法人税、住民税、事業税の表示と税率のはなし
まずは、基礎知識から。
法人税・住民税・事業税は「企業の所得」に対して一定税率を
かけて計算・納付する税金です。
支払う原因と支払先によって、次のようになります。
1法人という組織であることで、所得のうちから国に収めるべき税金
→法人税
2法人という組織であることで、所得のうちから都道府県・市町村に
納めるべき税金
→住民税
3事業を営んでいるということで、所得のうちから都道府県に
納めるべき税金
→事業税
なお、ここで、所得というのは、
「税法の世界における儲けの」ことです。
●税法(税務)上の儲け「(課税)所得」
=「損益計算書上の純利益」プラスマイナス「税務調整額」
(P/L) ↑
一定の交際費、
費用の否認額、
収益・費用の認容額
など…
と、このように、会計(P/L)上の利益に、一部の調整額を
たしひきした金額が、「税務上の儲け」である(課税)所得なんですね。
ここで、つぎのような事例を考えてみましょう。
(1)損益計算書上の、税金計算前の純利益(収益マイナス費用)は、
10570万円であった。
(2)当期中に支払った事業税の額は720万円である。
内訳:前期に納税義務が発生した事業税の未払い 360万円
当中間期に、仮払(半金)として払った分 360万円
当期中に支払った事業税(B/S仮払金等)720万円
→損益計算書(P/L)には掲載されていない。
(※その年度中に支払った事業税は、税務上、所得を計算
する上で、損金(経費)として認めてもらえます。しかし、
法人税・住民税の支払額は、損金として認められません。)
(3)税務調整額は、「交際費の損金不算入額150万円」だけだった。
(4)法人税、住民税、事業税の税率は、次のようなものとする。
●法人税率…30.00%
●住民税 … 5.19%(規定上は法人税率30%×17.3%)
●事業税 … 7.20%
―――――――――
単純合計…42.39%
=========
そして、損益計算書の表示は、下記のようになります。
●税金計算前の損益計算書(単位:万円)
損益計算書(末尾付近)
――――――――――――――
売 上 高 ×××××
: :
――――――
税引き前当期純利益10570 →税金計算(確定申告書)
↓
法 人 税 ▲( )←←←←←←←←・
住 民 税 ▲( )
事 業 税 ▲( )
――――――
当期純利益 (10570)
======
ここで、法人税等(法人税+住民税+事業税)の額を、
別途、
(1)法人税確定申告書の別表4・別表1および
(2)地方税の申告書というところで
計算します。
(1)―1法人税申告書別表4より
税引き前当期純利益 10570
加算:交際費の損金不算入+ 150
減算:事業税の支払額 ▲ 720
――――――
課 税 所 得 10000
======
(2)―2法人税申告書別表1より
課 税 所 得 10000
×税率(30%) 3000万円 … A
(3)住民税・事業税申告書より
1住民税
法人税の額 3000
×税率(17.3%) 519万円 … B
2事業税
課税所得 10000
×税率(7.2%) 720万円 … C
●税金計算後の損益計算書
(単位:万円)
損益計算書(末尾付近)
――――――――――――――
売 上 高 ×××××
: :
――――――
税引き前当期純利益10570 →税金計算(確定申告書)
↓
法 人 税 ▲( 3000)A ←←←←←←・
住 民 税 ▲( 519)B
事 業 税 ▲( 720)C
――――――
当期純利益 ( 5761)
======
(注)上記は、あくまで税率の一例を示した
にすぎません。理解を重視した便宜的な数値例です。
実際の税金計算事務は、会社規模や地方自治体の
具体的規則によって多少変わってきますので、
ご注意下さい。
…以上となりますね。
これは、極めて実践的な説例です。
なお、上記の法人税等(A+B+C)は、
3000+519+720=4239万円です。
これに対し、課税所得は10000万円でしたね。
==========================
※参考
(1)―1法人税申告書別表4より
税引き前当期純利益 10570
加算:交際費の損金不算入+ 150
減算:事業税の支払額 ▲ 720
――――――
課 税 所 得 10000
======
==========================
ここで、事業税を支払う前の(税金調整前)における
課税所得(儲け)に対する、法人税等の負担割合のことを、
「実効税率」
というのです。
税金調整前の課税所得
課税所得 10000
減算した事業税 720(足し戻し)
―――――
税負担がない所得 10720万円
=====
この、
税負担前の所得10720万円
に対する
法人税等 4239万円の負担比率が、
よく日経新聞などで
取り上げられる「実効税率」の話なのでした。
ちなみに、上記の例では、
●実効税率=(4239/10720)×100%=39.54%となります。
この39.54%という数字、次のテーマでもある
日経新聞で取り上げられている日本の法人税率の数字と
なっています。
時事問題でよく出る「法人税の負担率約40%」
の計算根拠が、これですっきりしましたね。
…さらに、上記の解説を詳しくお聞きになりたい方は、
下記をどうぞ!
