金利格差と企業業績の関係
二国間の金利の格差と企業業績の関係は、経済学の入門的な
論点ではありますが、日経新聞や経済ニュースでは、
よくお目にかかる話です。
また、現実に、企業の業績に与える影響が大きく、
ひいては株価のトレンドも大きく変わってきますから、
海外金利との格差の傾向と日本企業の業績の関係について、
典型的なストーリーは知っておきたいところですね。
では、本題です。
たとえば、アメリカの金利が上がると、円で持っているよりも、
ドルで持っている方が、多くの利息をもらえるので、相対的に
ドルをみなさん、ほしがりますよね。
ここで、日本の円の金利が一定ならば、ドルへの需要が高まるので、
ドルの値段が上がります。
(例)ある年の4月におけるアメリカドルの金利が4%、
日本円の金利が1%とする。
このときの為替相場が1ドル=110円だった。
↓
5月になって、アメリカドルの金利が5%に上昇し、
日本円の金利が1%のままだった。
そこで、ドルへの需要が高まったので、1ドル110円から
1ドル115円へと、ドルの値段が上がった。
…と、このように、金利が上昇した国の通貨の値段が高まる、
というのが、基本的なセオリーです。
もちろん、為替相場というのは、二国間のさまざまな力関係や
将来予測などの要因によっても動きますから、ぜったい、という
わけではないですが、このような典型的な性質もおさえておきたい
ですね。
さて、そこで問題です。
上記の例では、「4月の金利:米国4%:日本1%、為替110円」
「5月の金利:米国5%:日本1%、為替115円」
と変化しています。
日本の立場でいくと、自国の金利が低い状態で、その格差が
広がっています。
つまり、自国通貨が安くなっている、という状況ですね。
●ポイント…金利格差の拡大は、低い方の国の通貨を安くする。
この場合、日本の製品は、外国から見て割安になります。
たとえば、126万5千円の日本製の自動車があるとします。
・4月に買うと
126万5千円÷110円=1万1500ドルで買える。
・5月に買うと
126万5千円÷115円=1万1000ドルで買える。
このように、同じ126万5千円の日本製の製品でも、
5月になると、500ドルも安く買えるわけですから、
それだけ、海外からの、日本車への需要が高まりますよね。
●ポイント…円安は、日本の輸出企業にとってうれしい。
損益計算書
――――――――――――――
1売 上 高 ××× ←←円安で上昇!!
2売 上 原 価 ×××
さらに、たとえば4月時点で、100万ドル(1億円)の
売掛金(未回収の売上代金=売上債権)が発生したとしましょう。
・4月の売掛金100万ドル×110円=1億1000万円
↓
・5月の売掛金100万ドル×115円=1億1500万円!
いかがですか?
4月に発生した債権は、5月に円建てで評価が高まります。
※もちろん、それ以上に金銭債務が多いと、逆に損しますが…
●ポイント…円安は、日本円での金銭債権の評価額を高める。
損益計算書
――――――――――――――
1売 上 高 ×××
2売 上 原 価 ×××
3販売費・一般管理費 ×××
4営 業 外 収 益 +500万円←「為替差益」
:
以上のように、為替相場の変動による金銭債権の価値上昇分を、
決算書では、営業外収益に計上します。
このときの具体的な名称(会計帳簿上の科目名)は、
「為替差益」というのですね。
=========
◆まとめ
(1)金利格差が広がると、金利の低い国の通貨が安くなる。
(2)自国の通貨が安くなると、輸出企業の製品需要が高まる。
→売上が増える。
(3)自国の通貨が安くなると、金銭債権を多く持つ企業は、
為替差益という形で、資産評価額が増える。
=========
以上、円安の影響が、売上高と営業外収益の2つの側面で
業績を押し上げるんだ、ということを知っておいていただけると
よろしいか、と思います。
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