『わかりあえている』は幻想である【前を向いて歩こう!第32回】
人間、生まれる時も一人なら、
死ぬ時も一人です。
赤ちゃんが生まれる時におギャーおギャーと
泣くのは、居心地のいいお母さんのおなかの中から
得体のしれない下界へと放り出された不安なからなのだと
思います。
出産は、すでに外の世界にひる人々からすると、
たいへん嬉しいことなのですが、
等の赤ちゃんからすると、その瞬間はたぶん迷惑なこと
だと思っているのではないでしょうか。
そして死ぬ時。
たとえ、大勢の人にみとられた場合であったとしても、
そこから心臓が停止して、あの世にわたるのは
当の本人ただ一人です。
周りの人が一緒に心臓停止してあの世に手をつないで
いくわけではありませんね。
けっきょく、この世に登場するときも、
この世から退出するときも、人は「自分一人」で
それを通り抜けなければなりません。
だから、いつも「一緒の体験」をできるひと、
完全に同じことを考えていられる人など、
皆無なのです。
この意味で、「相手と完全にわかりあえることはありえない」
と申し上げざるを得ないのですが、それだけでは
あまりに世知辛い話となってしまいます。
長い人生、いろいろなことがありますが、そこで
ひと様との関わりを健全に保ち、精神的に豊かな
日々を送るために、人との「距離感」というテーマで
お話しさせていただきたいと思います。
人は、精神的な距離感のバランスを失った時に、
人間関係で悩んだり、自分のことで悩んだりする
ケースが圧倒的に多いのですね。
今回の話は、多分に柴山の人生観・価値観が入って
いますので、無理にこれに同意する必要もないですし、
「ああ、そういう見方もあるのね」くらいに参考と
していただければ幸いです。
ただ、これまでの経験上、私の精神安定剤となる
処世術的には便利な考え方ではあります。
何かを考える新しい視点の一つに加えていただけたら
幸いです。
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