といいます。
通常は組立産業などで使うことが多い用語なので、部品の内製化といいますが、牛丼の材料はむしろ素材とか原料のように表現した方がよいでしょうから、さしずめ「原料となるお米の内製化(自主生産化)」ということになります。
これが何を意味するかと言いますと、
【従来】※柴山の素人イメージですが…
1.農家の製造工程
冬は土を養生し、
春に田を耕して苗を植え、
夏に雑草をとったり監視したりして育て、
秋に稲が実り、収穫し、さらに精米する。
以上の「農家における材料費・労務費・経費プラス利益」が、吉野家に収められる「お米という製品」に乗せられ、吉野家のお米という材料の仕入単価に反映される。
2.吉野家の製造工程
農家における「材料費・労務費・経費・利益」が乗ったお米の仕入原価…材料費と、吉野家の中でかかる労務費・経費を合計し、さらに利益を乗せて牛丼としてお客様に提供する。
これについて、農家の製造工程までを吉野家がとりこんでしまおうという発想です。
これによって、吉野家がお米の生産量をダイレクトに管理できるだけでなく、お米を仕入れる段階でかかっていた材料代に関するあらゆるコストを
削減するチャンスを得ることになります。
いろいろな農家があると思いますが、それらは基本的に個人事業でしょうから、吉野家のような大手で実施されている原価管理の仕組みはないかもしれません。
いずれにせよ、吉野家は思い切った原価管理の手法にトライしているようにも見えますね。
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