→ 日商簿記検定3級対策DVD
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 公式法変動予算(2級工業簿記)
公式法変動予算の定義 製造間接費を管理する方法 操業度(生産量や稼働時間)の増減に応じて予算額が変動 関連用語 固定予算、製造間接費の管理、予定配賦、配賦差異など 予算の概念 将来の一定期間における事業計画の財務面を示す経営計画 製造間接費は「変動費」と「固定費」に分けて管理 変動費 操業度の増減に応じて変動する原価(例:水道光熱費、間接材料費) 固定費 操業度に関わらず一定額が発生する原価(例:家賃、リース料) 変動予算の特徴 固定費は操業度に関係なく予算額は変わらない 変動費は操業度に応じて予算額が調整される 具体例 フル操業(500時間)、変動費率700円、固定費600,000円の場合 500時間の予算額: 700円 × 500時間 - 受取手形(3級・2級商業簿記)
受取手形 手形は売上代金の回収方法の一つで、現在は手形レス化が進んでいる それでも簿記学習には重要なテーマ 受取手形の定義 将来の一定期日に、手形に記載された代金を受け取る権利を表す資産勘定 関連用語 売掛金: 商品を販売して代金を後で受け取る権利 売上債権: 売掛金と受取手形を合わせたもの 貸倒引当金: 売上債権に関連し設定される 売上代金の回収方法 現金売上: 代金をその場で受け取る 掛売上: 後払い、未回収の代金は「売掛金」 受取手形: 取引先が発行した約束手形を受け取った場合 取引例 商品40万円を売上げ、20万円を現金で受け取り、残り20万円を約束手形で受け取る 仕訳例 売上 400,000円 現金 200,000円 受取手形 200,000円 - 報酬、連結決算、有価証券報告書
報酬 職務の遂行に対する対価として支払われる現金やその他の資産。 従業員の報酬 給与手当(指示命令系の仕事)。 役員の報酬 役員報酬(専門家としての経営成果に対する報酬)。 経営プロフェッショナルとして経営を委託されるため、給与とは区別される。 専門家報酬 会計士や税理士に支払う報酬(業務委託の形)。 連結決算 親会社と子会社などの企業群の決算を合算して、グループ全体の損益を算出する手法。 上場企業においては、単体決算だけでなく、連結決算が重視される。 連結決算に基づく財務諸表は「連結財務諸表」と呼ばれる。 英語表記は「Consolidated Financial Statements」。 有価証券報告書 上場企業や一定規模以上の企業が作成し、外部に開示する義務がある報告書。 - 製造間接費(2級工業簿記)
製造間接費の定義 製造間接費は、間接材料費、間接労務費、間接経費の合計額。 これらの費用は直接製品に関連付けられないため、基準を用いて製品に配分する。 製造間接費の配分基準 直接作業時間や機械運転時間、直接労務費などが配分基準として使用される。 作業時間が多い製品には、より多くの製造間接費が配分される。 関連する用語 間接材料費、間接労務費、間接経費、配賦率、配賦、仕掛品 など。 配賦率は、1時間あたりの製造間接費を示し、基準に基づいて製品ごとに製造間接費を配分するために使用される。 製造間接費の配分方法 製造間接費は直接製品に関連付けられないため、合計額を配分基準に基づいて配分する。 直接作業時間や機械運転時間などの基準を使用して、配賦率を算出し、製品ごとに配分。 - 退職金、総務、経理
退職金 簿記2級から登場、簿記1級では頻繁に出題 企業で長年働いた役員や従業員に支払われる金銭 長期間の勤務に対する対価として、支払額は大きくなることが多い 退職金を毎年積み立てることが望ましい 退職給付引当金として負債計上 役員への退職金は「退職慰労金」と呼ばれることもある 簿記では従業員に対する退職金の引当金を覚えることが重要 総務 企業内で重要な役割を担う管理部門 人事、経理、広報などの専門部署がない場合、業務をまとめて担当 企業によって役割や業務内容が異なる 大企業では株主総会の準備や社長秘書業務なども含まれる 中小企業では管理業務のほとんどを担当することがある 営業部門や製造部門などの専門部署以外の事務を担当 経理