商品が傷んだ場合のP/L表示の違い「売上値引 VS 商品の廃棄損」
損益計算書(P/L)のフォームを、まずは復習しましょう。
損益計算書 (単位:億円)
―――――――――――――――――――――――――
1売 上 高 960
2売 上 原 価 660(?)
――――――――――――――
売 上 総 利 益 300
3販売費及び一般管理費 180(?)
――――――――――――――
営 業 利 益 120
4営 業 外 収 益 30
5営 業 外 費 用 54(?)
――――――――――――――
経 常 利 益 96
6特 別 利 益 10
7特 別 損 失 62(?)
――――――――――――――
税引前当期純利益 44
法人税、住民税及び事業税 20
――――――――――――――
当 期 純 利 益 24
==============
ここで、売上高は、「商品の販売額」を表し、売上原価は「販売した商品の
仕入原価」を表すのだ、ということは、よろしいですね。
つまり、売上高?売上原価=粗利益になるわけです。
これが、もっとも基本的な、商品から得られる利益です。
ちなみに、上記の例でいくと、960?660=300億円になりますね。
粗利率は、300/960=31.25%です。
これは、日本の全業種平均からすると、少し低いくらいかな、という感じです。
まあ、常識的な範囲ともいえます。
ところで、たとえば、スーパーや食料品店で、店頭に並べた商品について考え
てみましょう。
時間が経つにつれて品質が落ちてきますよね。
すると、その商品は、通常、次のどちらかの顛末をたどることになります。
(パターン1)値引して売られる。
(パターン2)廃棄される。
上記のパターン1、つまり売価を下げる、という行為は、いわば「売上の一部
取り消し」ですよね。
したがいまして、P/L上は、「売上高」の金額を構成する金額から直接控除
されます。
損益計算書 (単位:億円)
―――――――――――――――――――――――――
1売 上 高 ××× ← 売上値引
2売 上 原 価 ◎◎◎
――――――――――――――
売 上 総 利 益 □□□
つぎに、パターン2の廃棄は、棚卸資産の数量的な減少です。
実務的には、棚卸差損、商品廃棄損など、様々な名称で呼ばれるものです。
簿記的には、棚卸減耗費が最も近い科目名でしょう。
つまり、帳簿上の期末在庫に対し、盗難や紛失等の理由で実地数量が減少する
さいの数量減少分ですから、次の2つの解釈が成り立ちます。
ここでは、毎期生じる程度の、経常的(=正常)な廃棄としましょう。
(1)仕入コストの追加と考え、売上原価に加算する。
(2)販売活動の一環から生じる費用と考え、販売費に加える。
損益計算書 (単位:億円)
―――――――――――――――――――――――――
1売 上 高 ×××
2売 上 原 価 ◎◎◎ ← 廃棄損(1)
――――――――――――――
売 上 総 利 益 □□□
3販売費及び一般管理費 ●●● ← 廃棄損(2)
――――――――――――――
営 業 利 益 ◇◇◇
こうやってみると、棚卸資産の数量的な減少を、売上原価として処理するか、
販売費として処理するかによって、売上総利益の額に差が生じることになり
ますね。
だから、会社の経理方針は、各段階の利益を変化させかねないので、慎重に
決定したいものです。
→ 決算書の読み方と使い方分かるDVD講座
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 【連結入門・未実現利益の考え方】土地と建物の未実現利益に関する処理の比較でマスター
連結会計を学ぶ上で、未実現利益の正しい理解は必須ですね。 この点、最初の理解の仕方を間違えてしまうと、けっこう連結が苦手になったり、遠回りしてしまったりしてしまいます。 そこで、今回の動画では、まず一番簡単な土地の親子間売買(ダウンストリーム)を取り上げ、それとの比較で建物の売却による未実現利益の消去と、それに伴う減価償却費の連結修正について簡単な事例を使って解説いたしました。 この10分程度の動画をさっと視聴することで、連結会計の未実現利益に対する苦手意識を取り除くきっかけになればうれしいです! - 会計士志願者が2倍も、監査法人離れ
2023年9月21日の日経1面です。 2015年を底に2023年までの8年間で公認会計士試験の受験者数が倍増し12年ぶりの2万人台を記録したそうです。 ※2013年~2023年の願書提出者数 2023年 20,318人 2022年 18,789人 2021年 14,192人 2020年 13,231人 2019年 12,532人 2018年 11,742人 2017年 11,032人 2016年 10,256人 2015年 10,180人 2014年 10,870人 2013年 13,224人 (資料:マイナビ会計士)※2013年~2022年 ※2023年は金融庁ホームページ たしかに、過去10年程度で2015年の10,180人がそこになっており、そこから20,318人ですから、この期間において2倍程度増えていますね。 - 社外役員の兼任者数が4割アップ!?~会計士・税理士に新たなフィールドのチャンスが到来?
昨日の日経朝刊は、コーポレートガバナンスに関する非常に興味深い記事でした。 日経1面に出るということは、その日のニュースの中でも日本経済全体に影響を及ぼすと判断されたトピックと考えられるのですね。 いま、日本企業の多くは閉塞感にとらわれているかもしれません。 先行き不透明な中、社内の限られた知見だけで経営を続けていくのがますます難しくなってきています。 社内の常識が世間の非常識、なんてこともあったりしますね。 私は監査法人の勤務時代から強く感じていたことがあります。 会計士はその会社に年中いるわけではないので、その会社の業界知識の深さについてはかなわないのですが、彼らになくて私たちにあったのは「他の多くの会社の実務を見て実態を知っている」という点です。 - 【時事ニュースで学ぶ会計知識】オリンパスの売上高当期純利益率が100%超!?
2023年8月30日の日経18面で報じられていました。 オリンパスの売上高当期純利益率がなんと100%を超えたという珍しいケースです。 普通は、売上高を100とするならば、営業利益は5~8%程度、当期純利益は税引き後なので3~5%くらいがよくあるケースです。 営業利益率が10%以上になってくると、本業で結構儲けが出ている印象を受けます。 個人的には非常に良いイメージですね。 この点、オリンパスさんの営業利益率は13%を超えていますので、一般的な視点で行けば本業での好調さが想像されます。 そして、そこから一定の調整を経て、さらに法人税等が差し引かれるので、営業利益よりも当期純利益は少なくなるのが通常です。 しかし! - 【読んでみたい一冊】週3バイトが東大合格した時間術の本
今回は時間術に関する興味深い視点の本をご紹介します。 限られた時間で効率よく勉強しながら東大に合格した実体験から自身で身に着けた時間管理ノウハウを本にまとめたものです。 ユニークな視点でなるほど~、と思わせるところが多いのと、読みやすく短時間で一気に通読できることから、手軽に時間生産性を上げるためのヒントとして、動画で取り上げてみました。 全部で3章構成からなっているのですが、その全体フローがそのまま企業コンサルの手順にも応用できます。 すなわち、 ステップ1 ムダを削減する ステップ2 今の仕事の効率を上げる ステップ3 それを継続する です。 こうやって書いてみると非常にシンプルですが、そのシンプルさの中にこそ、マネジメントの本質が隠されていることもあります。