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ANAホールディングス、機体を細分化して償却費を増額

ANAホールディングスが2014年3月期より航空機の減価償却方法を変更する、と8月16日の日経朝刊15面に報じられていました。
新聞報道ではもっぱら償却期間の変更について触れられていましたが、2013年6月期(2014年3月を事業年度とする第一四半期)の注記を拝見すると、航空機等の有形固定資産の減価償却方法を従来の定率法から定額法に変更すると記載されています。
これはこれで、大きな変更です。
簿記をやっている人ならわかると思いますが、営業利益以下に大きな変動を伴うインパクトの強い会計方針の変更といえるでしょう。
(参考:2013年度・第一四半期の報告書より引用)
(会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更)
 (有形固定資産の減価償却方法の変更)
当社及び一部の国内連結子会社は、航空機、建物及びリース資産を除く有形固定資産の減価償却方法を、従来定率法によっていたが、当第1四半期連結会計期間より定額法に変更している。
この変更は、首都圏空港容量の拡大や航空自由化の更なる進展、LCCの相次ぐ新設等、航空業界の環境変化が大きな転換期を迎えていることを受け、航空事業に集約されている保有設備の使用実態を見直した結果、今後は従前に比べてより安定的な設備の稼動が見込まれており、耐用年数にわたり均等に費用配分を行う定額法がより合理的であると判断したことによる。この変更により、当第1四半期連結累計期間の営業損失は148百万円増加し、経常損失及び税金等調整前四半期純損失は147百万円増加している。
(耐用年数の変更)
当社及び一部の国内連結子会社は、当第1四半期連結会計期間より、一部の航空機について、将来の使用可能予測期間をより適切に反映するために、耐用年数を変更した。
この変更により、当第1四半期連結累計期間の営業損失は1,840百万円増加し、経常損失及び税金等調整前四半期純損失は2,089百万円増加している。
以上は、2013年6月の第一四半期決算からの適用です。
ここでの要点は次の2つ。
(1)従来、定率法というやりかたで減価償却していた航空機や建物等以外の有形固定資産につき、今後は定額法という毎期一定額の減価償却方法を適用する会計処理に変えるというものです。
(2)一部の航空機について、将来の使用可能予測期間を反映して耐用年数を変更しました。
減価償却費の計上にあたって、その資産が何年使用されるかの予想年数は、毎期の減価償却費の計上額を大きく左右するために、重要な業績算定要素となります。
(2)の耐用年数変更に関連して、日経新聞では、機体と内装などを一体として減価償却していたところ、今後は内装部分はより短い10年未満などの耐用年数で償却する予定と考えられます。
ここで重要な実務上の問題が浮き彫りになります。
航空機に限らず、建物の内装や一定の修繕費用などについて、そのなかみをよくよく詳細に検討すると、固定資産の細目が変わってきて、より短い耐用年数で分離して償却できるケースが出てきます。
航空機ならば、機体(本体)部分と内装やエンジンなどの内容を細かく区分すれば、それぞれの耐用年数を個別に適用して償却することにより、一番長い機体(ANAの財務諸表を見ると17?20年とされる)よりも短い耐用年数を適用し、はやく費用計上ができることになります。
…ここで、設備の減価償却費用を早めに多く計上することがなぜ財務的な観点で望ましいか、という話をしますと、ひとつは「減価償却の自己金融効果」と呼ばれるものです。
ご存知の通り、株主への配当の財源は、当期純利益=最終利益の累積額です。
当期純利益は、総収益?総費用であり、総費用の中にはとうぜん減価償却費が含まれます。
ここで、おなじ資金が社内にあるならば、社外流出の重要項目である配当の支払いは少ない方が、資金繰り的には楽になるのは自明です。
そして、当期純利益が多いほど株主にとっては配当の原資が見かけ上多いことになりますので、減価償却費が少ない方が、より多く利益が残り、配当をたくさん要求しやすい。
そして、この減価償却費の計算がもしも税法の規定額の範囲ならば、より多額の減価償却費が計上されたほうが、節税にもなります。
以上のことから、儲かっている会社の社長さんは、自己資金の社内保留を増やせるよう、減価償却費を多めに計上したいという気持ちになるのですね。
これが、減価償却の自己金融効果の考え方の一例です。
要点は、ANAは航空機を従来はぜんぶまとめて17?20年で償却していたが、今後は細かく分類して、より短い耐用年数で償却できる内装設備などを早期費用化しましょうね、ということです。
こうしてみてみると、ANAの今回の会計上の見積の変更に関する記事は、今後の財務戦略の明確な方向性を示していると考えることができますね。

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