中古資産について
前回は、修繕費と資本的支出についてご説明しました。
実務においては、どちらにするか判断が難しいケースが多いです。
そのため、前回、添付されていた図を元に、どちらになるかを
判断していくことになります。
→ https://bokikaikei.net/2009/08/post_708.html
さて、今回は、中古資産を購入した場合について、説明していきます。
中古資産の特徴は新品の固定資産とは異なった耐用年数が
使用できる点にあります。
通常、固定資産の新品を購入した場合には、法定耐用年数によって、
定額法や定率法によって減価償却をしていくことは分かっていますね。
しかし、中古で購入した場合には、既に何年か経過をしているため、
この法定耐用年数を使用せず、簡便法といわれる方法によって
耐用年数を計算します。具体的には、次の2パターンがあります。
1.法定耐用年数の全部が経過している場合
法定耐用年数×0.2
2.法定耐用年数の一部が経過している場合
(法定耐用年数 ─ 経過年数)+ 経過年数×0.2
※ただし、計算した年数が1年未満の端数があるときは切捨て、
2年に満たない場合は2年とします。
例えば、車両の新品を購入した場合、法定耐用年数は6年になります。
問1:この車両が既に8年経過していた場合、この中古の車両の
耐用年数は何年でしょうか?
答え:既に法定耐用年数である6年を経過しているため、
1.の法定耐用年数が全部経過している場合に該当します。
そのため、6年 ×0.2=1.2年
になりますが、2年に満たないため、耐用年数は2年となります。
問2:この車両が既に3年経過していた場合、この中古の車両の
耐用年数は何年でしょうか?
答え:既に法定耐用年数である3年を経過しているため、
2.の法定耐用年数の一部経過している場合に該当します。
そのため、(6年 ?3年)+3年×0.2=3.6年
になりますが、1年に満たない端数は切捨になるため、
耐用年数は3年となります。
問3:この耐用年数が短くなることでどういったメリットがあるでしょうか。
答え:新品の資産より耐用年数が短いため、減価償却を早期に行うことができる。
例えば、新品のベンツを1000万円で購入した場合、6年経過した
中古のベンツを600万円で購入した場合、それぞれの初年度の減価償却費は、
<新品のベンツ>
耐用年数6年
初年度減価償却費
10,000,000 × 0.417 =4,170,000円
<中古のベンツ>
法定耐用年数の全部が経過している場合
法定耐用年数×0.2 つまり 6年×0.2=1.2 → 2年
初年度減価償却費
6,000,000 × 1.000 ?1円(備忘価額) =5,999,999円
なんと、新品の1千万円のベンツより、中古の600万円のベンツの方が、
初年度に損金にできる金額が大きいことになります。
税務上のメリットを考えた際には、中古の固定資産の方が耐用年数が
短くなるため、節税メリットが大きいことになります。
ただし、ベンツが会社の経費で落とせるかどうかは、この計算とは
別問題ですので、注意してください。
今回は以上です。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
【連結入門・未実現利益の考え方】土地と建物の未実現利益に関する処理の比較でマスター
連結会計を学ぶ上で、未実現利益の正しい理解は必須ですね。 この点、最初の理解の仕方を間違えてしまうと、けっこう連結が苦手になったり、遠回りしてしまったりしてしまいます。 そこで、今回の動画では、まず一番簡単な土地の親子間売買(ダウンストリーム)を取り上げ、それとの比較で建物の売却による未実現利益の消去と、それに伴う減価償却費の連結修正について簡単な事例を使って解説いたしました。 この10分程度の動画をさっと視聴することで、連結会計の未実現利益に対する苦手意識を取り除くきっかけになればうれしいです!会計士志願者が2倍も、監査法人離れ
2023年9月21日の日経1面です。 2015年を底に2023年までの8年間で公認会計士試験の受験者数が倍増し12年ぶりの2万人台を記録したそうです。 ※2013年~2023年の願書提出者数 2023年 20,318人 2022年 18,789人 2021年 14,192人 2020年 13,231人 2019年 12,532人 2018年 11,742人 2017年 11,032人 2016年 10,256人 2015年 10,180人 2014年 10,870人 2013年 13,224人 (資料:マイナビ会計士)※2013年~2022年 ※2023年は金融庁ホームページ たしかに、過去10年程度で2015年の10,180人がそこになっており、そこから20,318人ですから、この期間において2倍程度増えていますね。社外役員の兼任者数が4割アップ!?~会計士・税理士に新たなフィールドのチャンスが到来?
昨日の日経朝刊は、コーポレートガバナンスに関する非常に興味深い記事でした。 日経1面に出るということは、その日のニュースの中でも日本経済全体に影響を及ぼすと判断されたトピックと考えられるのですね。 いま、日本企業の多くは閉塞感にとらわれているかもしれません。 先行き不透明な中、社内の限られた知見だけで経営を続けていくのがますます難しくなってきています。 社内の常識が世間の非常識、なんてこともあったりしますね。 私は監査法人の勤務時代から強く感じていたことがあります。 会計士はその会社に年中いるわけではないので、その会社の業界知識の深さについてはかなわないのですが、彼らになくて私たちにあったのは「他の多くの会社の実務を見て実態を知っている」という点です。【時事ニュースで学ぶ会計知識】オリンパスの売上高当期純利益率が100%超!?
2023年8月30日の日経18面で報じられていました。 オリンパスの売上高当期純利益率がなんと100%を超えたという珍しいケースです。 普通は、売上高を100とするならば、営業利益は5~8%程度、当期純利益は税引き後なので3~5%くらいがよくあるケースです。 営業利益率が10%以上になってくると、本業で結構儲けが出ている印象を受けます。 個人的には非常に良いイメージですね。 この点、オリンパスさんの営業利益率は13%を超えていますので、一般的な視点で行けば本業での好調さが想像されます。 そして、そこから一定の調整を経て、さらに法人税等が差し引かれるので、営業利益よりも当期純利益は少なくなるのが通常です。 しかし!【読んでみたい一冊】週3バイトが東大合格した時間術の本
今回は時間術に関する興味深い視点の本をご紹介します。 限られた時間で効率よく勉強しながら東大に合格した実体験から自身で身に着けた時間管理ノウハウを本にまとめたものです。 ユニークな視点でなるほど~、と思わせるところが多いのと、読みやすく短時間で一気に通読できることから、手軽に時間生産性を上げるためのヒントとして、動画で取り上げてみました。 全部で3章構成からなっているのですが、その全体フローがそのまま企業コンサルの手順にも応用できます。 すなわち、 ステップ1 ムダを削減する ステップ2 今の仕事の効率を上げる ステップ3 それを継続する です。 こうやって書いてみると非常にシンプルですが、そのシンプルさの中にこそ、マネジメントの本質が隠されていることもあります。