子会社のグループ全体への貢献度を知る…「連単倍率」
現在、上場企業の決算は、連結財務諸表が基本です。
連結財務諸表とは、
「親会社を中心とする企業集団を一つの組織体とみなし、
この企業集団における財務状況を報告するための決算書」です。
連結財務諸表の種類としては、連結貸借対照表、連結損益計算書、
連結キャッシュフロー計算書、連結株主資本等変動計算書などが
あります。
※連結決算の基本について、さらに詳細の学習をご希望の方は、
やさしい現代会計の中級講座をご参照ください。
⇒ https://bokikaikei.net/03kaikei/287.html
さて、連結財務諸表の作成プロセスですが、
その最初の段階で、親会社の財務諸表と子会社の財務諸表を
合算しますので、当然、連結ベースでは、子会社の資産・負債や
子会社の売上高・費用なども加えています。
したがって、連結全体の数値は、子会社の実績も含むのですね。
そこで、「子会社が、連結全体にどれだけ貢献しているか?」を
見る指標が必要になってきます。
この点、もっとも有名なのが、「連単倍率」です。
簡単に言えば、連結売上高と親会社単独の売上高を比較したり、
連結総資産と親会社単独の総資産を比較したりすることで、
どれだけ子会社の存在感があるか、を判断するわけなのです。
(例)A社の、単独決算における売上高、経常利益、総資産、
純資産と連結決算における売上高、経常利益、総資産、
純資産は、つぎのとおりであった。(単位:億円)
連結ベース 単体ベース 連単倍率
1.売 上 高 1150 1000 1.15
2.経常利益 84 80 1.05
3.総 資 産 1200 900 1.33…
4.純 資 産 440 400 1.1
たとえば、上記の数字でいくと、
連結ベースの売上高1150億円に対して、単体ペースの売上高
1000億円を引くと、残り150億円が、子会社の貢献度合い
となりますね。
連単倍率(連結/単独)は、1.15倍ですから、連結全体に
対する子会社の貢献度は15%程度となります。
これに対して、経常利益の面では、さらに子会社の貢献度は
低下します。
1.05倍です。
もしかしたら、子会社の中に、多額の赤字で全体の足かせと
なっている事業セグメントがあるかもしれませんね。
そういったところの推定がはたらきやすいのが、連単倍率の
科目間の比較ですね。
あと、同一科目での期間比較によるトレンド分析は、非常に
有効です。
同業他社との比較も、グループとしての総合力、
子会社の実力を判断する上では、非常に役に立ちますね。
以上、子会社の貢献度をチェックする指標、連単倍率でした。
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 【連結入門・未実現利益の考え方】土地と建物の未実現利益に関する処理の比較でマスター
連結会計を学ぶ上で、未実現利益の正しい理解は必須ですね。 この点、最初の理解の仕方を間違えてしまうと、けっこう連結が苦手になったり、遠回りしてしまったりしてしまいます。 そこで、今回の動画では、まず一番簡単な土地の親子間売買(ダウンストリーム)を取り上げ、それとの比較で建物の売却による未実現利益の消去と、それに伴う減価償却費の連結修正について簡単な事例を使って解説いたしました。 この10分程度の動画をさっと視聴することで、連結会計の未実現利益に対する苦手意識を取り除くきっかけになればうれしいです! - 会計士志願者が2倍も、監査法人離れ
2023年9月21日の日経1面です。 2015年を底に2023年までの8年間で公認会計士試験の受験者数が倍増し12年ぶりの2万人台を記録したそうです。 ※2013年~2023年の願書提出者数 2023年 20,318人 2022年 18,789人 2021年 14,192人 2020年 13,231人 2019年 12,532人 2018年 11,742人 2017年 11,032人 2016年 10,256人 2015年 10,180人 2014年 10,870人 2013年 13,224人 (資料:マイナビ会計士)※2013年~2022年 ※2023年は金融庁ホームページ たしかに、過去10年程度で2015年の10,180人がそこになっており、そこから20,318人ですから、この期間において2倍程度増えていますね。 - 社外役員の兼任者数が4割アップ!?~会計士・税理士に新たなフィールドのチャンスが到来?
昨日の日経朝刊は、コーポレートガバナンスに関する非常に興味深い記事でした。 日経1面に出るということは、その日のニュースの中でも日本経済全体に影響を及ぼすと判断されたトピックと考えられるのですね。 いま、日本企業の多くは閉塞感にとらわれているかもしれません。 先行き不透明な中、社内の限られた知見だけで経営を続けていくのがますます難しくなってきています。 社内の常識が世間の非常識、なんてこともあったりしますね。 私は監査法人の勤務時代から強く感じていたことがあります。 会計士はその会社に年中いるわけではないので、その会社の業界知識の深さについてはかなわないのですが、彼らになくて私たちにあったのは「他の多くの会社の実務を見て実態を知っている」という点です。 - 【時事ニュースで学ぶ会計知識】オリンパスの売上高当期純利益率が100%超!?
2023年8月30日の日経18面で報じられていました。 オリンパスの売上高当期純利益率がなんと100%を超えたという珍しいケースです。 普通は、売上高を100とするならば、営業利益は5~8%程度、当期純利益は税引き後なので3~5%くらいがよくあるケースです。 営業利益率が10%以上になってくると、本業で結構儲けが出ている印象を受けます。 個人的には非常に良いイメージですね。 この点、オリンパスさんの営業利益率は13%を超えていますので、一般的な視点で行けば本業での好調さが想像されます。 そして、そこから一定の調整を経て、さらに法人税等が差し引かれるので、営業利益よりも当期純利益は少なくなるのが通常です。 しかし! - 【読んでみたい一冊】週3バイトが東大合格した時間術の本
今回は時間術に関する興味深い視点の本をご紹介します。 限られた時間で効率よく勉強しながら東大に合格した実体験から自身で身に着けた時間管理ノウハウを本にまとめたものです。 ユニークな視点でなるほど~、と思わせるところが多いのと、読みやすく短時間で一気に通読できることから、手軽に時間生産性を上げるためのヒントとして、動画で取り上げてみました。 全部で3章構成からなっているのですが、その全体フローがそのまま企業コンサルの手順にも応用できます。 すなわち、 ステップ1 ムダを削減する ステップ2 今の仕事の効率を上げる ステップ3 それを継続する です。 こうやって書いてみると非常にシンプルですが、そのシンプルさの中にこそ、マネジメントの本質が隠されていることもあります。