当期純利益と「法人の所得(=法人申告所得)」の違い
まずは、損益計算書のカンタンなフォームを、おさらいしましょう。
損益計算書 (単位:億円)
――――――――――――――――――
売 上 高 800
:
営 業 利 益 135
営業外費用(支払利息) ▲15
特別損失(減損損失) ▲20
―――――――
税引き前当期純利益 100
法人税等 ▲48
―――――――
当期純利益 52
=======
上記の例では、税効果会計の適用を無視して考えることに
します。
(※税効果会計について解説した教材はコチラ
中級講座⇒ https://bokikaikei.net/03kaikei/287.html )
また、話をカンタンにするために、法人税等(法人税、住民税
及び事業税の合計)の税率を、所得(税務上の利益)の40%
としましょう。
そうすると、上記の例ならば、税引き前当期純利益100億円に
40%をかけて、40億円ではないか、との疑問が生じますよね。
では、なぜ48億円の納税額なのか。
それは、会計上の(P/L)利益100億円と、
税務申告上の利益(申告書上の所得)が、異なるために生じる
減少なのですね。
たとえば、上記の損益計算書(P/L)で、
特別損失(減損損失)は、固定資産の特殊な評価の切り下げ
です。しかも、やたらと見積もり要素が多くて、数字の
厳格性の観点からは、株式の評価損のような「客観性」に欠けます。
つまり、見積り費用として会計上は計上しても、
税務上ではこれを認めることは、算定の客観性などの点から、
難しいのかな、ということになります。
そうすると、
「損益計算書では費用とする」が、
「税金計算上は、費用とは認められない」項目が
でてきたりしますね。
このような会計上の利益と税務上の利益(=所得)との差を、
損益計算書とは別の表(別表4)で明らかにするのです。
(参考:別表4のイメージ)
※当期純利益(税引き前とします) 100億円
加算:減損損失の否認額 +20億円
減産:(本例は、なしとします)
―――――
所得金額 120億円
=====
※初心者の理解を優先し、実際の申告書と若干違う表記に
してあります。
(ここでは、税引き前の当期純利益からのスタート。
実際には、税引き後からスタートする。)
上記の所得金額120億円は、
P/Lの税引き前当期純利益100億円と明らかに違います。
(ポイント)申告書の所得金額 ≠ 税引き前当期純利益
120 100
そして、別表4で計算された所得金額120億円をもとに、
法人税・住民税・事業税などが計算されるわけですね。
損益計算書 (単位:億円)
――――――――――――――――――
売 上 高 800
:
営 業 利 益 135
営業外費用(支払利息) ▲15
特別損失(減損損失) ▲20
――――――― <別表4>
税引き前当期純利益 100 →→+20
(120)所得
↓
法人税等(納税額) ▲48 ←←←←・×40%
―――――――
当期純利益 52
=======
上記のように、法人税の確定申告書の別表4というところで、
納税額の計算基礎となる税務上の所得金額が計算されるわけです。
なお、税務計算の対象となる「所得」金額は、
申告所得とか、課税所得などとも、呼ばれたりしています。
以上、損益計算書における会計上の利益と、
税務計算上の所得の違いのお話でした。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 未着品(3級・2級商業簿記)
未着品勘定 遠隔地からの商品仕入れ時に、商品がまだ届いていないが、貨物代表証券(例:船荷証券)を受け取った場合に使用される。 未着品に関連する用語 貨物代表証券 荷為替手形 未着品売上 船荷証券 船荷証券(または貨物代表証券)は、海外からの商品輸入時に現物商品に先立って発行される商品引き換え証書。 商品を受け取る権利を証明する。 転売可能であり、資産として計上。 商品が届く前でも、船荷証券を受け取ることで商品を購入したと見なす。 この場合、使用する勘定科目は「未着品」。 商品が売れた場合、「未着品売上」勘定を使用。 取引例 海外仕入先から商品発送後、船荷証券500,000円分を受け取る。 額面400,000円の荷為替手形を引き受け、支払い依頼を受ける。 - 貨物代表証券(3級・2級商業簿記)
貨物代表証券の定義 船荷証券の別名 遠隔地から輸送中の商品に対する権利を示す証書 未着品に関連し、到着後は仕入勘定に振り替えられる 関連する勘定科目 「未着品」 「仕入勘定」 「未着品勘定」 貨物代表証券の仕組み 所持者が輸送中の商品に対する権利を持つ証書 商品到着前に転売された場合、「未着品売上」として計上 商品到着後、貨物代表証券と引き換えに現物を受け取った際、 借方:仕入 貸方:未着品 取引の具体例 取引① 原価240,000円の船荷証券を翌月末払いで取得 仕訳: 借方:未着品 240,000円 / 貸方:買掛金 240,000円 取引② 船荷証券の2/3が到着(240,000円 × 2/3 = 160,000円) 仕訳: 借方:仕入 160,000円 - 配賦(2級工業簿記)
配賦の定義 配賦とは、製造間接費をあらかじめ定められた基準に従って、各製品や部門に分配する手続きのこと。 関連用語 「実際配賦」「予定配賦」「製造間接費」「部門費」などが関連する用語。 実際配賦の計算手順 実際製造間接費の合計額を事前に定めた基準で割り算し、1単位あたりの間接費(配賦率)を算出。 配賦率を使って、各製品に間接費を配分。 具体例 実際製造間接費:945,000円(変動費340,000円、固定費600,000円) 実際操業時間:450時間 計算式:945,000円 ÷ 450時間 = 1時間あたり配賦率 2,100円 製品ごとの配分 製品No.10:2,100円 × 210時間 = 441,000円 製品No.20:2,100円 - 為替、純資産(資本)、証券
為替について 為替は現金以外の方法で金銭を決済する手段を指す言葉(為替手形、小切手、銀行振込など)。 為替には「内国為替」と「外国為替」の2種類がある。 内国為替 国内で行われる金銭の決済。 外国為替 国内と国外の間で行われる金銭の決済(例: 外国通貨を日本円に換算)。 一般に「為替」という言葉は外国為替を指すことが多い。 外国為替の重要性が増しており、円安が進行中(2024年、1ドル約150円)。 為替レートは通貨間の交換レートであり、国際取引において重要な指標。 純資産(資本)について 会社の総資産から総負債を引いた部分、会社が実際に保有する資産の価値。 仕訳で純資産が増加する場合は貸方(右側)、減少する場合は借方(左側)に計上。 - 得意先元帳(3級・2級商業簿記)
得意先元帳の重要性 試験では出題頻度は低いが、実務では非常に重要 コンサルティング業務で頻繁に使用しており、実務面でも理解が必要 得意先元帳とは 売掛金を統制勘定として管理し、相手先別に詳細な記録をつける帳簿 統制勘定:複数の関連項目をまとめて管理する勘定科目 「人名勘定」 取引先ごとに個別に管理する勘定科目 例:仕入先元帳では「A社勘定」「B社勘定」など 得意先元帳の別名 得意先元帳は別名「売掛金元帳」とも呼ばれる 仕入先元帳は「買掛金元帳」とも呼ばれる 本社経理部と営業部の役割の違い 経理部:総勘定元帳で売掛金全体の残高を管理 営業部や債権管理部:得意先元帳で相手先別に売掛金を管理 得意先元帳の実務上の重要性 取引先ごとの残高を把握し、請求書の発行や回収業務に必要不可欠