大手生保所有の国債、金利上昇で価値下落の懸念
生命保険会社の資産運用が、金利上昇への備えに対する必要性に、よりいっそう迫られているようです。
現在、生命保険会社の運用資産の中心を占めるのが国債で、生保43社の運用資産のうち、なんと44%が国債によっている、という驚くべきデータも出ています。
「保険会社が運用している資産のほぼ半分が国債だったとは…」
つまり、国債の価値が暴落すると、保険金が下りてこなくなるリスクが急増するわけですね。
そして、今、心配されているのが、「あまりに低すぎる長期金利」です。
たとえば、生命保険会社が主に投資する20年物の国債の利回りは3月末が1.5%、最近では1.3%台までじりじりと低下しているという話です。
利回りが低いとは、いったいどういうことか…
話を簡単にするために、まったく利払いのない債券で、発行の時に割引発行し、満期に額面の1,000,000円で償還することで、差額の利益を投資家が得る割引債のパターンを考えてみます。
たとえば、一年前に980,000円で債券を発行し、一年後に1,000,000円で償還を受ける金融商品があったとしましょう。
この一年間の利息は20,000円、投資家の投資額(元本)は980,000円ですから、利回りは20,000円÷980,000円=2.04…%になりますよね。
これは、利回り2.04%における債券の需給関係です。
もしも、将来のある時点で金利が4.04%に上昇したらどうなるか。
その債券の値段は、額面1,000,000円÷(1+0.0404)=961,169円となります。
割引額は1,000,000?961,169=38,831円ですね。
つまり、金利が2.04%から4.04%と2%上昇したら、その債権の評価額(時価)は980,000円から961,169円へと下落してしまいます。
このようなかたちで、時価評価を無制限に行ってしまうと、大手生保全体としては大変な金額となってしまう危険性が高くなります。
150兆円もの国債を抱えているともいわれる生保にとって、たとえば1%の金利上昇があっても、それは1%の価格下落に直結するものと考えることができるでしょうから、150兆円×0.01=1.5兆円もの評価損益の計上インパクトが生じてしまいます。
これは相当、社会に与える影響が大きいですね。
そこで、現行の会計ルール上は、保険会社の持つ特殊性にかんがみ、「責任準備金債券」という特別な区分に表示させて、時価ではなく原価で評価することを認めたのです。
こうすれば、一時的に株式の時価が落ちたとき、原価評価によって、評価損の発生に歯止めがかけられるだろう、と期待されているのです。
一般事業会社には認められていないので、なんだかちょっと生保が優遇されているみたいでいいな?、などと考える人がいてもおかしくないですよね。
ちなみに、いくら原価主義といっても、決算日時点で減損損失を認識すべき状況(時価の著しい下落など)があった場合には、減損処理をすべきなので、ご注意ください。
以上、保険会社と有価証券の評価に関する特殊なルールを見てみました。
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