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かいけいどうわ&勉強嫌いの会計士ゲリラ合格法

 かいけい童話
勉強嫌いの会計士(6%)ゲリラ合格法


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2006.1.5        公認会計士・税理士    柴山政行

かいけい童話 第4話「おさるの相続」 

 むかしむかし、あるところに、2匹のおさるがいました。なまえを、こん太とへい助といいました。むらのひとは、2匹のおさるが、いつもつるんでわるさをするので、「まあた、あのこんぺいコンビの仕業か!」などと、セットで文句を言ったものです。

 こん太とへい助は、家がとなり同士で、幼なじみでした。

 こん太は大きなお屋敷に大きな蔵、たくさんの使用人に囲まれた、豪勢な家の独り息子です。なお、こん太の家の資産総額は、50臆円以上との、もっぱらのうわさでした。

 こん太は、もちまえの勝気な性格からか、いつもへい助をリードしていました。

 いっぽう、へい助は、まあまあのお屋敷、まあまあの蔵、まあまあの庭に囲まれた、へいきんよりちょっと上くらいの家の、これまた独り息子です。こちらの資産総額は、1億円くらい、といわれていました。父親が倹約家なので、あまりぜいたくはできません。

 へい助は、どちらかというと、のんびりやです。

 どちらも、兄弟がいなかったので、二人は、実の兄弟のようにいつも一緒でした。

 「おい。へい助!これから、家に遊びに来ないか。今日は、活きのいい鯛を仕入れたらしいから、いっしょに食べようぜ!!」

 「えー!た、鯛?うちなんか、年に一回くらいの、めでたい時しか出てこないよ。」

 「はーはっはっは!くっだらない駄洒落をとばすやつだな。ともかく、家に来いよ!」

 「…くだらないって言う割には、ずいぶんと受けてるじゃん…(-.-)

 そんなこんなで、月日は過ぎ、2匹は大人になりました。

 そんなある年のことです。その年は、村に、たちの悪い病気がはやりました。

 年をとって、体力のない者が、何人も倒れてしまったのです。

 運悪く、こん太のお父さんと、へい助のお父さんも、そろって病気にかかってしまいました。

 そして…その年の夏にこん太のお父さんが、さらに2ヵ月後、秋にさしかかるころ、へい助のお父さんが、病に倒れたまま、帰らぬ人となってしまったのです。

 悲しみにくれるへい助を見て、こん太は力強く励ましました。

「確かに、親父達が亡くなったのは悲しいことだが、これからは、俺達が一家の主だ。これから、家をもり立てていかなきゃならん。いつまでもめそめそするな!

 まあ、おまえのところは、家が小さいから、なにかと大変だろうから、困った事があったら、いつでも相談に来いよ」

「えぐっえぐっ…あ、ありがとう、こんちゃん。」

 さて、2匹の悲しみをよそに、父親達が遺した財産を受け継ぐ、という法律上の手続が開始されました。

 そして…50億円の財産を相続する、と単純に考えていたこん太は、その詳しい内容を知って、おどろいたのです。

「え?まっまじ??」

          こん太の相続財産(お父さんの亡くなった日現在)

現金

10億円

銀行の借金

40億円

やしき

20億円

株式投資

20億円

(原価)

正味の財産

10億円

 顧問の税理士さんは、あせをふきふき、こん太に説明しました。

「実は、お父様は、生前、バブルに踊って、総資産の多くを株式投資につぎ込んでしまっていたのです。その後、こん太さんもご承知のとおり、バブルがバチンとはじけて、株の値段が半分近くまでになってしまいました。そのとき、やめておけばいいのに、『損を取り返すんだー!』などとつっぱしってしまい、銀行で借金までして株式投資を続けたのです。勝気な性格が、裏目に出たんですなあ…それで、手もちの株で、購入時に20億円だったものがなんと、いまでは時価で12億円!そして、借金も残ってしまいました」

「どっしぇー!」

「し、しかしですね!話はそれだけではなく…」

「え?まだですかあ?」

「はい。これもお父様が生前、先送りにしておりました問題なのですが、おやしきと蔵が、もう築15年以上経っておりますので、老朽化が激しく、あちこちにヒビや破損がありまして…」

