自己株式を買い取って、自社で消却したときの貸借対照表表示
今回は、会社法に関連が深い話題です。
まずは、会社法にまつわる会計知識のおさらいです。
新会社法における純資産の部の表示例(単独ベース)
貸借対照表
――――――――――――――――――――――――――――――
(資産の部)|(負債の部)
|
|(純資産の部)
|
|1株主資本
|
| 1資本金 ×××
|
| 2資本剰余金
| (1)資本準備金 ×××
☆1→→→→→→→→(2)その他資本剰余金 ×××
| ―――
| 資本剰余金合計 ×××
|
| 3利益剰余金
| (1)利益準備金 ×××
| (2)その他利益剰余金
| ○○積立金 ×××
| 繰越利益剰余金 ×××
| ―――
| 利益剰余金合計 ×××
|
☆2→→→→→→→4自己株式 ▲×××
| ―――
| 株主資本合計 ×××
|
|2評価・換算差額等
| 1その他有価証券評価差額金 ×××
| 2繰延ヘッジ損益 ×××
| 3土地再評価差額金 ×××
| ―――
| 評価・換算差額等合計 ×××
|
|3新株予約権 ×××
|
| ―――
| 純資産合計 ×××
===
今回のテーマは、上記の☆1「その他資本剰余金」と☆2「自己株式」のお話です。
つまり、たとえば、
自己株式を100万円で取得し(ステップ1)、
これを、後日自社内で消却した(ステップ2)、
という場合の一連の取引について、会計処理・表示について
いっしょにみていきます。
(ステップ1)A社は、自社株100万円を現金で購入した。
貸借対照表
―――――――――――――――――――――
| :
現金預金 100| 省 略
|
|その他
|資本剰余金 A
| :
|自己株式 100
|
――――| ――――
合計 100| 合計 100
==== ====
上記について、バランスシートの左側(借方)では、
現金預金が100万円マイナスとなり、それとバランス
するように、右側でも自己株式勘定で同額がマイナス
されますね。
ここで、自己株式は、純資産の部の控除科目として
機能します。
(ステップ2-1)
後日、取締役会などの意思決定機関
の決議に従い自社株を全て消却した。
(ケース1:A≧100の場合)
バランスシート
―――――――――――――――――――――
|
現金預金 ▲100|その他
|資本剰余金A 100←←・
| ↑
|自己株式 0→→・
|
――――| ――――
合計 100| 合計 100
==== ====
このように、自己株を社内で消却したときは、
消却手続が完了したときに、その他資本剰余金と相殺します。
なお、ここで、消却前の「その他資本剰余金」勘定の
残高Aが、償却額100万円より大きい場合は、
消却後のその他資本剰余金の額がA-100万円と
なって、会計処理は終了します。
しかし、もしもその他資本剰余金の額A万円が、
償却額100万円より少ない場合は、自社株の消却額と
その他資本剰余金の額を相殺し切れませんね。
そのようなばあいは、その他資本剰余金を0にし、
さらに相殺し切れなかった分の額を「繰越利益剰余金」から
減額することになります。
(ステップ2-2)
後日、取締役会などの意思決定機関
の決議に従い自社株を全て消却した。
(ケース2:A<100の場合)
貸借対照表
―――――――――――――――――――――
|
現金預金 ▲100|その他
|資本剰余金 0←←・
| : ↑
|繰越 (100-A)←・
|利益剰余金 ↑
| : ↑
|自己株式 0→→・
|
――――| ――――
合計 100| 合計 100
==== ====
けっきょく、自己株式100万円とその他資本剰余金A万円
の差額が、繰越利益剰余金から減額される、ということに
なるわけですね。
以上、会社法施行に関連する、自己株式の消却処理のお話でした。
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