IFRSと日本基準のリース会計(日経014)
国際財務報告基準(IFRS)に、昨今の日本の会計基準が、
どんどんすり寄っていっています。
これを横文字で表現すると、「コンバージェンス」と
いうのですね。
日本語では、しばしば、「収斂(しゅうれん)」という
表現が使われます。
そこにはもう、日本の商慣習や日本における会計観に
基づく感覚はほとんどないように思います。
「とりあえず、ヨーロッパの会計ルールに合わせよう!」
そんな感じですね。
「ヨーロッパの会計ルールに、日本発の意見を言おう!」
という感じのエネルギーは、今のところ感じられません、
気のせいかもしれませんが…。
これも時代の波かもしれないけど、もう少し、
日本の公認会計士や日本の会計業界の偉い方々に、
世界に対する発言力があってもいいのでは?と
個人的にはちょっと思ったりしています。
それはさておき、IAS(国際会計基準)の17号という
ところに、国際会計ルールとしてのリース会計に関する
原則がかかれています。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、
今の国際トレンドは、「原則主義」です。
日本は、そして従来のアメリカは、「規則主義」です。
つまり、細かい数値的な基準とか具体的なルールを
ガチガチに決めて、その形式的なものさしに当てはまった
らその会計処理方法を採用してね、というやり方です。
ある意味、ルールブックが莫大な量になりますが、
現場では、自社の取引は、ほぼ網羅的かつ具体的に
ルールブックで指示してくれているので、楽といえば
楽です。原則主義に比べ、裁量の余地は少ないため、
自分で悩み・考える必要性は相対的に低いです。
ところが、ちょっと前のアメリカにおける巨大粉飾事件、
日本におけるライブドアなど、頻発する粉飾事件の背景
には、かえってその明確かつ機械的な基準をすり抜け
ようとする悪質な不正経理を増長するんだ?!という
ような批判もあって、
「じゃあ、ルールブックは、原理原則だけ示しておいて、
誰が見ても『それは、ずるいでしょ!』みたいな
ルール逸脱っぽい行為を、大人の判断で摘発してね」
といった意図で、日本基準や米国基準よりもわざと抽象化
したような国際会計基準が、グローバル・スタンダード
になりつつあります。
ある意味、現場と会計士のビジネスセンスと大人の
判断力が、今後いっそう問われることになる、そんな
時代が近い将来、待っているとお考えになっていただければ
よろしいかと思います。
つまり、世界における会計業界のメッセージとして、
「簿記の超難しい問題を60分で解くような簿記マシーン的な
会計実務家は、もういらないよ?」と言っているのです。
それよりも、「ビジネスセンスがあって、財務諸表論の
精神を現場に応用できる判断力を持った会計人」が、
今後は、本気でかなり求められるようになります。
考えようによっては、「ビジネスパーソンっぽい会計人」
が増えるかもしれないので、それはそれでいいのかも、
と思ったりもしますが…。
さて、話を本テーマであるリース会計に移しますと、
現状では、IFRSでも、日本基準と同じように
ファイナンス・リースとオペレーティング・リース
の2種類あります。
2009年4月以降に日本でも新しいリース会計のルールを
導入し、従来あった所有権移転外ファイナンス・リース
というものでも、資産計上しなければならなくなりました。
こういった点などは、IFRSに近づいたといえます。
ただ、ファイナンス・リース取引(実質は借入+購入)
かどうかの判断基準には、日本の場合、その一例として
リース期間がリース物件の耐用年数の75%以上である
べし、とかいろいろとあいかわらず数値目標が形式的に
きめられています。
じゃあ、たとえば耐用年数7年の物件を5年でリース
すると71.4%だからファイナンス・リースにならなくて、
耐用年数8年の物件を6年でリースすると75%だから、
ギリギリファイナンス・リースね!
みたいな形式的な判断で両者の決算書表示がガラッと
ことなる、ということもあり得るわけです。
たしかに明確なことがかえって裏目で、悪意のある
潜脱行為を誘導しやすいかもしれませんね?(涙)。
=======================
(参考)
なお、将来、IFRSを適用する場合、新リース基準適用前
にあった所有権移転外ファイナンス・リースというものは、
日本なら今でも資産計上しなくてよいですが、IFRS上は、
資産計上を要求されますので、決算上の組替え仕訳みたい
な、ちょっと面倒な決算事務の負担が出たりするのですね。
=======================
そして、この時の日経の新聞記事を見ると、
リース会計基準(IFRS)の改定作業が進んでおり、改正原案
では、オペレーティング・リースも資産計上!みたいな
案が出ており、それを見た経理担当の人がビックリしたぞ!