「ああ、それは俺も前から気づいていたよ。で、それがなんなの?」

 いらいらしたように、こん太は税理士さんに詰め寄ります。

「は、はい…大変申し上げにくいのですが、いずれは建物の損壊や水まわりの漏れなど、いろいろと不都合が出ることを考えれば、この機会に全面的な屋敷・蔵の改修をしたほうがよろしいかと思います。で、その費用なのですが、大体、1億円と見積もられます。」

         こん太の修正後の相続財産(お父さんの亡くなった日現在)

現金

10億円

銀行の借金

40億円

やしき

20億円

修繕引当金

 1億円

株式投資

12億円

(時価)

正味の財産

1億円

 「ひえ〜っ」

 こん太は、あまりのことに、卒倒しそうになりました。

 「だ、だいじょうぶですか?こん太さん!」 …しばらく、頭がふらふらとしていたこん太ですが、時間がたつにつれ、だんだんと冷静さをとりもどしました。

「こうやってみると、いくら総資産が大きくても、常に財務内容をきちんとチェックしなきゃあ、いざって時に困ることになるんだねえ。大事なのは、正味の財産か…

 よっしゃ!こうなったら、俺の代で、バブル前の財務体質に返り咲いてやるぞ!」

さすが、ポジティブなこん太さん。切り替えの早さはお見事!

なお、おとなりへい助さんの家は、まったく借金がなかったので、「総資産1億円=正味の財産」とあいなりました。

結局、2匹がそれぞれ相続した正味の財産は、同額だったんですねえ。

 以上、財産は、「総資産よりも、正味の財産」が、自己の取分となるのです。

 この、正味の財産のことを、会計の世界では、「純資産」とか、「自己資本」とか、呼んでいるようです。

 それでは、また!

かいけい童話 第3話「そのパソコン、いくらで買ったの?」

会計童話第3回 「そのパソコン、いくらで買ったの?」

 A国に、BB社という会社がありました。

 BB社は、従業員3人と5坪の小さいオフィスながら、高齢化社会のニーズにマッチした、介護用の人材

派遣をアレンジメントするやり手企業でした。

 従業員は、入社10年目の温厚な古株社員の課長N氏(40歳、男性、妻子あり)、入社3年目のイケイケ

社員Pさん(25歳、女性、かつて“ミスT大”)、そして入社1年目の新入社員K君(23歳、男性、新卒)の3人

です。

 N氏は、豊富な社会経験と人当たりのよさで、常にお客さんからの厚い信頼を得ています。時には、お

客さんのクレーム処理なども手際よくこなしますので、社長からの信頼も絶大です。

 Pさんは、やや軽いノリがたまにキズですが、明るくテキパキとしたキャラクターで、世の男性客を中心

に(?)、バリバリ業績を伸ばしています。なお、これは余談ですが、ひょっとして学生時代に水商売のバ

イト経験があるのでは?と疑問を抱かせるほどの、あしらい上手です。みなさん、気をつけましょうね。


 K君はといえば、彼は、大学時代にスキー同好会に所属しており、腕前はかなりのものです。将来は、

指導員の資格を取れればいいな、などと考えております。そんなわけで、大学時代は楽しく、女性にもそ

れなりにもてていたようですが、入社後、Pさんという傑物に出会ってショックを受け、女性に対する見方

が変化したようです。


 さて、そんなある日、K君が二日酔いの重い頭を引きずって出社した朝の事です。

「おはようございますう(*_*)」

「ケンちゃん(K君の愛称)、遅いよ!何具合が悪いフリしてんのさ(-“-)」

「え〜?Pさん、あんなに飲んだのに、なんでそんなに超ゲンキなんですかあ?僕なんか、昨日の第三次

新年会(注)で二日酔いになっちゃって、朝起きれませんでしたよ。」

(注)第三次新年会:BB社では、毎年、年末に3回、年始に3回、それぞれ忘年会と新年会を行う。これらは、会社の負担であるから、この不況時になんともうらやましい限りである。ただし、普通の人なら、その金をボーナスでよこせ、というかもしれないが、そこは酒好き・飲み屋好きのBB社の面々、よくも飽きずに飲むものである(著者、注釈)。

