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M&A助言費用をのれんから一括費用へ?

オリンパスの事例で、知られるところとなった企業結合の会計処理ルールですが、M&Aの際に支払った専門家へのアドバイザー費用等は、現在の会計ルールにおいて、M&Aの取得原価の一部を構成することがあります。
具体的な勘定科目としては、「のれん」の一部を構成し、その後20年以内の期間で償却される、というてん末をたどるのですね。
(参考)企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」より
【取得に要した支出額の会計処理】
26. 取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等は取得原価に含め、それ以外の支出額は発生時の事業年度の費用として処理する。
(計算例)A社は、X社の甲事業部を買収した。甲事業部の資産は700、負債は300であり、甲事業部の買収に際して、その無形の価値を含めて、840を支払った。
なお、甲事業部のM&Aに際しての評価や実務面の助言などに対して支払ったコンサルティング料金は60であった。
【仕訳例】甲事業部の買収に関する会計処理(現行)
(借方) 甲事業部資産 700 (貸方) 甲事業部負債 300
のれん
500 現金預金
900
貸借対照表の資産として計上         (対価840+助言費用60)
以上が、現行の日本基準における取得費用処理の概略です。
助言費用60の部分は、のれん500の一部に組み込まれています。
なぜ助言費用がM&Aの取得原価(この場合はのれんを構成)に含まれるのか?
それは、日本の企業会計原則などで定めている、「資産の取得原価の一般的な決定ルール」があるからです。
日商簿記3級を学習した方は覚えていらっしゃると思います。
たとえば、有形固定資産の取得原価は、購入対価+付随費用であると教わったはずです。
仕入原価も、売買目的有価証券も、同じように、購入対価+付随費用で求めます。
このように、その資産を取得するために直接支払った費用も、資産の取得時の評価に含めるべし、という伝統的な理論があるのですね。
これが、現行のM&Aの会計ルールにも影響しています。
では、助言費用の扱いの違いをわかりやすくするために、改正予定の処理(IFRSベース)を見てみましょう。
【仕訳例】甲事業部の買収に関する会計処理(改正予定)
貸借対照表の資産として計上        (対価840+助言費用60)
(借方) 甲事業部資産 700 (貸方) 甲事業部負債 300
のれん 440 現金預金 900
取得費用
60
損益計算書に計上
いかがでしょうか。
のれんの金額が60減少していますね。
その分、当期の費用として計上されます。
財務諸表の国際比較という観点、そして伝統的な会計学の理論における「付随費用」の概念にはM&A助言費用は合致しないのではないか、という会計学上の一つの主張から、このような処理がでてくるわけです。
なお、新聞報道でもありますように、2016年3月期から上場企業に適用を義務づける方向にあるようですが、今後の企業再編における会計実務にも、影響を与えることになりそうですね。

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