決算書を正しく作る仕組み≒「内部統制(ないぶとうせい)」
「内部統制」という言葉を、最近、
日経新聞などでもよく目にしますよね。
特に、上場企業においては、公認会計士の監査の過程で、
自社の決算書の信頼性を立証するために、どうしても
避けて通れない問題となってきました。
いわゆる「J?SOX法(日本版SOX法)」
の議論です。
今回は、この「内部統制」について、
その入門知識と、決算書にどのようにつながっているか、
という実務的な論点も踏まえて、お話していきます。
ここで、定義です。
内部統制とは、
・業務の有効性および効率性
・財務報告の信頼性
・事業活動にかかわる法令等の遵守
・資産の保全
の4つの目的を達成するために、
業務に組み込まれ、組織内のすべてのものに
よって遂行されるプロセスである。
以上、内部統制の「4つの目的」と「プロセスである旨」の
2つの内容から、定義づけられます。
この中で、財務報告の信頼性という目的は、
近年の会計不正の頻発現象と、会計不信への対応という
観点から、非常にウェイトが大きいといえます。
ここで、ご参考までに、あずさ監査法人がウェブ上で
解説している、下記のページはなかなか参考になります。
●内部統制の「文書化」のポイント
→ http://www.azsa.or.jp/b_info/letter/81/01.html
●「業務プロセスにおけるリスクの把握の方法」
→ http://www.azsa.or.jp/b_info/letter/81/03.html
たとえば、上記の「業務プロセスにおけるリスクの把握の方法」
という箇所では、「販売プロセスにおける出荷」という、
具体的な業務プロセスの例を挙げて、リスクの把握方法を
わかりやすく説明しています。
ちょっと、一部を引用させていただきますと…
「たとえば、販売プロセスにおける出荷について、
システムへの入力を想定してみます。
出荷の入力は、会計上の売上と売掛金を認識する
ためのもっとも重要なポイントとなることに異論
はないと思われます。
次に、システム入力の際の代表的なリスクを想定
してみます。以下のリスクは、フローチャート等で
システムに何らかの情報がインプットされる際には、
定型的に生じるリスクと考えられます。
・過大・重複の入力は行われないであろうか(過大・重複の入力)
・入力の漏れ、入力の遅延は生じないであろうか(入力漏れ、遅延)
・重要な情報は、正確に入力されたであろうか(不正確な入力)
・入力前に適切な承認等は行われたであろうか(未承認の取引)
・入力にあたって会社は適切な基準を有しているのであろうか、
一般に公正妥当な会計基準は満たされているであろうか
(基準が不明確)
・入力後のデータは改ざんされないであろうか(データ改ざん)
これを合成すると、出荷に係る次のリスクが把握されます。
・出荷が過大に、あるいは重複して入力される
・出荷の入力漏れ、入力の遅延が生じる
・販売単価・数量・出荷日等が正確に入力されない
・適切に承認された注文以外の出荷が行われる
・出荷されたのに売上計上されない、
あるいは出荷前に売上計上される
・出荷データが改ざんされる
もちろん、プロセスで生じるリスクは上記に
限定されるものではありません。
また、リスクの重要性や発生可能性を考えて、
コントロールマトリックスに記載を要するか否かを
検討しなければなりません。
しかし、リスクの把握方法を記述担当者が共通の
理解としているか否かによって、既存の内部統制の
文書化の品質に大きく差を与えるのも事実であると
考えられます。
文書化にあたっては、文書化の際に、あらかじめ問題と
なる点については、担当者の共通の理解を得られるように、
文書化マニュアルを作成する等の工夫が
必要になると考えられます。」
(引用 「日本における内部統制制度の現状(2)
文書化の進め方 Page3」あずさ監査法人
Web: http://www.azsa.or.jp/b_info/letter/81/03.html )
上記を見ますと、出荷プロセスにおいて、たとえば、次のような
ところを注意しましょうね、といっています。
・出荷が過大に、あるいは重複して入力される
・出荷の入力漏れ、入力の遅延が生じる
・販売単価・数量・出荷日等が正確に入力されない
・適切に承認された注文以外の出荷が行われる
・出荷されたのに売上計上されない、
あるいは出荷前に売上計上される
・出荷データが改ざんされる
以上は、財務報告などを支えるための「内部統制上の要点」
としてあげられる、
1 資産・負債・取引の実在性
2 資産・負債・取引の網羅性
3 資産・負債の権利義務の帰属
4 資産・負債の評価の妥当性
5 取引の費用・収益としての期間配分の適切性
6 取引の財務諸表表示の妥当性
