税務上の減価償却(旧定額法の処理)
ここ数回、法人の税務上の減価償却についてみています。
平成19年4月1日以降取得した分についての償却方法である
「定額法」・「定率法」については既にみてきました。
今回からは「旧定額法」・「旧定率法」です。
それぞれ、「新」と「旧」を比較しながらみていきましょう。
まず、定額法の新旧をみていきましょう。
計算式としては、
「旧定額法」は、
(取得価額 ? 残存価額)×(耐用年数に応じた償却率)×(事業の用に供した当期の月数/12)
ちなみに、
「定額法」は、
取得価額 × 耐用年数に応じた償却率 × (事業の用に供した当期の月数 /12)
算式を見比べると異なっている点は、「旧定額法」には、
「残存価額」という名称が入っています。
残存価額とは、償却せずに残す部分の金額です。
具体的には、「旧」償却方法では、有形固定資産の場合、取得価額の10%が
残存価額となっていました。
「新」償却方法では、有形固定資産の場合、残存価額は0(ゼロ)になりました。
そのため、新「定額法」では、残存価額を差し引く必要がなくなったため、
計算式に入っていないことになります。
もう一つ、旧の減価償却計算の特徴に、「償却可能限度額」というものがあります。
これは、「旧」の計算方法の特徴でもあったのですが、残存価額が10%であったため、
通常通り償却をしていくと、取得価額の10%の金額が残ることになっています。
しかし、税務上では、10%も残しておいては多いという実務上の要請などから、
取得価額の5%まで減価償却することが認められていました。
そのため、「旧」の計算方法では、償却可能限度額として、取得価額の95%まで
減価償却が認められていたのです。
これについては、「新」償却方法では、1円まで償却が認められているため、
この「償却可能限度額」も必要がなくなり、廃止されました。
なお、「旧」償却方法で95%まで償却が終わった減価償却資産については、
5年間で残存価額1円まで償却することが可能になりました。
それでは、具体的に数字を使ってみていきましょう。
有形減価償却資産
取得価額 1,000,000円
耐用年数 10年
定額法と旧定額法における償却費の推移を計算していきましょう。
耐用年数に応じた償却率の表は下記になります。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070914/pdf/06.pdf
<定額法の場合>
耐用年数 10年 定額法 →償却率 0.100
初年度 1,000,000円 ×0.100=100,000円
2年目 1,000,000円 ×0.100=100,000円
3年目 1,000,000円 ×0.100=100,000円
?以下略?
10年目 1,000,000円 ×0.100=100,000円
100,000円?1円(備忘価額)=99,999円
<旧定額法の場合>
耐用年数 10年 旧定額法 →償却率 0.100
初年度 (1,000,000円 ─(1,000,000円×10%))×0.100=90,000円
2年目 (1,000,000円 ─(1,000,000円×10%))×0.100=90,000円
3年目 (1,000,000円 ─(1,000,000円×10%))×0.100=90,000円
?以下略?
10年目 (1,000,000円 ─(1,000,000円×10%))×0.100=90,000円
11年目 償却可能限度額まで、減価償却費を計上する。
A:(1,000,000円 ─(1,000,000円×10%))×0.100=90,000円
B:償却可能限度額
1,000,000円×95%=950,000円
950,000円?900,000円=50,000円(償却可能額)
A>B ∴ 50,000円
12年目 95%まで償却が完了しているため、残り5年間で1円(備忘価額)まで償却をする。
50,000円÷5年=10,000円
13年?15年目 50,000円÷5年=10,000円
16年目 50,000円÷5年=10,000円
10,000円─1円(備忘価額)=9,999円
となります。
1円まで償却することで、古くなった減価償却資産の入れ替えや廃却が
行いやすくなったのが特徴でしょう。償却費の推移は次のようになります。
→ https://bokikaikei.net/2009/08/post_706.html
今回はここまでとしましょう。
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