消費税は例外!?「価格転嫁カルテル」が認められるとか…
来年4月からの消費増税を半年後に控え、消費税に対する関心が高まっています。
消費税のあらましにつきましては、次の国税庁によるパンフレットが非常に参考になるでしょう。
⇒http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/aramashi/pdf/all.pdf
【基礎知識】消費税とは?
「消費税は、消費一般に広く公平に課税する間接税です。ほぼすべての国内における商品の販売、サービスの提供及び保税地域から引き取られる外国貨物を課税対象とし、取引の各段階ごとに5%(うち1%は地方消費税)の税率で課税されます。
…消費税は、事業者に負担を求めるものではありません。税金分は事業者が販売する商品やサービスの価格に含まれて、次々と転嫁され、最終的に商品を消費し又はサービスの提供を受ける消費者が負担することとなります。」
(国税庁「消費税のあらまし」より、一部抜粋)
以上より、消費税の制度趣旨として、「事業者が消費税を負担するものではなく」、「価格転嫁を通じて消費者が負担するもの」であるという建前論が、根底にあることを知っておきましょう。
つまり、「消費税は転嫁せにゃあかん」というお上のお考えなのですね?((+_+))。
(そんな簡単にいくわきゃねーだろ、だったらなんで滞納率が国税の中でダントツトップなのさ!などの下々(特に中小零細企業社長)の悲痛な声は届かず…。)
そんなわけで、消費税は是が非でも価格に上乗せされなければならず、
次のような法律をわざわざこしらえて、キリッ!!と目を光らせるわけです。
「消費税の円滑かつ適正な転嫁に支障が生じないよう、政府として、強力かつ実効性のある転嫁対策等を実施する必要があります。
このため、平成25年6月5日に成立した「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(平成25年10月1日施行)においては、消費税の転嫁等に関する様々な施策を講じています。」
…で、具体的には次のような問題点を防ぐため、政府が規制をかけます。
第1 消費税の転嫁拒否等の行為の是正に関する特別措置
消費税の転嫁拒否等の行為を取締り,当該行為を是正又は防止する。
第2 消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置
消費者の誤認を招き,他の事業者による円滑な転嫁を阻害する宣伝・広告等を是正又は防止する。
第3 価格の表示に関する特別措置
消費税の総額表示義務について,表示する価格がその時点における税込価格であると誤認されないための措置を講じている場合に限り,税込価格を表示することを要しない。
第4 消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置
事業者又は事業者団体が行う転嫁カルテル及び表示カルテルについて,平成元年の消費税導入時と同様の独占禁止法の適用除外制度を設ける。
(参考:「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」)
<平成25年10月1日から施行し,平成29年3月31日限りでその効力を失う。>
簡単にいうと、まずは「大手企業による、下請けの中小企業に対する買いたたきや消費税負担の拒否などの行為」を禁止・防止しています。
次に、お店側の対応として、「消費税還元セール」とか、「消費税は当店が負担します」みたいな、あからさまな価格転嫁を否定するかのような広告・宣伝等はNG!だったりします。
3番目には、価格表示について、細かく規制しています。
原則は消費税を含めた「税込表示」によるべきですが、実務上の運用を考慮して、当面は「税抜表示であるかのような誤認を防止」する措置を講じているという前提で、税抜表示を認める場合があります。
4番目として、消費税の転嫁などに関する複数事業者による共同行為が、一定の条件のもとで、認められます。
今回の新聞記事は、この4番目「共同行為」を認めるという部分に関する話です。
カルテルとも呼ばれる行為ですね。
【基礎知識】カルテル
企業(事業者)間で価格や生産数量(生産計画)、販売地域などを協定することである。
(ウィキペディア)
複数の事業者が申し合わせて価格を高く維持したり、生産調整を行ったりするため、その結果、消費者が割高の価格で商品を買わされたり、品不足が意図的に演出されるなどする弊害が起きる。市場における公正な競争が起きなくなり、不合理な市場での取引を実施させられるといった弊害が生じる。
工事の受注における「談合」も、価格カルテルの一種と言えよう。
本来、カルテルは市場での個性な競争や合理的な取引を阻害するため、認められませんでした。
しかし、今回の消費増税では、あえて消費税率分の価格カルテルは容認されるようになっていくのですね。
これは、基本的に中小企業者の弱い立場を守るために設けられた制度です。
