ファンドの意義と投資側の会計
とつぜんですが、
いろいろな方と仕事上でお話しするさいに、
ときどき言われるのが、下記の言葉です。
「柴山さんって、よく次から次へと
ぽんぽんアイディアが出ますよね?」
…いやいや、わたしなど、さほどたいしたことを考えている
わけではございません。
もっとすごいアイディアマンの方はゴマンといらっしゃる
訳ですが…
そうはいっても、私なりに企画やアイディアをひねり出すノウハウ、
いちおうあることはあります。
そのうちのひとつだけ、軽くヒントを申し上げると、
ある決まった「構文」を使います。
中学生時代に英語で習った
S + V + O + O
です。
つまり、
S「主語」+V「述語」+O「目的語1」+O「目的語2」
ですね。
ちょっとやってみましょう。
時節柄、下記のような例文はいかがでしょうか。
(例文)彼女は、チョコレートを私に与えた。
She gave me the chocolete.
「…」
「…」
なんか、例文と英訳を見ていると、
「ギブミー・ザ・チョコレート」
と言うフレーズと、
「与えた」という直訳が、
別の意味で涙を誘います。
…話があさっての方に行かないように、
軌道修正しますと、
S「彼女は」 +V「与えた」 +O「チョコを」 +O「私に」
とまあ、こうなるわけです。
ちょっと、日本語の語順らしく並べ替えると、次のようになります。
Sは、O1に、O2を、Vした。
何が言いたいかというと、
バレンタインのチョコの話ではなくて、
「上記の構文は、会社がお客に○○する」という
文章として使うと、けっこうアイディアが出てくる、
ということなのです。
さらにやってみましょう。
たとえば、アスクル。
●基本形
「アスクル」は、「文房具」を、「事務員さん」に、「宅配」する。
S O1 O2 V
…いかがですか?
では、ちょっと遊んでみましょう。
アスクルの立場で、事業を拡大するプランを考えて見ます。
SとO1を同じにして、Vを変えてみますね。
●応用1
「アスクル」は、「文房具」を、「事務員さん」から、「買取り」する。
S O1 O2 V?2
ここで、英語の文法の表記が変わってるとか、学問上おかしいとか、
こまかいところは、なしね。
大事なのは、このノウハウの使い方と効用ですので。
このやり方、視点が変わるんです。
たとえば、文房具だって、けっこう廃棄にたいへんな
ものってありますよね。
そういうのを、アスクルさんが買い取ってあげる。
それって、環境問題にも配慮してるし、
お客も「いや?、こわれた椅子とか、○○用品って、
廃品回収も大変だし、かさばるし、引き取ってくれると
たすかるんだよね?♪
あっ、アスクルさん、このさいだから、事務机もう一丁!」
なんていってくれるかもしれません。
また、物によっては、類似品でも別の物でも
いいですが、再生可能かもしれませんね。
●応用2
「アスクル」は、「ケータイ」を、「事務員さん」に、「宅配」する。
S O1 O2 V
こんどは、O1の目的物を変えてみました。
こうなると、Sはアスクルでなくても、NTTでもヤマトでも
A社でもB社でもいいです。
でも、Sを自社にして、
●O1を変える
●O2を変える
●V を変える
の3パターンの組み合わせの変化をすこしずつ
試みることで、
あらゆる局面でのニッチ産業のヒント、多角化のヒントが
見えてきます。
よかったら、ご自身で試してみてください。
…これ、企画の社外秘なんですけど、ばらしちゃったですね。
さて話を本メルマガの本題に戻しますと、
A「世の中に役立ちそうなアイディア・ノウハウを持っている人」
は、世の中にわんさかと実在します。
しかも、
●それを実現するには、ある程度の資本(500万円以上)
が、必要となる…
その一方で、
Bインサイダーの規制が厳しい上場株、
元本は保証してくれるけど利回りが異様に低い
投資以外の資産運用チャンスがないか、結構真剣に悩んでいる。
という投資家、資産保有者もたくさんいらっしゃいます。
そこで、上記の「Aさん」と「Bさん達」が契約書一本で
出会う場所が、「ファンド」です。
よくとられる契約形式が「任意組合」や「匿名組合」です。
営業者(A氏)→→「契約書」←←投資家(出資者B氏ほか)
