法人税・住民税・事業税に関する支出と、損益計算書の表示の関係
もともと今回は、カネボウ粉飾と元役員逮捕に関する話題をとりあげようと
思っていたのですが、ちょうど住民税に関する記事が出ていたので、めったに
税金の会計処理に関するお話をするチャンスがなかった折、いい機会だと思い、
こちらを取り上げることにしました。
さて、企業活動における税金には、どのようなものがあるでしょうか。
【類型1】所得(税務上の利益)に対して一定率で課されるタイプの税金
課税主体
――――――
国 地 方
(例)●法人税 ◎
●所得税 ◎
●住民税(都道府県民税、市町村民税) ◎
●事業税 ◎
【類型2】所得以外の一定の行為や文書などに課されるタイプの税金
課税主体
――――――
国 地 方
(例)●消費税 ◎ ◎
●印紙税 ◎
●登録免許税 ◎
●固定資産税 ◎
●不動産取得税 ◎
参考までに、課税主体(納税者に対して、税を徴収する者)が国の場合は
国税、地方(都道府県・市町村)の場合は、地方税と呼ぶのですね。
なお、会計の世界では、「所得を課税の基準とする税金(法人税・住民税・
事業税)」か、「それ以外の基準で課される税金」かで、普段の帳簿処理と
財務諸表への表示が変わってきます。
簡単に考えましょう。
企業の利益計算は、大雑把に行くと、つぎのようになります。
<事例>
☆ある企業の、収益合計と費用合計の要約表(P/Lの概要)☆
?????????????????????????????
■売上や利息・配当金などの収益 960億円
■仕入や経費・利息などの費用 816億円 ←ポイント
―――――――――――――――――――――
企業活動の成果(=利益) 44億円
=====================
ポイントは、
「その税金の性質から言って、営業活動上の経費といえるか、
あるいは、利益計算結果に対して一定率をかけて計算するものか」
を判断することなのです。
たとえば、消費税。
これは、「資産の譲渡」すなわち、売上などの行為に対して本来かけられる
税金です。
次に、印紙税。
これは、契約書や領収書といった法律上の文書で、一定額以上の書類には、
印紙を購入して、その書類に貼付し、割り印をおすかたちでで納税します。
従いまして、「契約行為」、「代金回収行為」などの一環で発生するので、
経費として考えられますね。
そして、登録免許税は、不動産や会社に関する登記申請のときに、
固定資産税は、不動産を保有している場合に、
不動産取得税は、不動産を取得した場合に、
それぞれ支払う税金ですから、やはり営業活動の一環で生じる経費と
考えられます。
上記のような、【類型2】のタイプの税金支出は、「費用」として、
「販売費および一般管理費」などの区分に表示されます。
簿記上の勘定科目は、「租税公課」といいます。
実務的には、「公租公課」という科目名を使っている場合もあります。
下記の「3」の表示区分ですね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
※参考までに、消費税につき、大企業では、「税抜き方式」という経理処理
をすることが多いですが、この場合は、消費税の支払額はまったくP/L
には反映されません。
この論点は、日商簿記2級レベルの話です。
わかりずらければ、ここでは無視して、先に進みましょう。
いずれ、機会を見て、消費税の処理については、解説するように考えて
みます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<表示例>
損益計算書 (単位:億円)
―――――――――――――――――――――――――
1売 上 高 960
2売 上 原 価 660(?)
税金→→ 3販売費及び一般管理費 180(?)
費用 ――――――――――――――
営 業 利 益 120
4営 業 外 収 益 30
5営 業 外 費 用 54(?)
――――――――――――――
経 常 利 益 96
6特 別 利 益 10
7特 別 損 失 62(?)
――――――――――――――
税引前当期純利益 44
利 益 に→→ 法人税、住民税及び事業税 20(?)