「あれぐらいの酒、飲んだうちに入らないよ。あたしが学生の時は、バイト先でみんな倍ぐらい飲んでたか

らね…」

「…ていうか、Pさんって、学生時代、どんなバイトしてたんですか?」

「おいおい、君たち、おしゃべりはそのくらいにして、仕事仕事!」
 
 そんなこんなで、あっというまに夕方です。

「あら、このパソコン、調子悪いわ。」

「どうしたんですか、Pさん。」

「さっき電源落としてさ、もう一回立ち上げようとしたら、最初の画面ばっかりずうっと出ちゃって、次の画

面にならないんだよね。Nさん、見てよ、これ。」

「あらら、本当だ。K君、これ、何とかならんかね。」

「うーん、これはちょっと、業者さんを呼んで修理が必要ですね。」

 …社内を、めずらしく沈黙が流れます。

「修理って、いくらくらいかかるかね。」

「どうでしょう。このパソコン、随分古いですよね。」

「買ってから8、9年くらい経つかな…」

「いつの時代ですか?よくこんなの使っていて、不便を感じなかったですね。」

「男もパソコンも、新しければいいってもんじゃあないのよ。要はコクと深みね。」

 …男のコクって何?と突っ込みを入れたかったK君、後の反撃が怖かったので、言葉を飲み込みまし

た。

「じゃあしょうがない!ここらで一発、新しいパソコンを買うか!!社長には、俺から報告しておけばOKの

はずさ。」

「やったあ。さっすがNさん。太っ腹。かっこいい!」

「…太っ腹は余計だよ。いちおう、気にしているんだからさ(-.-)」

「あっ。ごめーん。」

「あの…そ、そんなに急に備品の購入とか大事なことを決めていいんですか?それに、さっきPさん、男と

パソコンは新しければいいってもんじゃないとか…」

「あんたはごちゃごちゃとうるさいね!男はそんな小さい事にこだわらないの!」

「そうと決まれば、アキタバラ電気街(注:A国で一番の電気店街)にレッツゴー!(古)」

 という訳で、あっという間に新しいパソコンの購入が全会一致(?)で決まりました。

「じゃあ、K君、あとはよろしく。」

「がんばってね、ケンちゃん。」

「え?がんばってねって、みんなで行くんじゃないんですか?」

「何言ってんだ。我々が一緒についていったって、足手まといになるだけだろう。子供のお使いじゃないん

だから。」

「それに、私とNさんは、これから、今月の社長の誕生会の会場を下見しに行かなきゃならないんだから

ね。もちろん、あんたも後で参加するんだよ。場所はメールしとくからさ。」

 また飲み会だ、と思いながらも、K君は一人でパソコンを買いに行くことになりました。

 夕方、午後6時ごろ、アキタバラ電気街に到着しました。

 ひさしぶりです。やはり、店のあちこちから元気な呼び込みの声が聞こえ、活気にあふれています。

 まずは、お目当てのメーカーのパソコンが、各店舗でいくらするのか、市場調査です。

 一つ目の店では、「大特価198,000円!他店が、このお値段より安かったら、ぜひ教えてください。当店

は、その値段よりも値下げいたします。」

 二つ目の店でも、「処分価格198,000円!他よりも安くご提供いたします。もし、当店の価格が高かった

ら、その場でさらに勉強いたします!」

 どのお店も、以上のような感じでした。5店舗を回った結果、パソコンの価格帯は、197,500円〜

198,000円とわかりました。

 いいかえれば、K君が買おうとしているパソコンについては、この値段の幅が、アキタバラ電気街での

代表的な流通価格、すなわち時価と考えてもよさそうです。

 ただし、この価格は、毎日、お客さんとの力関係でどんどん変化しますし、東京証券取引所の株価に比

べて客観性は劣りますよね。

 K君は、その中で、197,500円と最も値段が低かったL店でパソコンを購入しました。


さらに、そこで勤めている店員さんが学生時代の友人だったので、特別に190,000円で買うことに成功し

ました。

「あ、そうそう。悪いけど、パソコン代190,000円で領収書を書いてもらえるかな?」

 K君は、予想よりも安くパソコンを買えたことで、上機嫌でした。パソコンは、翌日、配送してもらうことに

なりました。