●××ファンド
ファンドの目的として有名なのは、
「株式投資を目的としたファンド」ですが、
じつは、
「レストラン経営をするためのファンド」
「芸能人を育てるためのファンド」
「有名なキャラクターグッズを売るためのファンド」
「歯医者さんの営業支援をするためのファンド」
などなど、
世の中のあらゆる事業について、
ファンドを組むチャンスは無限といってもいいでしょう。
もちろん、銀行預金のような元本保証がないのが
通常ですから、
投資家にとってのポイントは、
「事業をしっかりと選別する」ということです。
ただ、元本保証がない点では、上場株も同じですが…
知名度がちがうので、上場株はビジネスに詳しくない
人でも手を出しやすい。
ただ、ご自身にとって「趣味」や「日常生活」で、
非常になじみが深い分野での事業なら、
「かなりの精度」で、事業がちゃんとしたものかどうか、
選別できます。
ここに、「リスクのコントロール可能性」があるわけです。
ところで、
ある事業アイディアとして、
「たとえば、アイドル候補を何人かあつめて、
1人500万円の育成費をかけてそのうち1人でも2人でも
売れたら投資回収がなりたつファンド」
を立ち上げ、その資金集めや企画をしたいと思ったとします。
このファンド立ち上げ、実は「個人」でも「法人」でもできます。
A社が、「○○ファンドを立ち上げ」ることは、可能です。
そして、その事業計画に納得した人たちが資金を出資する。
会計処理としては、一般に、
●ファンドの営業者は、「ファンドの貸借対照表・損益計算書を作成」
●ファンドの投資家は、「有価証券または出資金としてB/S表示」し、
「設けた分は投資収益としてP/L表示」
します。
※開示例
●ファンドの営業者
(営業1年目で、5000万円の出資に対し、
600万円の純利益を計上した場合)
匿名組合貸借対照表
――――――――――――――――――――
現金預金 ×××|未払金 ×××
未収金 ×××|預り金 ×××
|匿名組合 5000
|出資金
|当期未処理 600
|利益
――――――――――――――――――――
●ファンドの投資家(全出資金の10%を出資している場合)
投資家の貸借対照表
――――――――――――――――――――
現金預金 ×××|買掛金 ×××
: | :
|
投資有価証券 560|利益剰余金 +60←←・
| ↑
―――――――――――――――――――― ↑
↑
投資家の損益計算書 ↑
――――――――――― ↑
売 上 高 ××× ↑
: : ↑
営業外収益 ↑
・匿名組合利益 60→→→→→→・
: :
匿名組合利益60万円=ファンドの純利益×10%(持分)
==========================
以上は、いわゆる「ネット・ネット方式」とも呼ばれたり
する方法です。
※ファンドの会計処理については、金融商品の会計基準とも
関連して、けっこうルールがいろいろとあるのですが、
上記は、一つの典型例として、ご理解下さい。
ファンドのしくみについて理解を深めると、
別に、実際に投資をしなくても、
株式投資の意味も、また違った角度から深まりますし、
なにより、ビジネスの奥深さを本当の意味で理解することに
つながると、私は思います。
資産運用、というくくりでいけば、
ファンドへの投資も、
株式投資や投資信託や不動産投資や預金と同じく、
大事な財産をどう守り育てるか、という目的のもとで、
おなじ土俵に乗せて考えてあげると、視野が広がりますね。
(ご注意)
本稿は、けっしてファンドへの投資をお誘いする目的で
書いてあるわけではありません。
あくまで、知識の幅を広げることが、ビジネスの世界、
投資の世界でリスクをコントロールし、自身の財産を守る
ことにつながるとのポリシーより、情報提供したいと
考えています。
正しい目を養い、投資方法についての最終的な
ご判断は、しっかりとご自身の目と責任で行いましょう。
もちろん、変化の激しい社会を生き抜くための知恵、
正しい目を養うためのサポートについては、
柴山会計ソリューションはしっかりと行いたいと思います。
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