セブン&アイのROEと、分析上の注意点
1月8日に、セブン&アイホールディングスの株価が前日比で6%も上昇したそうです。
その大きな原因として、前日に発表した2013年3月?11月期の連結純利益が前年同期比32%アップの1,280億円を記録したことが考えられます。
積極的なM&Aで、脱デフレ・消費増税などの環境変化に強いブランド力・商品力改善に余念がありません。
コンビニ事業の強化にも注力しているようです。
こういった経営努力が、業績好調・株価上昇につながっているのでしょう。
なお、2014年2月期の通期決算見込みでは、予想される最終利益が1,700億円と前期比23.1%アップです。
ここまでは、企業の勢いがそのまま数字に反映されている感じですね。
2013年11月末時点の自己資本が2兆124億円ですから、予想される自己資本利益率=ROEは、1,700億円÷2兆124億円≒8.5%となります。
(注:ここでは、当期純利益を直前期末の自己資本残高で割っています)
まあまあ良い方の数字ではないか、と思いますが、いかんせん世界的な同業者のトップ企業である米ウォルマートは、ROEが21%を記録しているので、そこからみると、やはり少々見劣りします。
決して悪い数字ではないのですが、ライバルがそこまでいいと、やはりそれに近い数字を目標にしたくなるのが人情というものです。
「彼らも同じ人間なのだから、私たちもできて不思議はない!」このように考えて、チャレンジをするのが若者ってものですねー。
ここで注意しておきたいのは、ROEが高ければ、なんでもかんでもいい会社なのか?といえば、必ずしもそうではない、ということです。
たとえば、自己資本は企業のバランスシートにおける総資産から負債を引くなどして出た差額、すなわち株主の持分にかかる部分ですから、ROEの分母である自己資本の額が半分などの低い額に変化すれば、とうぜんROEは低くなります。
たとえば、2013年11月末時点のセブン&アイの総資産は4兆7542億円で、自己資本2兆0142億円との比率、すなわち自己資本比率は42.4%あります。
これは、全産業の平均がだいたい30%前後であることを考えると、10%ほど高い数値と考えられます。
ここでもしも、セブン&アイがもっと借金をたくさんする体質だったとして、たとえば総資産の70%が負債で、自己資本が30%しかなかったとすると、4兆7542億円×0.3=1兆4263億円となります。
この場合の自己資本利益率=ROEは、単純計算になりますが1,700億円÷1兆4263億円≒11.9%と、もとの自己資本2兆124億円で割った時のROE8.5%よりも、3.4%も上昇しますね!
つまり、借金体質の会社であるほど、ROEは高めに出る傾向があるので、いちがいに「ROEが高いからいい会社」とは言ないこともあるんだ、ということをご理解ください。
「自己資本比率がある程度高くて、なおかつROEが高いと最高!」
ということになりますね。
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