 店を出て携帯電話を見てみると、Pさんからのメールが入っていました。どうやら、社長の誕生会の会場

が決まったようです。K君は、メールの住所と道順を頼りに、料理屋さんへと向かったのでした。


 料理屋さんに着くと、N氏は、すでにかなりの上機嫌でした。

「おう。ケンちゃん、きたかきたか。とにかく、駆けつけ30杯だ!なーんてな。ガッハッハ!」

「…Nさん、できあがるの早すぎですよ。」

 ともあれ、K君も、二人のペースに巻き込まれ、ガンガン飲んでしまいました。

 これでは、また次の日も二日酔いで遅刻、何てことにならなければよいのですが…

 翌日、K君は、お昼過ぎに出社しました。

「…おはようございます。」

「K君、もう午後だぜ。おはようもないもんだな。私とPさんは、今朝、出勤時間どおりに来たんだぞ。サラリ

ーマンたるもの、前日の酒を引きずるようじゃ、まだまだ修行が足らんワイ!」

「足らんワイ!(By P女史)」

「いや、NさんとPさんが異常に強すぎなんですよ。僕だって、学生時代は酒が強い方だっていわれていた

んだから…」

「ふん。鍛え方が違うわい。」

「Nさんは、学生時代、相撲部にいたんだって。まあ、器がちがうってことね。」

「あ、それはそうと。僕、三次会の後、タクシーに乗せられましたよね。実は、タクシーに乗ってから後の

事が、全然記憶に無くって。気がついたら、自分の部屋でスーツのまま寝てたんですけど。」

「あら、横に知らない女性がいたりしなかった?」

「茶化さないで下さい。どっかのドラマじゃないんだから。それで、朝の10時半ごろに目が覚めてみると、

財布が内ポケットからなくなっていたんです。そんなこんなで、財布を捜したり、カードの紛失届けを出し

たりして、遅くなってしまいました。動転していて、連絡を忘れていたことは、申し訳ないと思っていま

す。」

「まあ、それはいいよ。Pさんなんか、以前、男との別れ話が終わらないだかの理由で、夕方まで会社に

来なかったことがあるくらいだからね。ホントにうちの社員ときたら…トホホだよ。」


「Nさん。そうは言うけど、あの時、死ぬの死なないのと、それは大変だったんですからね。」


「コホン、あー、それはともかくとして。財布は結局、見つかっていないんだね?」


「はい。それで、昨日買ったパソコンの領収書も、財布と一緒になくなってしまいました。」


「それじゃあ、備品購入の伝票が切れないじゃないの。これからは、ケンちゃんじゃなくて、軽率ちゃん

ね!」


「すみません。」


「まあまあ。で、そのパソコンは、いくらだったんだね。」


「アキタバラ電気街では、197,500円から198,000円の価格でした。そこで、197,500円の店で買いまし

た。」

「じゃ、197,500円ね。」

「はい。でも、そこから値下げさせたので、払った金額は190,000円です。ただし、その領収書を失くしてし

まったので、取得時のパソコンの評価額は、197,500円になるのですか?」

「いや。時価というのは、証券取引所のような公設の市場でもない限り、非常にあいまいで後日の立証

が難しいんだ。したがって、会計的には、領収書などの証拠資料で検証できる『支出額』を取得財産の評

価額とすることになっているんだ。」

「じゃあ、190,000円なんですね。さっすが、N課長は物知りですね。」

「それも、領収書があってのことだ。さっさともういっぺん店へ行ってもらってこーイ!」

「はい〜。行ってきまーす。」

 やれやれ、K君、またもや社内での株を下げてしまいましたね。

 取得時の資産価額を、時価ではなく支出額ベースとする考え方を、会計の世界では、「取引価額主義」

というようですね。

そのココロは、計算の確実性・客観性を保持するために採用しているのです。

 また、この後の期末評価においても、時価ではなく取得時の支出額を援用する考え方を採用します。

やはり、計算の確実性・客観性を保持し、時価の上昇による不確実な未実現利益を計上しないためで

す。

 なお、取得時の支出額は、「取得原価」と呼ばれます。そこで、期末の資産評価にさいして支出額を基

本とする考え方を、「取得原価主義」などと呼んだりするわけです。


 それでは、次回をお楽しみに!

