大阪ガスの目指す非エネルギー戦略考(2005.11.1)
さて、今回、大阪ガスを取り上げたのは、ホームページでも取り上げました
とおり( https://bokikaikei.net/info-cd.html )、
大手ガス3社のうち、唯一業績アップの予測がなされている、という
だけでなく、その生存領域におけるシビアな将来予測が、中期経営計画に
如実に現われており、非常にビジネススキルアップに役立つと思えたから
なのです。
(資料)平成18年3月期の業績予測
会社名 売上高予想(年間) 経常利益予想(年間)
東京ガス 前期比5%アップ 前期比25%ダウン
(1兆2480億円) (990億円)
東邦ガス 前期比5%アップ 前期比16%ダウン
(3550億円) (200億円)
大阪ガス 前期比3%アップ 前期比3%アップ
(1兆0050億円) (1000億円)
この理由として、日経新聞の記事によりますと、
「東京ガスと東邦ガスは、値引きした」
「大阪ガスは値引きせず、M&A戦略をとりいれ、収益源が増えた」
というポイントが指摘されています。
で、これ自体は、そのとおりです。
そして、業績予想の各社の実態面にも、反映しており、
説得力があります。
…と、ここまでは、一般的な分析の域です。
たいていの会計の専門家もこの水準まで現状を把握しておけば、
まずまず、という感じでしょうか。
でも、これで終わらないのが柴山君です(笑)。
もう一歩、深読みしましょう。
実は、ここからが財務分析の本当に面白いところでして、
「ある財務比率←値下げせず、M&Aで多様な収益源の確保」
までで終わっては、標準レベル
「ある財務比率←値下げせず、M&Aで多様な収益源の確保←なぜ?」
―――
↑
↑
ここ、
ポイントです
なぜ、多様な収益源の確保が必要なのか、
なぜ、ねさげしないのか。
そこを推理するのが、本当の財務分析の醍醐味です。
たとえば、M&Aによる事業多角化を目指す背景は、
大阪ガスのホームページを見ないと分かりません。
だから、
「本気で財務分析しようと思ったら、
その会社のサイト、めっちゃチェックせんかい!」
…ということになります。
すると、
「大阪ガスは、将来も天然ガスを中核とするエネルギー会社であり、引き続き、
都市ガス事業が収益の中心であります。一方で、近畿圏の経済成長率の鈍化、
人口の減少トレンド、競合他社との競争を考えると、エリア内都市ガス事業
のみを事業の中核とすることは将来の継続的な成長発展の可能性を狭めて
しまうリスクがあります。
今後とも大阪ガスが持続的な成長を実現するためには、都市ガス事業の
競争力を引き続き強化していくとともに、電力事業の本格展開やエネルギー
事業の広域展開など、新たに中核となる事業を強化してマルチエネルギー
事業者へと発展していくことと、アドバンテージある非エネルギービジネス
を拡大していくことが急務と考えております。
…以下略(大阪ガスホームページ Design 2008より引用)」
私は、この中でも、人口の減少トレンド、競合他社(おそらく、電気・石油
などの周辺エネルギー分野も視野に入っているのでは?)との競争、
という観点から見ても、「マルチエネルギー事業者」としての
生存決定をしているように思えました。
既存のモデルから脱却しようとする強い意志を感じます。
力強いですね。
だから、M&Aにしても、実は、北海の石油・ガス開発事業への進出
によりエネルギー供給源を新たに確保したり、米国IPP(卸発電事業)
を買収してマルチエネルギー化を進めたり、上流への垂直的統合や
周辺事業への範囲の経済性追求に余念がありません。
そのために2005年に入ってから、2度にわたり社債を発行し、
400億円の資金を調達しています。
かなり本気なのでしょう。
これが2年後、3年後、どのような結果をもたらすか、
大いに興味が沸きませんか?
そのときの指針は、「粗利は増えたか?」「営業利益は増えたか?」です。
会計数値を上手に使えば、その会社の経営戦略の後日の姿が、
非常に分かりやすいですよね。
なお、12月15日号の会員制CDでは、本稿に関連して、
M&Aないし、事業多角化に関連するコスト面の効果などの話を、
もう少し「会計+戦略論」とのからみから、興味深く解説していきます。
請うご期待!
