貸倒引当金の税務上の取り扱い その2
今回も、前回から引き続き、貸倒引当金のお話をしていきます。
税務上の貸倒引当金については、下記でしたね。
前回は、個別評価金銭債権の中のうち、「1号:長期棚上債権」
までお話しました。
→ 図1 https://bokikaikei.net/2009/07/post_686.html
今回は、個別評価金銭債権のうち、2号から話をしていきます。
<2号:事実上の回収不能債権>
事実上の回収不能債権とは、債権について
・債務者が債務超過の状態が相当期間継続し、業務に好転の
見通しがない場合・災害・経済事情の急変等により多大な損害が
生じた場合、その金銭債権の一部について取り立ての見込みがないと
認められるときに、会計上、経費に計上する処理をすることで、
損金の額に算入できます。別名、実質基準とも言われています。
このケースは、実際に適用しようとすると非常に悩ましい問題が生じます。
具体的には、相手の状況を調べないといけないからです。
相手が債務超過なのかどうかがわかるのか?ということや、
わかったとしても、好転の見通しがないなどと証明できる資料が
あるのかなどと考えてしまいます。
そのため、この適用を使って貸倒引当金を計上しているケースを
私は見たことがありません・・・。
ちなみに、この考え方は、実は、貸倒損失の場合にも同じような
条件のケースがあります。
貸倒損失については、また別の機会にご説明できればと思います。
<3号:形式上の回収不能債権>
形式上の回収不能債権とは、次のような事由が生じた場合の
金銭債権です。
・会社更生法による更正手続開始の申立て
・民事再生法による再生手続き開始の申立て
・会社法の規定による特別清算の申立て
・手形交換所による取引停止処分
別名、形式基準とも言われています。
この場合、債権の金額の50%を会計上、経費に計上する
処理することで、税務上も損金に算入できます。
ちなみに、ここでの債権からは、実質的に債権と見られない
金額・担保及び保証等により取り立ての見込まれる金額を除きます。
この3号:形式上と前回見ました1号:長期棚上債権との違いは、
1号は、会社更生法等による更正計画の認可決定、民事再生法の
再生計画の認可決定など、法律の手続きが完了していることが前提です。
それに対して、3号は、開始の申立てという表現であり、
これから、会社更生法などの法律に沿って、これから再建の手続きが
スタートすること意味しています。
会社更生法などの、再建手続きが決定されるまでの期間は3号、
決定されてからは1号という使い方になります。
実際の実務では、これに貸倒損失に該当するケースもからんできます。
数字を使って、このケースを見ていきましょう。
柴山物産(株)が持っている債権・債務
インチキ商事
受取手形 500,000円
売掛金 1,200,000円
買掛金 750,000円
この会社が、平成21年7月1日に民事再生法による再生手続き開始の
申立てをすることになりました。
この場合の貸倒引当金に計上できる金額はいくらでしょうか?