かいけい童話 第2話「よくばりおじいさんの見込み違い」


 今回は、「よくばりおじいさんの見込み違い」です。

 それでは、はじまりはじまり。

 

 むかし、あるところにおもちゃ屋のおじいさんがいました。

 このおじいさんは、いつも金儲けのことばかり考えていることで、近所でも有名でした。

 毎日、インターネットの情報をチェックしつつ、「次は何が売れるかのう…」などとつぶやきながら流行の商品をいち早く探し出し、ドンドン仕入れてお客に高く売ろうともくろんでいたのでした。

 そんなある日、おじいさんがインターネット情報を検索していると、次のようなページが表示されました。



いま流行りのグッズ、イチオシ情報!!

 

 3ヶ月前に売り出された「ヒヨコッチ」が、今、子供の間で大人気!

 この「ヒヨコッチ」は、おとうさん・おかあさん達がかつて小学生くらいのころに大ヒットした「たまごっち」の復刻版だ。

 このたまごっちが売り出されていた頃は、11,000円もしないようなおもちゃが、一時期は1万円を超える高値で売買されるなど、その人気は凄まじいものがあったらしい。

 ところが、もちろんのこと、ヒヨコッチだって負けちゃいない。

 もともと5匹の愛らしいヒヨコのキャラクターがあり、それぞれを同時に発売した時から、いきなりどのキャラクターも売り切れ店続出の大反響だ。その後、口コミなどでオトナの購買層にもどんどんその対象が広がっている。おもちゃ製造メーカーA社の工場責任者Mさんの話では、休日を押してのフル稼働でも生産が追いつかないほどの注文数だという。

 もとの定価は1,000円だが、一部のマニアの間では、ナント2万円(元の売価の20)の高値がついているとも聞くからなんとも驚きだ!

 君も時代の波に乗り遅れるな!!




「なるほど。そんなに大人気のおもちゃならば、たくさん仕入れて高く売りつければ、さぞかし儲かるのう、フォッフォッフォ…」

 ラッキーなことに、おもちゃ製造メーカーA社の工場責任者Mさんは、おじいさんの古くからの知り合いでした。

M君は昔からの付き合いじゃから、裏から手をまわして、じゃんじゃん買い付けられるのう!これでうちの店にも蔵が建つワイ<^◆^>」

 …おじいさん、腹黒いことを考えているようですねえ。

 翌日、おじいさんは知り合いのM氏のところへ訪れました。

「や、やあ。おじいさん。ずいぶんと久しぶりですねえ…」

 突然の訪問に、ちょっとびっくりのM氏です。おじいさんが昔から欲深いことを知っているので、こんどはどんな難題を持ちかけられるか内心ひやひやです。

「そんなに構えんでもいいじゃないか。しばらくぶりで会ったというに…」

「で、今回は、どんなご用件ですか?」

「昨日、たまたまインターネットで見たんじゃが…」

「インターネットお?」

 M氏は、おじいさんとITの意外な取り合わせに目を丸くしてしまいました。

「なんじゃ、その驚きようは。わしだって情報化の時代の波に、ちゃあんと乗っておるワイ。…それはともかくとして、最近、ヒヨコッチなるおもちゃが、非常に人気だそうじゃのう。そこで相談なんじゃが、わしにもその人気商品をひとつ譲ってくれんか。」

 そらきた、とM氏は思いました。

「せっかくなんですが、あの商品は今、引き合いが多くて、おじいさんに回す分が確保できるかどうか、はっきりとお約束できないんですよ。」

「ほほう。M君がこの商売を始めたときに、開業のノウハウを1から教え、材料の仕入業者の紹介、資金調達などで随分と協力してやったのは誰だったかのう?あの時は、忙しいさなかをやりくりして、随分と骨をおったものじゃよ…」