課税する ――――――――――――――
タ イ プ 当 期 純 利 益 24
==============
そして、【類型1】の利益に対して課税するタイプの税金は、収益と
費用の差引計算が終わった後の最後、税引き前当期純利益の次で控除
されるのです。
したがいまして、日経新聞などで、
「当期のZ社の営業利益はA億円、経常利益はB億円、最終利益(当期純利益)
はC億円」
と表現された場合、営業利益のA億円と経常利益のB億円の計算過程で、
【類型2】に相当する租税公課は、控除されていることがわかります。
そして、【類型1】の法人税等は、営業利益・経常利益にはまったく関係なく、
最終利益の計算の直前で、やっと控除される、という扱いになるわけですね。
…このように、支払われる税金の類型によって、P/L上の表示場所が全然
違ってくることも、知っておかれるとよろしいでしょう。
→ 仕事に使える決算書の基本を徹底的にマスターするためのDVD講座
無料メール講座
法人税申告書作成の実務
社長BOKIゲーム企業研修
無料メールマガジン
プロフィール
著書一覧
新着記事
- 【連結入門・未実現利益の考え方】土地と建物の未実現利益に関する処理の比較でマスター
連結会計を学ぶ上で、未実現利益の正しい理解は必須ですね。 この点、最初の理解の仕方を間違えてしまうと、けっこう連結が苦手になったり、遠回りしてしまったりしてしまいます。 そこで、今回の動画では、まず一番簡単な土地の親子間売買(ダウンストリーム)を取り上げ、それとの比較で建物の売却による未実現利益の消去と、それに伴う減価償却費の連結修正について簡単な事例を使って解説いたしました。 この10分程度の動画をさっと視聴することで、連結会計の未実現利益に対する苦手意識を取り除くきっかけになればうれしいです! - 会計士志願者が2倍も、監査法人離れ
2023年9月21日の日経1面です。 2015年を底に2023年までの8年間で公認会計士試験の受験者数が倍増し12年ぶりの2万人台を記録したそうです。 ※2013年~2023年の願書提出者数 2023年 20,318人 2022年 18,789人 2021年 14,192人 2020年 13,231人 2019年 12,532人 2018年 11,742人 2017年 11,032人 2016年 10,256人 2015年 10,180人 2014年 10,870人 2013年 13,224人 (資料:マイナビ会計士)※2013年~2022年 ※2023年は金融庁ホームページ たしかに、過去10年程度で2015年の10,180人がそこになっており、そこから20,318人ですから、この期間において2倍程度増えていますね。 - 社外役員の兼任者数が4割アップ!?~会計士・税理士に新たなフィールドのチャンスが到来?
昨日の日経朝刊は、コーポレートガバナンスに関する非常に興味深い記事でした。 日経1面に出るということは、その日のニュースの中でも日本経済全体に影響を及ぼすと判断されたトピックと考えられるのですね。 いま、日本企業の多くは閉塞感にとらわれているかもしれません。 先行き不透明な中、社内の限られた知見だけで経営を続けていくのがますます難しくなってきています。 社内の常識が世間の非常識、なんてこともあったりしますね。 私は監査法人の勤務時代から強く感じていたことがあります。 会計士はその会社に年中いるわけではないので、その会社の業界知識の深さについてはかなわないのですが、彼らになくて私たちにあったのは「他の多くの会社の実務を見て実態を知っている」という点です。 - 【時事ニュースで学ぶ会計知識】オリンパスの売上高当期純利益率が100%超!?
2023年8月30日の日経18面で報じられていました。 オリンパスの売上高当期純利益率がなんと100%を超えたという珍しいケースです。 普通は、売上高を100とするならば、営業利益は5~8%程度、当期純利益は税引き後なので3~5%くらいがよくあるケースです。 営業利益率が10%以上になってくると、本業で結構儲けが出ている印象を受けます。 個人的には非常に良いイメージですね。 この点、オリンパスさんの営業利益率は13%を超えていますので、一般的な視点で行けば本業での好調さが想像されます。 そして、そこから一定の調整を経て、さらに法人税等が差し引かれるので、営業利益よりも当期純利益は少なくなるのが通常です。 しかし! - 【読んでみたい一冊】週3バイトが東大合格した時間術の本
今回は時間術に関する興味深い視点の本をご紹介します。 限られた時間で効率よく勉強しながら東大に合格した実体験から自身で身に着けた時間管理ノウハウを本にまとめたものです。 ユニークな視点でなるほど~、と思わせるところが多いのと、読みやすく短時間で一気に通読できることから、手軽に時間生産性を上げるためのヒントとして、動画で取り上げてみました。 全部で3章構成からなっているのですが、その全体フローがそのまま企業コンサルの手順にも応用できます。 すなわち、 ステップ1 ムダを削減する ステップ2 今の仕事の効率を上げる ステップ3 それを継続する です。 こうやって書いてみると非常にシンプルですが、そのシンプルさの中にこそ、マネジメントの本質が隠されていることもあります。