といった話でした。
リース会計がIFRSでも改訂作業中であり、2010年中に公開草案
が出て、2011年に最終基準が出る予定です。
(参考)
→ http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/ifrs/project/index.html
また、
このようなオペレーティング・リースに関する取り扱いの変化
について、公認会計士協会は、総論賛成の立場のようです。
→ http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/iasb_16.html
今回のリース会計基準の変更で、ふう?、と一息ついたと思いきや、
またまた変わるんかい!という感じで、本当に予断を許しません。
上場企業の会計実務は、本当に日進月歩です。
時代の波に遅れないよう、みんなでがんばりましょ??!!
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
立替金(3級・2級商業簿記)
立替金の定義 立替金とは、誰かのために一時的に支払った代金で、後日精算されるもの。 よく関連語句として「給料」がセットで出てくる。 立替金の概念 例:従業員の個人的な支出や取引先の負担すべき広告費などを、一時的に立て替えて支払う。 支払った金額は「将来返してもらう予定のお金」として資産に計上される。 立替金は「立替金の請求権」として扱われ、資産勘定に計上。 簿記の問題での立替金 給与支給時に従業員に対する立替金を相殺する処理が出題されることがある。 立替金の処理について理解しておくことが重要。 具体的な取引例 例:従業員の頼みで、個人的な支出65,000円を立て替え、現金で支払う。 仕訳: 借方:立替金 65,000円 貸方:現金前払金(3級・2級商業簿記)
「前払金」の定義 商品などを注文した際に、品物を受け取る前に支払った手付金や内金のこと。 支払いに関連する勘定科目として「前払金」が使用される。 関連する用語:商品の仕入れなど。 「前払金」の概念 契約や注文が成立した際、手付金を支払うことが一般的。 支払った時点では品物の受け取りが確定していないため、「一時的に相手に預けているお金」として扱う。 支払った金額は資産勘定に計上され、将来的に商品を受け取る権利を持つと考えられる。 「前払金」の特性 仕入れや費用として確定しているわけではない。 目的の品物が手に入らなければ、支払った金額を返金してもらうこともある。 「前渡金」という用語も同義で使用されることがある。 取引例配賦差異(2級工業簿記)
配賦差異の重要性 2級工業簿記で非常に重要な概念。 製造間接費を予定配賦や標準原価計算で計算する際に生じる差異。 試験対策として配賦差異の理解は必須。 配賦差異の定義 配賦差異は、製造間接費の予定配賦額(正常配賦額)と実際発生額との差額。 この差異の把握は、原価管理やコスト管理において重要。 関連用語 「実際配賦」、「予定配賦率」、「製造間接費」、「部門費」など。 配賦差異には「予算差異」と「操業度差異」の2種類がある。 配賦差異の計算方法 予定(正常)配賦額 = 予定(正常)配賦率 × 実際操業度。 実際発生額との差額が配賦差異。 差異の処理方法 実際発生額が予定額を上回る場合、追加コストとして借方差異(不利差異)。 実際発生額が予定額を下回る場合、コスト節約として貸方差異(有利差異)。手形貸付金・借入金(3級・2級商業簿記)
手形貸付金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる貸付債権。 資産に分類される。 手形を使わない場合は、「貸付金」 手形借入金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる借入債務。 負債に分類される。 手形を使わない場合は、「借入金」 仕訳例 資金を貸し付ける場合:「手形貸付金」 資金を借り入れる場合:「手形借入金」 具体例 200万円を借り入れ、約束手形を発行し当座預金に入金された場合: 借方:当座預金 + 2,000,000円 貸方:手形借入金 + 2,000,000円 総勘定元帳への転記 資産:「当座預金 + 2,000,000円」 負債:「手形借入金 + 2,000,000円」仮払金(3級・2級商業簿記)
仮払金の重要性 実務および試験対策において重要な科目。 簿記3級以上で出題され、2級、1級、会計士、税理士の試験にも登場する。 仮払金の分類 資産勘定に分類される。 実際の支出金額や内容が未確定な場合に使用する。 仮払金の定義 支出金額や内容が確定していない場合に一時的に支払う際に使用する勘定科目。 支出内容が確定した時点で精算処理を行い、仮払金は解消される。 短期間で精算されることが前提。 関連する勘定科目 現金や仮受金(負債)などが関連する。 実務での使用例 例: 出張費が確定しない場合、社員に2,000円を仮払金として渡し、実際の費用が確定した後に精算する。 例: 交通費が1,700円だった場合、差額の300円を返金して仮払金を精算。