「政治の本性」とは何か??バーナード・クリック?
バーナード・クリックというイギリスの著名な政治学者がいました。
このひとが書いた本、「現代政治学入門」は、政治学を知らない
人でも、政治とは何か?についての手ほどきをしてくれる、古典的な
入門書といえます。わたしも以前、この本から多くの考え方を学び
ました。
もともと「現代政治学入門」という本は、これから大学で
本格的に政治学を学ぼうとするイギリスの学生向けに書かれた
本です。一種の教養書ですね。
特に前半は、今さら聞けない政治の考え方について、示唆に富んだ
言葉が多く、時事問題を解釈する上で、非常に役に立ちます。
今回は、バーナード・クリックの考える「政治というものの本性」
について、原著の訳本から引用してご紹介させていただきますね。
「しかし、これらの見解それぞれが現に存在しているという事実、
説得によってどれか一つの見解を消滅させることなどできないという
事実、まさにこのような事実が、政治の本性についてのより客観的で
一般的な理解を指し示している。すなわち、政治の本性とは、多くの
ひとびとのあいだで正当なものとして受け入れられる方法によって
紛争を調停し和解させること、これなのである。」
(「現代政治学入門」p27 バーナード・クリック 講談社学術文庫)
注目していただきたいのは、後半部分です。
(1)多くのひとびとの間で
(2)正当なものとして受けられる方法で
(3)紛争を調停し和解させること
と、政治の本質を定義しています。
多くの人々というのは、基本的に有権者であり、より広義には
選挙権を持たない未成年なども含めた「国民」ということになると
考えられます。
これは、政治の種類が「国政」ならば「多くの人々=国民」ですが、
少し範囲を絞って「地方自治」と政治の種類を変えると、
「多くの人々=その地域の住民」と、意味がかなり変わってきます。
国政と地方自治は、別物です。利害関係者の内容と利害の特性が
大いに異なるからです。
民主党の「国政」に対して、「多くの人々=国民」が、
正当なものとして受け入れられる方法
=国にとって正しいと思われる政策や政治の実現プロセスによって、
紛争(=いろいろな人が抱える問題や摩擦と理解してみましょう)
を調停し、人々の間で和解してもらえるような舵取りをして
いただきましょう、ということになります。
誤解を恐れずに一つの考え方を示すと、
政治というのは「大いなる妥協点の探り合い」
なのかもしれません。
これだけ複雑化した社会で、1億2千万人もの国民すべての人が
理想的なレベルで満足できる政策の最適解なんて、
現実的に考えたら、まず存在しないでしょう。
…ならば、「経済の効率性」と「社会の(ある種の)公平性」を
同時に、できるだけ高い水準で達成するためには、
外交、経済、教育、治安などの各分野で多くの「高品質な妥協点」
を見出していくこと、そしてそれをできるだけ目標に近いレベル
で達成できるしくみをつくること、がこれからの民主党の
政権担当能力を判断する時のものさしになると思います。
なお、ミクロ経済学の世界で、
経済効率的な状態を「パレート最適」といいます。
ある種の公平性を実現することを、「厚生経済学の第二基本定理」
といいます。
だれもが、当初の状態から「より高いレベルの生活」を得たい
と望むのは、当然の権利ですよね。
当初の状態よりも生活レベルが上がることを、やはりミクロ経済学
の理論を借りると、「コア配分」といいます。
政治の目的達成度を判定する上で、
「初期の状態から改善されている」
=「その政権になってから、コア配分が実現されているかどうか?」
という観点で、時事ニュース、政治ニュース、経済ニュースを
見てみましょう。
数学などをたくさん使うので、非常にとっつきにくいイメージの
ある経済学ですが、実は、ある政党や政治家の力量を判断する上で、
とても役に立つ原理や原則をたくさん発見しています。
そんなおもしろい考え方を、本メルマガでたくさんご紹介できたら
いいですね!
