三協立山、手形債権流動化を300億円規模に拡大(
未回収の手形債権を早期回収する方法として、信託を使った債権流動化を進めていると報じられました。
2015年5月期には300億円前後を流動化する計画のようです。
前期は200億円を流動化していました。
流動化とは、簡単にいうと、「より流動性の高い資産に置き換える」ことでして、通常はもっとも流動性の高い現金預金で回収することをいいます。
たとえば、3ヶ月満期の約束手形を得意先から受け取ると、その手形が実際に取り立てられるのが3ヶ月後となり、その間は現金にならない(流動化されない)わけです。
このような場合に早期回収する手段として「手形の割引」という行為があります。
銀行に手形を持ち込んで、金利相当分を手数料として一部差し引かれ、少し金額は減りますが、お金を銀行から受け取ることができます。
その後、約束手形を発行した会社(手形債務者)が満期に無事その手形代金を支払えば、何の問題もなく、一連の割引取引は終わります。
このような手形割引による資金調達は、実質的には銀行からの短期借入の一種というように見られていました。
金利相当額が割引料という名目で差し引かれることも理由の一つです。
ちなみに、金利はその会社の「全体的な信用力」に基づいて決定されます。
判断基準の一つとしてバランスシートの状態の良し悪しがありますが、会社全体で見たら、良い資産も悪い資産も混在していますので、その全体平均として会社の信用力が決まるのですね。
ところが、今回の三協立山のケースにおけるように、手形債権の振出人が三協立山よりも信用力の高い会社が多かったりすると、優良な手形債権のみを切り取って、より有利な条件で資金調達をすることもできるのですね。
金利負担が減ったりします。
これが特定資産の流動化の大きなメリットです。
手形債権を信託銀行に引渡し(信託)、受託した信託銀行がその手形の信用力を担保に小口化した債券などの金融商品を企画し、機関投資家に販売する、といった方法がよくとられます。
三協立山は、上記のしくみを三井住友信託銀行と協力して作っています。
会社のバランスシート上は、受取手形などの金銭債権が、より支払い能力の高い現金預金に変わるため、資金繰りが楽になります。
運転資本の不足が軽減される、といってもいいでしょう。
運転資本・・・短期的に必要とされる資金不足の額。売上債権と棚卸資産の合計から仕入債務を控除することで求められる。
ご参考までに、平成26年8月31日時点の受取手形及び売掛金の金額が55,235百万円です。552億円です。
これらの一部が、さらに現金預金へと早期回収されていくひとつのテクニックとして、手形債権の流動化を活用するのですね。
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