会計ビッグバン
会計ビッグバンとは、日本の会計制度を国際標準に近づけるための一連の改正作業の俗称です。
1999年度から会計基準の大々的な改正が行われています。
< 概 要 >
(1)連結決算の本格導入
現代の大企業は、トヨタにしても松下にしても親会社単独で活動しているわけではありません。
多岐にわたる事業毎の経営管理を確立するために分社(子会社の設立)を行ったり、他の会社に資本参加することで、企業グループとしての発展を目指したりしています。
そこで、そうした活動の結果である決算書について、その企業の経営状態を判断しようとするとき、本体の会社だけの決算書では正確な把握が困難になります。
例えば、親会社は黒字だけれど、グループの子会社が親会社の黒字をはるかに越える赤字であるような場合、親会社だけの個別決算書だけで判断できないことは明らかですね。
だから、連結したグループの決算書により正確な経営評価を行おうと、会計ビッグバンでは連結決算書を決算書の中心として位置づけています。
従来日本の会計基準では、個別法人の決算書がメインで、連結決算書は付属資料的位置づけでしたので、これは大きな転換です。
なお、これにあわせて、法人税の計算の上でも、企業グループで課税所得を算定する方法としての連結納税制度が認めされています。
(2)時価主義会計
従来の会計制度の基本的考え方として、「原価主義」というのがあります。
企業が保有する資産、すなわち持っている土地や建物、在庫商品、株式などを買ったときの原価を基にして、決算書の資産評価に反映させようと言う考え方です。
つまり、土地は買ったときの値段のまま、建物は買ったときの金額から期間の経過に応じて徐々に古くなるので、その部分を差し引いて(減価償却)決算書に反映させるというものです。
原価は、そのときの領収書や契約書などで金額が確認でき、評価に客観性がもたせられるので、バランスシートの資産評価の重要な原則となります。
しかし、一方では昔の原価による評価のままで、現時点の経営の判断ができるのか、という疑問もありました。
所有する証券取引所に上場している会社の株式については、毎日その時価が新聞に出ています。この値段で評価すればおおむね決算の時点での財産の評価が適切にできるというわけです。
さらに、先物取引等の金融商品は、通常の商品を仕入れる場合のようにものを買うわけではなく、手付け金(保証金)程度を支払うだけなので、取引開始時には大きな資金の動きはなく、終了時に多額の損益が発生することが特徴です。いわゆるレバレッジ効果ですね。
こうした金融商品の会計処理は、原価主義の考え方では、取引終了時に損益を発生させることとなってしまうため、以前は多額の赤字が隠されていても決算書に出てこないことになっていました。
特に金融商品の多くは取引の終了(手じまい)を任意に選択できたので、損失は多額になるまで隠されることがよくありました。大和銀行ニューヨーク支店の事件などは大きな事件でしたね。
こうした帳簿外にかくれていた損益についても、決算時点の時価で評価しようというのが時価主義の考え方です。
(3)退職給付会計
これも時価主義会計の考え方を踏襲しているといえます。
従来は、役職員の決算時の自己都合要支給額(役職員全員が自己都合で退職すると仮定した場合の要支給額)の40%を計上していれば良いとされてきました。これは、日本の法人税法の損益限度額の基準がこうしたルールであったため、この処理で良いとされてきたのです。また、この「40%基準」は、「平均勤続年数12年、現在価値率8%」という想定のもとでは、適正な会計処理といえる、という理屈もありました。
ところが、法人税法が98年に改訂され、以前の40%から20%に引き下げられることになったのでした。20%では適正な退職引当金として少なすぎることは明らかで、20%しか計上していない決算書を適正とはとてもいえないということになりました。
そうしたこともあって、本来の労働の対価として支払うべき退職金の決算時の時価を何らかの方法で算定しようということになりました。これが、「年金数理計算」などにより決算時の未払の退職金を算定し、退職給付引当金を計上するという退職給付会計が採用されることになったのです。
また、外部の生命保険会社等と契約し、毎月年金保険料を支払うことにより、退職金を法人が支給する代わりに、生保等が退職者に年金等で支払う退職年金について、従来はその契約分は、法人として退職引当金を計上する必要はありませんでした。
しかし、特にバブル崩壊後の低利回りの状況をうけて、そうした年金契約について予定の運用利益をあげられない状況となり、年金の源資が大幅に足りないこととなりました。
そして、この不足分は、生保が補填するわけではなく、法人が保険料の追加として支払わなければならなかったので、この保険料の不足分(過去勤務債務)も退職給付引当金として計上することとなるのです。
(4)キャッシュフロー計算書
キャッシュフローという言葉は、当初は難しいイメージがありましたが、今ではずいぶんとビジネス用語として定着した感があります。
かんたんにいえば、現金預金等の資金の流れのことです。
この資金の流れを重視し、会計ビッグバンを契機に、決算書の一つとして「キャッシュフロー計算書」を作成報告することとなりました。
会計上は、現金が未収入でも、たとえば「売掛金」という資産を増加させて収益を計上したり、在庫を購入して支出しても、未販売の分は棚卸資産という財産としてカウントさせられたりします。
これは、会計実務の大原則である「発生主義」という考え方に起因するのですが、企業の利益が、かななずしも現金の収支差額と一致しないので、損益情報の欠点を補完する意味で、キャッシュフロー情報は、経営上も投資判断上も重要となります。
現行のキャッシュフロー計算書は、資金の流れを「営業活動」・「投資活動」・「財務活動」の3区分に分けて分析します。
今後、キャッシュフローの考え方を重視した経営・ビジネスがますます必要となるでしょう。
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