「わかった。わかりましたよ。それを言われちゃ、頭が上がりません。私の裁量で、とりあえず2,000個だけ、何とかしましょう。もう、こんな無茶はこれっきりにしてくださいよ、おじいさん!」

「はいはい。わかりましたよ。ところで、1個の仕入値段は、いくらかね?」

「当社規定の単価で1個当たり600円です。1週間後に納品しますから、そのときに代金1,200,000円を支払ってください。」

1600円ね、承知しましたよ!」

 帰り道、おじいさんは、さっそく頭の中で皮算用です。

「今、1個あたり2万円で売れるとするならば、仕入原価600円との差額が、ナ、ナント19,400円!こりゃあ笑いが止まらんワイ。」

 

 1週間後、さっそくおじいさんの元にヒヨコッチが2,000個納入されました。

「はい、それじゃあ1,230,000円、確かに支払いましたよ。あと送料が30,000円ですか。はいはい、それぐらい、オッケーですよ。喜んで支払いましょう。」

 商品の原価は、1,200,000+30,000円=1,230,000円で、単価は1,230,000円÷2,000個=615円です。これは、納品書(送り状)や運賃の領収書で客観的に確認できますね。

 さて、それとは別に、おじいさんはかねてから住居とお店を改修・増築し、もっと見栄えをよくしたいと考えていました。

 そんな折、ヒヨコッチの儲け話が舞い込んだわけです。そこで、ヒヨコッチの時価2万円×2,000個=4,000万円の売上を見越して、どーんと建設業者に工事を依頼することになったのでした。

 

 ヒヨコッチを仕入れた日の翌日、建設業者の営業担当がやって来ました。

「おじいさん、こんんちわ。お店と住居を改修・増築したい、というご相談ですね。先日、電話でお話いただいた内容をもとに、簡単ですが、見積を作ってきました。大体、総額で2,000万円くらいになりますが、お支払いのほうは大丈夫ですか?」

「もちろん、大丈夫。昨日、時価2万円の商品を2,000個、原価615円で仕入れたので、19,385円×2,000個=3,877万円の利益が手にできるわけじゃよ。」

「…へえ、それはすごい。じゃあ、大もうけですねえ。」

「まあな、ふぉっふぉっふぉっ…」

 おじいさん、得意満面の笑みです。

 

 さて、かんじんのひよこっちですが、当初の売上は、予想を上回るものでした。

 店頭に並べた100個が、発売後2日で全部売れてしまいました。値段は12万円です。

 つまり、1日あたり100万円の売上を個人のおもちゃ屋さんで上げてしまったのでした。

 これでは、笑が止まらないのも、無理はありませんね。

 あまりの売れ行きに、おじいさんは、もっと儲けたいという欲望にかられました。

 そこで、この2日分の売上200万円のうち120万円(+運賃3万円)を支払って、さらに2,000個のひよこっちをM氏から仕入れたのです。もちろん、M氏には相当の無理を強いることになったのですが、目先の欲に目がくらんだおじいさんは、すっかり周りのことが見えなくなっていたのでした。

 さて、話を戻します。発売後10日間は、初日と同じく50個ずつ順調に売れました。

 つまり、4,000個の総仕入数量のうち、500個は10日間ではけたわけですね。

 おじいさんは、500個×2万円=1,000万円の売上収入を、たった10日間で手に入れたのです。

 しかし、夢のような出来事は、長くは続かないものです。人気急上昇の商品は、人気が衰えるのもあっという間でした。

 発売後10日を越えたあたりから売上が減り始め、2週間目には、ほとんど売れなくなってしまいました。

 結局、発売から2週間ちょっとで、売れた商品は600個でした。

 それでも、仕入による支出4,000個×615円=246万円に対して、売上が1,200万円なのですから、1,000万円近くはお金が残るはずだったのです。

 しかし、おじいさんは、全部売れないうちに、勝手に8,000万円もの売上を夢見てしまったために、設備投資資金2,000万円という多大な負担を背負う羽目に陥っていたのでした。

