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マネーが株から債券へ=安全資産へのシフト(日経09.10.4)

今朝の日経新聞では、オリンピックの東京招致が失敗に終わった
話が一面に出ていましたね。
リオデジャネイロが2016年の開催地ということになりました。
ふだん、オリンピックのサッカーは、あまり世界では重要視され
てきませんでしたが、この時ばかりはブラジルなど、自国開催
ですから、サッカー大国の威信をかけて、金メダルを狙いに行く
のでしょうかね?。
さて、オリンピックの話は置いておくとしまして…。
日経4面をみると、2日の東京市場では、株安・債券高の
流れが強まった、というお話です。
これは、経済学的にみると、どういう状況に経済環境がある、
と判断すればよいのでしょうか。
実は、資産運用の話を考えるときには、次の2つの観点に
おける比較が大事になります。
(比較1)お金(Money)VSお金以外
(比較2)お金以外VS別のお金以外
まずは、比較2のほうからお話しします。
お金以外の資金運用先としては、たとえば次のようなものが
考えられます。
(1)債券(国債、地方債、社債…)
(2)株式
(3)不動産(土地、建物)
(4)商品(金、銀、穀物…)
(5)貸付
(6)預金
このように、「お金以外の諸資産」は、一般に次の2種類の
リターンの両方またはどちらか一方がかならず付いてきます。
リターン1:キャピタルゲイン…時価の値上がりによる儲け
リターン2:インカムゲイン…利子や配当などの安定収入
そして、(キャピタルゲイン+インカムゲイン)/投資額
の比率を「利回り」といい、これが一番大きい資産はどれかな??
と常にキラリと目を光らせて、世間の資産家たちは、少しでも
財産を増やそうと考えているわけなのですね。
したがって、(比較2)の視点をもう少し具体的に表現すると、
(比較2)お金以外VS別のお金以外
→(例1)債券利回りVS株式利回り
→(例2)預金利回りVS不動産利回り
みたいに、「お金以外の資産運用グループ内での競争」
があることになります。
今回話題とした「マネーが株式よりも債券に移動?」
みたいな話も、この比較2の視点に基づくものになります。
現時点では、「債券利回り>株式利回り」という不等式が
成り立っているわけですね。
これは、いちおうマクロ経済学の世界で扱う話ではありますが、
どちらかというと個人の経済行動に関する問題です。
よりマクロっぽい話としては、次のような比較1の視点が
重要になります。
(比較1)お金(Money)VSお金以外
つまり、国民が「お金で財産を持とうとするのか?あるいは
他の資産を持とうとするのか?」という問題意識です。
これは、政府が行う経済政策の効果がどれくらい大きくなるか?
という問題と密接に結びつくと、一般に言われています。
聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
「流動性選好理論(りゅうどうせいせんこうりろん)」と
いうやつです。
ここで、マクロ経済学の世界では、モデル(議論の対象)を
おもいっきり単純化して、数式化しやすくすることが多いです。
たとえば、この流動性選好の話を考える場合には、
「お金以外」の資産には、いろんな種類があるけど、
便宜上、これらをひとまとめにして「債券(Bond)」と呼ぼう!
みたいにね…。
したがって、マクロ経済の入門書をみると、
「現金に対する需要と債券に対する需要を比較して…」
みたいな表現がしょっちゅうでてくるのですね?。
あれ、本気で「世の中の人は、いつも現金と国債などを
比較してるんだ!」と考えているわけでありません。
あくまで、投資商品の代表選手として、比較しましょうね?、
ていう程度の感覚です。
ざっくりいうと、国債の金利が上がると、どう感じるでしょうか?
「あ、国債を買ったほうが、銀行で預金として置いておくよりも
有利だよね!じゃあ、国債を買おうっと♪」
みたいになるわけです。
そうなると、みんな、手元のお金を国債の購入などに充てるので、
現金の需要が減ります。
そうして、国債の需要が高まり、国債の購入価格が上がるのです。
この時、「金利が高い」ので、
「金利のアップ→現金需要の減少」となります。
つまり、金利が高い状態だと、個人の手からお金が離れやすく
なるのですね?。
こういうときは、政府も経済政策を打ちやすくなります。
「お金と債券とのお金の移動状況がわりと簡単に変化しやすい」
からです。
では、反対に、金利が0.01%とか、異様に低いと
どうなりますか?
「こんなに低いと、債券を買う意味ないじゃん。お金で
もっておこう?っと。」ということになります。
そうです。金利が低いときは、「キャッシュ・イズ・キング」
となってしまうのですね?。
これが、比較1の視点で、注意すべき点です。
そして、面白いことに、お金というのは、たくさん持っていると
うれしくなります。
たとえば、預金通帳に1000円しか残高がない場合と、
預金通帳に100万円の残高がある場合では、おそらく気分が
ぜんぜん違うと思います。
これと同じで、「人々は、お金を単に支払い手段としてみるだけ
ではなくて、お金を持つことにある種の喜びを感じる!」という
見方があります。
貨幣フェチシズム、なんていったりすることもありますが…。
金利が異常に低い状態が続くなどして、
この、貨幣フェチ状態がかなり世間で進行すると、
政府がちょっとやそっと金利を操作したり貨幣供給を増やすなどの
金融政策をしても、世の人々は、お金を簡単に手放そうとは
しなくなります。」
こういうのを、ちょっと難しい言葉でいうと、
「貨幣需要の利子弾力性が無限大!」と表現されます。
つまり、
「利子が上がろうが下がろうが、無限大に現金を持っていたい!」
みたいに、みんなが「現金、現金、現金!!」という状態に
なるのです(ちょっとおおげさに表現してみました(笑))。
こういうときって、経済不安が進んで、金利が超低水準のときが
多いとされます。
(あれ?こんな状況、どこかにありそうな…(苦笑))
とくに、金融政策が効果出にくい、という状況の説明で
貨幣の流動性選好の話が出てくるのですねえ。
今日ご紹介した元の記事は、比較2の視点で、
現金から他の資産への運用を前提に、どの資産へと資金が
流入するか、というお話ですが、これに関連付けて、
新政権での経済政策をみるときの、ひとつの判断材料になれば、
と思いまして、ケインズ理論で有名な流動性選好のお話を
させていただきました!

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