パナソニック 4-6月期の最終益1000億円超
パナソニックは、7月31日に2013年度第1四半期の決算を発表し、第1四半期としては過去最高となる1078億円の最終利益を計上しました。
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/2013/07/jn130731-1/jn130731-1.html
人員削減、工場再編のほか円安なども利益のアップに貢献したようです。
なお、通期の最終利益予想は500億円と変更なしでした。
なお、2012年6月期と2013年6月期の3ヵ月間におけるそれぞれの損益
計算書は次の通りです。
(2012年4月-6月)
売上高 1兆8,144億円
売上総利益 4,635億円
営業利益 386億円
税引前利益 378億円
当期純利益 128億円
(2013年4月-6月)
売上高 1兆8,245億円
売上総利益 4,881億円
営業利益 642億円
税引前利益 1,226億円
当期純利益 1,078億円
以上の数字を見比べるとひとつ、気付くことがあります。
営業利益は642-386=256億円ほど確かに増えています。
しかし、税引前利益を比較すると、1226-378=848億円と、800億円を超える著しい増加額ですね。
これは正常な変動幅を超えています。
で、その理由を探してみますと…。
どうやら、退職年金制度の移行にともなう当期に特有の利益計上額が非常に大きいらしい、ということがわかりました。
パナソニックの決算短信の注記を見ると、詳細が記されています。
その内容を簡単にまとめますと、2013年度第1四半期に、確定給付年金制度から2013年7月1日以降の積み立て分(将来分)を確定拠出年金制度へ移行することを決定したため、米国皆生基準にしたがい、過去の制度改定により減少した退職給付債務の全額を一度に収益として計上しなければならなくなりました。
つまり、制度の変更で減少した将来の退職金の予想未払い額が減ったこと、で会社が得した分を一気に損益計算書の収益に上げましょうね、というお話です。
その額にして798億円ですから、税引前利益の増加額の大部分と言えそうです。
なお、多くの企業がこれまで採用してきている確定給付年金は、すでに規定で決められた計算通りの退職金を、かならず従業員の退職時に支給しなければならないという制度です。
したがって、たとえ運用中の退職年金資産が株価下落などで目減りしても、退職金の支払い義務が減りません。
だから、退職年金基金(従業員への退職金の支払いを代行する機関)への積み立て不足みたいな問題が出てくるのですね。
しかし、確定拠出型となりますと、従業員への退職金の支給額が加入者(従業員)自身の運用結果で決まってくるため、たとえ株価下落などによって年金資産が目減りしても、退職金の支払い義務はそれに連動して変化します。
この点で、年金資産の運用結果にかかわらず、退職給付債務はある一定の
額で決まっている確定給付型と大きく異なります。
企業にとっては積み立て不足の大きな不安が軽減されるので、ありがたい話ですが、従業員にとっては将来の退職給付額が、運用成績によっては増加する可能性もあるけど減少するリスクも負担することになります。
確定給付型から確定拠出型への移行による利益が798億円出そうだ、ということで、これは本業での収益性とは無関係なので、単純に本業で稼ぐ力が大きく向上したと考えるのはやや早計だと考えられます。
どのような原因で収益が上がり、結果として利益の増加に寄与したかを
冷静に分析し判断する姿勢が、財務分析をする上では重要なのですね。
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