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 【連結入門・未実現利益の考え方】土地と建物の未実現利益に関する処理の比較でマスター
連結会計を学ぶ上で、未実現利益の正しい理解は必須ですね。 この点、最初の理解の仕方を間違えてしまうと、けっこう連結が苦手になったり、遠回りしてしまったりしてしまいます。 そこで、今回の動画では、まず一番簡単な土地の親子間売買(ダウンストリーム)を取り上げ、それとの比較で建物の売却による未実現利益の消去と、それに伴う減価償却費の連結修正について簡単な事例を使って解説いたしました。 この10分程度の動画をさっと視聴することで、連結会計の未実現利益に対する苦手意識を取り除くきっかけになればうれしいです! - 会計士志願者が2倍も、監査法人離れ
2023年9月21日の日経1面です。 2015年を底に2023年までの8年間で公認会計士試験の受験者数が倍増し12年ぶりの2万人台を記録したそうです。 ※2013年~2023年の願書提出者数 2023年 20,318人 2022年 18,789人 2021年 14,192人 2020年 13,231人 2019年 12,532人 2018年 11,742人 2017年 11,032人 2016年 10,256人 2015年 10,180人 2014年 10,870人 2013年 13,224人 (資料:マイナビ会計士)※2013年~2022年 ※2023年は金融庁ホームページ たしかに、過去10年程度で2015年の10,180人がそこになっており、そこから20,318人ですから、この期間において2倍程度増えていますね。 - 社外役員の兼任者数が4割アップ!?~会計士・税理士に新たなフィールドのチャンスが到来?
昨日の日経朝刊は、コーポレートガバナンスに関する非常に興味深い記事でした。 日経1面に出るということは、その日のニュースの中でも日本経済全体に影響を及ぼすと判断されたトピックと考えられるのですね。 いま、日本企業の多くは閉塞感にとらわれているかもしれません。 先行き不透明な中、社内の限られた知見だけで経営を続けていくのがますます難しくなってきています。 社内の常識が世間の非常識、なんてこともあったりしますね。 私は監査法人の勤務時代から強く感じていたことがあります。 会計士はその会社に年中いるわけではないので、その会社の業界知識の深さについてはかなわないのですが、彼らになくて私たちにあったのは「他の多くの会社の実務を見て実態を知っている」という点です。 - 【時事ニュースで学ぶ会計知識】オリンパスの売上高当期純利益率が100%超!?
2023年8月30日の日経18面で報じられていました。 オリンパスの売上高当期純利益率がなんと100%を超えたという珍しいケースです。 普通は、売上高を100とするならば、営業利益は5~8%程度、当期純利益は税引き後なので3~5%くらいがよくあるケースです。 営業利益率が10%以上になってくると、本業で結構儲けが出ている印象を受けます。 個人的には非常に良いイメージですね。 この点、オリンパスさんの営業利益率は13%を超えていますので、一般的な視点で行けば本業での好調さが想像されます。 そして、そこから一定の調整を経て、さらに法人税等が差し引かれるので、営業利益よりも当期純利益は少なくなるのが通常です。 しかし! - 【読んでみたい一冊】週3バイトが東大合格した時間術の本
今回は時間術に関する興味深い視点の本をご紹介します。 限られた時間で効率よく勉強しながら東大に合格した実体験から自身で身に着けた時間管理ノウハウを本にまとめたものです。 ユニークな視点でなるほど~、と思わせるところが多いのと、読みやすく短時間で一気に通読できることから、手軽に時間生産性を上げるためのヒントとして、動画で取り上げてみました。 全部で3章構成からなっているのですが、その全体フローがそのまま企業コンサルの手順にも応用できます。 すなわち、 ステップ1 ムダを削減する ステップ2 今の仕事の効率を上げる ステップ3 それを継続する です。 こうやって書いてみると非常にシンプルですが、そのシンプルさの中にこそ、マネジメントの本質が隠されていることもあります。