単独の会社としては立場が弱いために価格転嫁を大手から拒否されたら、それを飲まなければならない、そういった不都合を回避するために、中小企業者が3分の2以上いれば、一定の届け出の元で価格転嫁カルテルを認める方針です。
1989年の消費税導入時にも同様の価格転嫁カルテルに関する制度を実施し、
1991年までに当時は4600件の届け出がありました。
一定の効果ありと評価されています。
そのような当時の評価が、今回の価格転嫁カルテル容認に踏み切った一つの要因と言えるでしょう。
今後、消費税の価格転嫁を巡って、事業者どうしの利害調整はもちろん、制度上「消費税の負担者」とされている最終消費者との利害調整などが
多く時事ニュースなどで取り上げられました。
消費税率アップは、商品単価を引き上げますが、その分売上数量を減らす
ことにいっぱいいっぱいとなるでしょう。
業績のスタートラインとして、売上高の金額を左右する消費税の転嫁問題、
今後も目を離せないですね。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
立替金(3級・2級商業簿記)
立替金の定義 立替金とは、誰かのために一時的に支払った代金で、後日精算されるもの。 よく関連語句として「給料」がセットで出てくる。 立替金の概念 例:従業員の個人的な支出や取引先の負担すべき広告費などを、一時的に立て替えて支払う。 支払った金額は「将来返してもらう予定のお金」として資産に計上される。 立替金は「立替金の請求権」として扱われ、資産勘定に計上。 簿記の問題での立替金 給与支給時に従業員に対する立替金を相殺する処理が出題されることがある。 立替金の処理について理解しておくことが重要。 具体的な取引例 例:従業員の頼みで、個人的な支出65,000円を立て替え、現金で支払う。 仕訳: 借方:立替金 65,000円 貸方:現金前払金(3級・2級商業簿記)
「前払金」の定義 商品などを注文した際に、品物を受け取る前に支払った手付金や内金のこと。 支払いに関連する勘定科目として「前払金」が使用される。 関連する用語:商品の仕入れなど。 「前払金」の概念 契約や注文が成立した際、手付金を支払うことが一般的。 支払った時点では品物の受け取りが確定していないため、「一時的に相手に預けているお金」として扱う。 支払った金額は資産勘定に計上され、将来的に商品を受け取る権利を持つと考えられる。 「前払金」の特性 仕入れや費用として確定しているわけではない。 目的の品物が手に入らなければ、支払った金額を返金してもらうこともある。 「前渡金」という用語も同義で使用されることがある。 取引例配賦差異(2級工業簿記)
配賦差異の重要性 2級工業簿記で非常に重要な概念。 製造間接費を予定配賦や標準原価計算で計算する際に生じる差異。 試験対策として配賦差異の理解は必須。 配賦差異の定義 配賦差異は、製造間接費の予定配賦額(正常配賦額)と実際発生額との差額。 この差異の把握は、原価管理やコスト管理において重要。 関連用語 「実際配賦」、「予定配賦率」、「製造間接費」、「部門費」など。 配賦差異には「予算差異」と「操業度差異」の2種類がある。 配賦差異の計算方法 予定(正常)配賦額 = 予定(正常)配賦率 × 実際操業度。 実際発生額との差額が配賦差異。 差異の処理方法 実際発生額が予定額を上回る場合、追加コストとして借方差異(不利差異)。 実際発生額が予定額を下回る場合、コスト節約として貸方差異(有利差異)。手形貸付金・借入金(3級・2級商業簿記)
手形貸付金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる貸付債権。 資産に分類される。 手形を使わない場合は、「貸付金」 手形借入金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる借入債務。 負債に分類される。 手形を使わない場合は、「借入金」 仕訳例 資金を貸し付ける場合:「手形貸付金」 資金を借り入れる場合:「手形借入金」 具体例 200万円を借り入れ、約束手形を発行し当座預金に入金された場合: 借方:当座預金 + 2,000,000円 貸方:手形借入金 + 2,000,000円 総勘定元帳への転記 資産:「当座預金 + 2,000,000円」 負債:「手形借入金 + 2,000,000円」仮払金(3級・2級商業簿記)
仮払金の重要性 実務および試験対策において重要な科目。 簿記3級以上で出題され、2級、1級、会計士、税理士の試験にも登場する。 仮払金の分類 資産勘定に分類される。 実際の支出金額や内容が未確定な場合に使用する。 仮払金の定義 支出金額や内容が確定していない場合に一時的に支払う際に使用する勘定科目。 支出内容が確定した時点で精算処理を行い、仮払金は解消される。 短期間で精算されることが前提。 関連する勘定科目 現金や仮受金(負債)などが関連する。 実務での使用例 例: 出張費が確定しない場合、社員に2,000円を仮払金として渡し、実際の費用が確定した後に精算する。 例: 交通費が1,700円だった場合、差額の300円を返金して仮払金を精算。