 ここでS山家に伝わる教訓です。

 「商品は、お客に売るまで利益にならない!もっているだけでは、粗大ごみと一緒!!」

 特に、市場見込み生産品では、将来、市場が予想と違う動きをした場合、在庫負担を過大に抱えるリスクを無視できないのです。

 このように、商品の保有中には利益を認識せず、販売(財・役務の提供+代金の受領)があって、はじめて売上を認識し、ひいては売上原価との差額である利益を認識するべきである、という考え方を、会計の世界では、「実現主義の原則」と言っているようですね。

 
 今回のお話は、以上でおしまい♪

かいけい童話 第1話 「バナナのたたき売りとお役人」

この度は、「かいけい童話」のせかいへ、ようこそいらっしゃいました。

 実は、わたくし、常日頃より、とても残念に思っていることがございます。

 人間社会では、どうやら、「お金のうごきをメモするきまりごと」が、

「会計学だ!」などと小難しく言って、世の人を惑わせているようですねえ。

 そこで、わたくしこと「末期−S山(誤変換)」、もとい「マッキ−S山」が、

S山家に代々伝わる童話を皆さんにご披露しつつ、「かいけい」という

「ちょっと面白い世界」をのぞいていただけるよう、

一肌脱ごうと考えた次第です。

 それでは、はじまりはじまり〜(^◇^)

=====================================
 むかしむかし、N国という国に、バナナを売って生活をしているおじいさんがいました。

 おじいさんは、古くからの友達がつくったバナナを、1ふさ60円で仕入れて、

それを
100円で売っていたそうです。

つまり、
1ふさ売ると、40円のもうけになるわけですね!

 はじめのうち、商売のやりかたは素朴でした。

おじいさんは、人の通る道で、いつも地べたにござを敷き、

その上にバナナを並べてじい〜っと待っていたのです。

 ところが、ある日、いかにもそれではつまらない、

と考えるようになりました。

「うーむ。何か、道行く人がはっと立ち止まるような、

いいアイディアがないかのう…」



 そんな時、何の気なしにみていたテレビの画面では、

漫才師のいっぽうが、くだらないボケをかましていました。

 すると、もう一人が、すばやくズボンの後ろのほうからハリセンを

とりだし、相方の頭を勢いよくはたきました。



「なんやソレ!!スパーン!!!」



 すさまじいツッコミに、場内はやんややんやの大喝采です。


「これじゃっ!」


 おもわず腰を浮かせて叫んだおじいさん。

「ぎっくり腰は大丈夫?」と余計な心配をしてしまいます。

 そんなことにはおかまいなしに、おじいさんは、さっそく、

財布を握り締めて、近くの日曜大工センターへと向かいました。

 

 日曜大工センターで最初に買ったのは、画用紙です。

 これは、ハリセンを作るための材料でした。

 次に、おじいさんは、おおきな木の板を
1枚買いました。

 どうやら、これを
4枚に切って組み立て、バナナを置く台を

作ろうと考えているようです。

 レジに並ぶこと5分、おじいさんの番になりました。

店員さんがバーコードをピッピッと商品に当てます。

 「画用紙と板で、しめて1,000円になりまあす。」

 「すまんが、領収書をきってくれんかのう。」


 …おじいさん、しっかりしてますね。(-.-)


 さて、いそいそと家に帰ったおじいさん。

 のこぎり、とんかち、釘を取り出して、ギコギコ・トンカンと

日曜大工をはじめました。

 そして1時間後。立派なバナナのたたき売り台ができあがったのです。



 努力の甲斐あってか、バナナのたたき売りはとてお順調でした。

 そんなおり、一年が経った頃、おじいさんは、確定申告という、

税金を計算するための申告書類をお役所へ届出ることになりました。

 その内容は、次のとおりです。



    

のうぜいぎむしゃ:おじいさん

じゅうしょ   :N国 〇×町 1ちょうめ

(収支の計算書)

売上高

100,000

円(+)

バナナ仕入原価

60,000

(−)

叩き売り台費用

  1,000

(−)

税引前の利益

39,000

税金

(税率50)

 19,500

 (−)

純利益

19,500

(財産の一覧表)

現金

39,000

未払税金

19,500

         

利益

     19,500

総資産

39,000

負債資本

39,000

 参考までに、N国では、税引前の利益に対し、

なんと
50%の税金が課せられるのです!