という6つの観点のうち、特に1?5について、
財務報告書の信頼を高めるために、想定されるリスクを
例示しているわけです。
このように、
「想定される業務上のリスクを洗い出し」
「文書化」することで、
企業の財務報告の信頼性を高めよう、という
わけですね。
会社側のコストは増しますが、
やはり、社会の会計に対する信頼性を高める、という
意味では、内部統制の文書化を中心とした構築努力は、
避けて通れない問題となっているんだ、ということを
ご理解いただけると、よろしいかと思います。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 公式法変動予算(2級工業簿記)
公式法変動予算の定義 製造間接費を管理する方法 操業度(生産量や稼働時間)の増減に応じて予算額が変動 関連用語 固定予算、製造間接費の管理、予定配賦、配賦差異など 予算の概念 将来の一定期間における事業計画の財務面を示す経営計画 製造間接費は「変動費」と「固定費」に分けて管理 変動費 操業度の増減に応じて変動する原価(例:水道光熱費、間接材料費) 固定費 操業度に関わらず一定額が発生する原価(例:家賃、リース料) 変動予算の特徴 固定費は操業度に関係なく予算額は変わらない 変動費は操業度に応じて予算額が調整される 具体例 フル操業(500時間)、変動費率700円、固定費600,000円の場合 500時間の予算額: 700円 × 500時間 - 受取手形(3級・2級商業簿記)
受取手形 手形は売上代金の回収方法の一つで、現在は手形レス化が進んでいる それでも簿記学習には重要なテーマ 受取手形の定義 将来の一定期日に、手形に記載された代金を受け取る権利を表す資産勘定 関連用語 売掛金: 商品を販売して代金を後で受け取る権利 売上債権: 売掛金と受取手形を合わせたもの 貸倒引当金: 売上債権に関連し設定される 売上代金の回収方法 現金売上: 代金をその場で受け取る 掛売上: 後払い、未回収の代金は「売掛金」 受取手形: 取引先が発行した約束手形を受け取った場合 取引例 商品40万円を売上げ、20万円を現金で受け取り、残り20万円を約束手形で受け取る 仕訳例 売上 400,000円 現金 200,000円 受取手形 200,000円 - 報酬、連結決算、有価証券報告書
報酬 職務の遂行に対する対価として支払われる現金やその他の資産。 従業員の報酬 給与手当(指示命令系の仕事)。 役員の報酬 役員報酬(専門家としての経営成果に対する報酬)。 経営プロフェッショナルとして経営を委託されるため、給与とは区別される。 専門家報酬 会計士や税理士に支払う報酬(業務委託の形)。 連結決算 親会社と子会社などの企業群の決算を合算して、グループ全体の損益を算出する手法。 上場企業においては、単体決算だけでなく、連結決算が重視される。 連結決算に基づく財務諸表は「連結財務諸表」と呼ばれる。 英語表記は「Consolidated Financial Statements」。 有価証券報告書 上場企業や一定規模以上の企業が作成し、外部に開示する義務がある報告書。 - 製造間接費(2級工業簿記)
製造間接費の定義 製造間接費は、間接材料費、間接労務費、間接経費の合計額。 これらの費用は直接製品に関連付けられないため、基準を用いて製品に配分する。 製造間接費の配分基準 直接作業時間や機械運転時間、直接労務費などが配分基準として使用される。 作業時間が多い製品には、より多くの製造間接費が配分される。 関連する用語 間接材料費、間接労務費、間接経費、配賦率、配賦、仕掛品 など。 配賦率は、1時間あたりの製造間接費を示し、基準に基づいて製品ごとに製造間接費を配分するために使用される。 製造間接費の配分方法 製造間接費は直接製品に関連付けられないため、合計額を配分基準に基づいて配分する。 直接作業時間や機械運転時間などの基準を使用して、配賦率を算出し、製品ごとに配分。 - 退職金、総務、経理
退職金 簿記2級から登場、簿記1級では頻繁に出題 企業で長年働いた役員や従業員に支払われる金銭 長期間の勤務に対する対価として、支払額は大きくなることが多い 退職金を毎年積み立てることが望ましい 退職給付引当金として負債計上 役員への退職金は「退職慰労金」と呼ばれることもある 簿記では従業員に対する退職金の引当金を覚えることが重要 総務 企業内で重要な役割を担う管理部門 人事、経理、広報などの専門部署がない場合、業務をまとめて担当 企業によって役割や業務内容が異なる 大企業では株主総会の準備や社長秘書業務なども含まれる 中小企業では管理業務のほとんどを担当することがある 営業部門や製造部門などの専門部署以外の事務を担当 経理