答え 475,000円
債権:500,000 + 1,200,000=1,700,000円
債務:750,000円 ←これは実質的に債権と認めらない金額
として債権額から控除します。
結果:1,700,000 ?750,000 =950,000円
950,000×50%=475,000円
ここでのポイントは、債権の50%ではなく、債務を除いた純粋な
債権額の50%が貸倒引当金に計上できる金額になります。
また、この適用を受けるにあたっては、会計上も
貸倒引当金繰入 475,000 / 貸倒引当金 475,000
という仕訳を計上している必要があります。
これをしないと、税務上、損金に計上できないということも
ポイントです。
このケースは、実務でも使うケースが多いです。
このケースを別表に記載した場合の記載例を下記に示します。
図2参照 → https://bokikaikei.net/2009/07/post_686.html
<4号:外国の回収不能公的債権>
外国の政府や中央銀行・地方公共団体に対する金銭債権で回収不能なもの。
長期にわたる債務の履行遅滞により、その経済的な価値が著しく減少し、
かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が
生じている場合には、その金銭債権の額の50%相当額を損金経理により
損金算入できます。
この4号は、条文にあるため記載しましたが、実際にこのケースは
非常にまれな気がします。
個別の貸倒引当金については以上です。
次回は、一括の貸倒引当金についてみていきます。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
立替金(3級・2級商業簿記)
立替金の定義 立替金とは、誰かのために一時的に支払った代金で、後日精算されるもの。 よく関連語句として「給料」がセットで出てくる。 立替金の概念 例:従業員の個人的な支出や取引先の負担すべき広告費などを、一時的に立て替えて支払う。 支払った金額は「将来返してもらう予定のお金」として資産に計上される。 立替金は「立替金の請求権」として扱われ、資産勘定に計上。 簿記の問題での立替金 給与支給時に従業員に対する立替金を相殺する処理が出題されることがある。 立替金の処理について理解しておくことが重要。 具体的な取引例 例:従業員の頼みで、個人的な支出65,000円を立て替え、現金で支払う。 仕訳: 借方:立替金 65,000円 貸方:現金前払金(3級・2級商業簿記)
「前払金」の定義 商品などを注文した際に、品物を受け取る前に支払った手付金や内金のこと。 支払いに関連する勘定科目として「前払金」が使用される。 関連する用語:商品の仕入れなど。 「前払金」の概念 契約や注文が成立した際、手付金を支払うことが一般的。 支払った時点では品物の受け取りが確定していないため、「一時的に相手に預けているお金」として扱う。 支払った金額は資産勘定に計上され、将来的に商品を受け取る権利を持つと考えられる。 「前払金」の特性 仕入れや費用として確定しているわけではない。 目的の品物が手に入らなければ、支払った金額を返金してもらうこともある。 「前渡金」という用語も同義で使用されることがある。 取引例配賦差異(2級工業簿記)
配賦差異の重要性 2級工業簿記で非常に重要な概念。 製造間接費を予定配賦や標準原価計算で計算する際に生じる差異。 試験対策として配賦差異の理解は必須。 配賦差異の定義 配賦差異は、製造間接費の予定配賦額(正常配賦額)と実際発生額との差額。 この差異の把握は、原価管理やコスト管理において重要。 関連用語 「実際配賦」、「予定配賦率」、「製造間接費」、「部門費」など。 配賦差異には「予算差異」と「操業度差異」の2種類がある。 配賦差異の計算方法 予定(正常)配賦額 = 予定(正常)配賦率 × 実際操業度。 実際発生額との差額が配賦差異。 差異の処理方法 実際発生額が予定額を上回る場合、追加コストとして借方差異(不利差異)。 実際発生額が予定額を下回る場合、コスト節約として貸方差異(有利差異)。手形貸付金・借入金(3級・2級商業簿記)
手形貸付金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる貸付債権。 資産に分類される。 手形を使わない場合は、「貸付金」 手形借入金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる借入債務。 負債に分類される。 手形を使わない場合は、「借入金」 仕訳例 資金を貸し付ける場合:「手形貸付金」 資金を借り入れる場合:「手形借入金」 具体例 200万円を借り入れ、約束手形を発行し当座預金に入金された場合: 借方:当座預金 + 2,000,000円 貸方:手形借入金 + 2,000,000円 総勘定元帳への転記 資産:「当座預金 + 2,000,000円」 負債:「手形借入金 + 2,000,000円」仮払金(3級・2級商業簿記)
仮払金の重要性 実務および試験対策において重要な科目。 簿記3級以上で出題され、2級、1級、会計士、税理士の試験にも登場する。 仮払金の分類 資産勘定に分類される。 実際の支出金額や内容が未確定な場合に使用する。 仮払金の定義 支出金額や内容が確定していない場合に一時的に支払う際に使用する勘定科目。 支出内容が確定した時点で精算処理を行い、仮払金は解消される。 短期間で精算されることが前提。 関連する勘定科目 現金や仮受金(負債)などが関連する。 実務での使用例 例: 出張費が確定しない場合、社員に2,000円を仮払金として渡し、実際の費用が確定した後に精算する。 例: 交通費が1,700円だった場合、差額の300円を返金して仮払金を精算。