 せっかく稼いでも、ずいぶんと税金を取られてしまうのですね。

 さて、おじいさんが確定申告と納税を済ませてから数ヵ月後がたちました。

 いつものとおり、おじいさんが道端でバナナのたたき売りをしていますと、

銀ぶちのめがねをかけた、めつきの鋭い男の人があゆみよってきました。

「なんだろう?」

 おじいさんは、ふと、不安になりました。

「おじいさん。ちょっとしつれいしますよ。」

目つきの鋭い人は、おじいさんの横に腰掛けると、

かばんの中から、おじいさんが提出した確定申告書を取り出しました。


「おじいさんの確定申告書について、ひとつ、おたずねしたいことがあります。」

「なんでしょう?」

「おじいさんは、収支の計算書の中で、叩き売り台費用を1,000円ほど

あげていらっしゃいますが、これは、当期に購入した額のすべてですか?」

「そうですが…」

 やはりねえ、と目つきの鋭い人は小さくつぶやき、ためいきをつきました。

「わが国の法律では、1年を超えて使用できる財産、つまり固定資産は、

支出時の全額費用としてはいけないんですよ。

実際には、資産の寿命を3年と見なして、

3年後の処分価値を購入額の10%の100円とし、3年後の処分価値を

差し引いた額、つまり“
1,000円の90%相当額である900円”を、

取得後
3年の期間にわたって/3ずつの費用としなければいけないんです!」

「え?」

 おじいさんは、目つきの鋭い人の言っている意味が、わかりませんでした。

「やはり、ご存じなかったのですね。それでは、私が用意してきた

おじいさんの修正申告書
()をお見せしましょう。」

修 正 し た 確 定 申 告 書

のうぜいぎむしゃ:おじいさん

じゅうしょ   :N国 〇×町 1ちょうめ

(収支の計算書)

売上高

100,000

円(+)

バナナ仕入原価

60,000

(−)

備品減価償却費

1,000×0.9÷3

   300

(−)

税引前の利益

39,700

税金

(税率50)

 19,850

 (−)

純利益

19,850

※備品の寿命3年という基準は、N国の税法によるきまりである。

(財産の一覧表)

現金

39,000

未払税金

19,850

備品

700

利益

19,850

総資産

39,700

負債資本

39,700


「おじいさん。あなたのもっているばななのたたき売り台とハリセンは、

今年だけ使って、すぐに捨てるわけではないですよね?」

「そ、そうじゃがしかし…」

「ということは、そのたたき売り台とハリセンは立派な資産です!

よって、法律により、備品は
3年の寿命とみつもって、

費用は
3等分くらいに分けて計上してください。

 つまり、この台がおじいさんの商売に貢献するであろう

今後
3年間にわたって、各年の収入に少しずつ費用として

対比させて業績を計算するのです。

けっきょく、取得額1,000円から当期の費用額300円を差し引いた

残りの金額
700円は、未使用分の財産価値として財産の一覧表に

載せて申告していただかないと困りますよ!」


「…ふーっ。そりゃあたしかに、この台とハリセンは長く使えるから、

財産と言えなくもないが、それにしても
1,000円ぽっちなんじゃから、

ちょっとくらい大目に見てくれてもばちは当たらんだろうに。

お役人様は、頭が固くてかなわんワイ!」


 役人の人の強い口調に、おじいさんは、しぶしぶ

たたき売り台とハリセンを資産として計上することを承知しましたとさ。

 いかかがでしたか?

 これを、S山家の家訓では、「正しい業績を知りたくば、長期設備は

支出額を数年にわたって費用配分すべし!」と言い伝えています。


 人間社会では、これを「費用配分の原則」などといっているようですね!

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