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立替金(3級・2級商業簿記)
立替金の定義 立替金とは、誰かのために一時的に支払った代金で、後日精算されるもの。 よく関連語句として「給料」がセットで出てくる。 立替金の概念 例:従業員の個人的な支出や取引先の負担すべき広告費などを、一時的に立て替えて支払う。 支払った金額は「将来返してもらう予定のお金」として資産に計上される。 立替金は「立替金の請求権」として扱われ、資産勘定に計上。 簿記の問題での立替金 給与支給時に従業員に対する立替金を相殺する処理が出題されることがある。 立替金の処理について理解しておくことが重要。 具体的な取引例 例:従業員の頼みで、個人的な支出65,000円を立て替え、現金で支払う。 仕訳: 借方:立替金 65,000円 貸方:現金前払金(3級・2級商業簿記)
「前払金」の定義 商品などを注文した際に、品物を受け取る前に支払った手付金や内金のこと。 支払いに関連する勘定科目として「前払金」が使用される。 関連する用語:商品の仕入れなど。 「前払金」の概念 契約や注文が成立した際、手付金を支払うことが一般的。 支払った時点では品物の受け取りが確定していないため、「一時的に相手に預けているお金」として扱う。 支払った金額は資産勘定に計上され、将来的に商品を受け取る権利を持つと考えられる。 「前払金」の特性 仕入れや費用として確定しているわけではない。 目的の品物が手に入らなければ、支払った金額を返金してもらうこともある。 「前渡金」という用語も同義で使用されることがある。 取引例配賦差異(2級工業簿記)
配賦差異の重要性 2級工業簿記で非常に重要な概念。 製造間接費を予定配賦や標準原価計算で計算する際に生じる差異。 試験対策として配賦差異の理解は必須。 配賦差異の定義 配賦差異は、製造間接費の予定配賦額(正常配賦額)と実際発生額との差額。 この差異の把握は、原価管理やコスト管理において重要。 関連用語 「実際配賦」、「予定配賦率」、「製造間接費」、「部門費」など。 配賦差異には「予算差異」と「操業度差異」の2種類がある。 配賦差異の計算方法 予定(正常)配賦額 = 予定(正常)配賦率 × 実際操業度。 実際発生額との差額が配賦差異。 差異の処理方法 実際発生額が予定額を上回る場合、追加コストとして借方差異(不利差異)。 実際発生額が予定額を下回る場合、コスト節約として貸方差異(有利差異)。手形貸付金・借入金(3級・2級商業簿記)
手形貸付金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる貸付債権。 資産に分類される。 手形を使わない場合は、「貸付金」 手形借入金 借用証書の代わりに約束手形を使って行われる借入債務。 負債に分類される。 手形を使わない場合は、「借入金」 仕訳例 資金を貸し付ける場合:「手形貸付金」 資金を借り入れる場合:「手形借入金」 具体例 200万円を借り入れ、約束手形を発行し当座預金に入金された場合: 借方:当座預金 + 2,000,000円 貸方:手形借入金 + 2,000,000円 総勘定元帳への転記 資産:「当座預金 + 2,000,000円」 負債:「手形借入金 + 2,000,000円」仮払金(3級・2級商業簿記)
仮払金の重要性 実務および試験対策において重要な科目。 簿記3級以上で出題され、2級、1級、会計士、税理士の試験にも登場する。 仮払金の分類 資産勘定に分類される。 実際の支出金額や内容が未確定な場合に使用する。 仮払金の定義 支出金額や内容が確定していない場合に一時的に支払う際に使用する勘定科目。 支出内容が確定した時点で精算処理を行い、仮払金は解消される。 短期間で精算されることが前提。 関連する勘定科目 現金や仮受金(負債)などが関連する。 実務での使用例 例: 出張費が確定しない場合、社員に2,000円を仮払金として渡し、実際の費用が確定した後に精算する。 例: 交通費が1,700円だった場合、差額の300円を返金して仮払金を精算。